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8話

Side アラン


目が覚める。

知らない天井だ……昨日の記憶を必死に手繰り寄せて、酒場で酔いつぶれたところで飛び起きる。

体を確認し、襲われた形跡がないことを確認する。私のギフトのせいで、男だろうがかかわらず襲われてきた経験がある。もちろん、そうなったときは返り討ちにしてきたが…


「…なんともない。そっかぁ」


周りを見渡すと少し広めの雑魚寝宿のようだ。隣にはギメイの装備品が置かれている。やっぱり彼が介抱してくれたんだろう。

古臭くも、埃臭くはない。窓から差し込む光が澄んだ空気を照らす。

落ち着くなぁ…なんてぼうっとしてると、正面の扉が開いて、ギメイが顔をのぞかせてくる。


「お、起きたか?」







なんか音が聞こえたからアランが起きたかと思って、裏庭での魔法の練習を切り上げて戻ってみると、アランが泣いていた…


「ど、どうした!?なんかあったのか?」


「いやぁ、何もなかったよ。何もなかったんだ」


その言葉でなんかいろいろ察してしまった俺は自然と背中をさすっていた。

イケメンは人生が楽そうとかいろいろ思っててごめんという、自責の念を晴らしたいのが主な理由だが。




少し、それこそ30秒ほどでアランは落ち着いて「ありがとう」だなんて普通のテンションに近づいて行った。


「ねえ、ギメイ」


「ん?」


「僕と、パーティーを組まない?」


「俺はいいけど…いいのか?アランは銅級で俺はまだ鉄級だし」


「銅級まではすぐ上がる」


「レベルだってまだ10だ」


「このペースなら追いつくのに時間もかからないでしょ」


「でも…」


「ギメイ、僕は強くなりたいんだ。そのためには信用できる仲間が必要だ。僕には君が必要だ、君はどうだい?」


「それは…」


強くなりたい。仲間が欲しい。われらゲーマーにとっては、生存本能の様にこびりついた思考。


「…迷惑になりたくないだけなんだけどなぁ」


「そこは大丈夫だよ。僕は僕の実利のために、君は君の実利のために動けばいい」


「分かりやすいでしょ?」と笑うアランに「そういうことなら」と笑い返す。


右手を差し出される。


「よろしく、ギメイ」


「ああ、せいぜい頑張るよ」


固い握手を交わした。異世界初のパーティ結成だ。









「それで?パーティーって具体的にどう変わるんだ?」


ところ変わって今は朝ごはんのパンを片手に市場をぶらぶらしている。

アランは一度自分の宿に戻って着替えたいという話だったので一度解散し、朝ごはんを一緒に食べながら今後のことを話そうとなったのである。


「んー今まで依頼を受けてきたけど、それが一人で完了したら全部その人に行っていただろう?簡単に言うとそれが頭割りになるね、依頼金とか依頼完了回数とか。」


「それはいいよ。いままでずいぶんいい思いさせてもらったしな。メリットは?」


「というか、複数人数でギルドから依頼を受ける手段がパーティーしかないんだ」


「あーなるほど」


「一応メリットもあって、パーティ内にいる一番等級が高い人の依頼まで受けられるのと、パーティ専用依頼を受けることができる」


「まあ、それはありがたいが…今の俺のレベルじゃ話にならないか」


「だから当分僕たちの目標はギメイ、君のレベル上げになる」


「了解した。目標レベルはアランと同じ18でいいか?」


「そうだな…レベルが上がる仕組みってどこまでしってる?」


「あれだろ、魔力を取り込むと魂が強くなるみたいな」


「そうだ、じゃあ魔物を倒した時の魔力の分配はどうなると思う?」


「え?近い人が多く吸収できるとか?」


「いや、最近の説によると魔力には『意思』のようなものがあって次に入るにふさわしい器に入っていくそうだ。つまり、戦闘で活躍したものから順番に吸収する魔力量が多くなっていく」


「つまり、同等の戦果を挙げられるようにならないと差は広がり続けるだけってことか?」


「そういうことだ。だから僕と同じレベルまで上がるのは必須事項だ」


「了解だ」


「そのあとのことなんだが…金をためてギメイの装備品の更新、その後銀級を目指して依頼をこなしていく感じになると思う」


「おいおい待ってくれよ…それじゃ本当におんぶにだっこじゃないか」


別に俺はキャリーされたいわけじゃないんだよ。


「ギメイ、僕は強くなりたいんだ」


むう…そうは言うが…俺より強い奴なんてごまんといるだろう。それこそ一緒のレベルのやつと組めばいいしなぁ。

あれか、『信用できる仲間』ってのが大事なんだろうが…


しかも俺にとって悪い話は一つもない。

アランはアランで考えていることがあるのだろう。まあ、おんぶにだっこ状態をすぐ抜け出せばいいだけだしな、うん。


「分かった。そういうことなら最速で追いつこう」


「はは、後悔しないでね」


「そうと決まれば…」と言って町の外に出ようとするので「パーティー申請は?」と聞くと帰ってきてからでいいよと返される。





森の前につく。


「じゃあ、今回は僕は手を出さないよ。君が倒したゴブリンの依頼完了品を回収するだけ。少しでも君が吸収する魔力量を多くしないとね」


「わかった」


「よし、そうと決まれば、早速開始だ」


【千里眼】を発動して、ゴブリンの群れを確認する。

3つの群れがいい感じに離れている。はじで戦闘を起せば移動の手間が省けそうだ。

いざとなったら心強い味方が背後にいるのだ。ちょっと効率重視で行かせてもらいますよ。




「グギャ!」


「グギャ?」

「グギャ?」



【水魔法】で砂水壁を4つ作る。魔力と知力が上がったことで魔法の複数同時発動がかなり楽になった。


それらを障害物の様に設置。随時移動させながら、常に1対1の状況を作り続ける。


ゴブリンは砂水壁に慣れていないようだ。対応が常に後手に回っている。

【千里眼】を活かしながら自分だけ相手の位置がわかっているアドバンテージを常にキープし続ける。


よし、これで5体目、一つ目の群れ終了。

動物を殺すことに慣れてきたと思ったが、気にしないことにする。気にしたからと言って今の俺にできることはない。


「グギャァ!」

やっぱり2つ目の群れが合流してこちらに襲い掛かってくる。


4つの砂水壁を正面に展開し、落ちていたゴブリンの武器を投擲する。

直線で近づいてくる、距離が遠くない、複数体で固まっていると当たる要素満載だったので、あたりを確認せずにさらに2つ、落ちていた武器を投げつける。


2体にクリーンヒット。残り4体。


砂水壁をそのまま突破しようと体当たりしてきたので砂水壁を少し後退させ、自分は砂水壁に近づく。

目算を誤り、バランスを崩した1体を突きで倒す。


他の3体は砂水壁を抜けてきたようだが、壁から出てきたばかりで俺の場所を特定できていないところで首を斬る。


残り2体。

すれ違いで砂水壁を抜け、もう一度壁を抜けることを恐れているゴブリンたちに砂水壁をぶつける。


視界がつぶれたところを切りつけて2つ目の群れも終了。


【千里眼】を使って周りの警戒をするが、3つ目の群れがこちらに向かってくる様子はない。

俺の戦い方って地味だから…音とかでないんだよなぁ…いいことなんだけど、ハイドロポンプみたいな派手な技で木々をバッタバッタとなぎ倒す大魔法使いとかにあこがれる気持ちも少しある。なぜ勇者や剣聖がいる世界で遮蔽物を駆使して戦わなあかんのだ…俺のレベルが低いからや、わかりやすくて結構。まだ異世界きて何日だ?5日くらいか?だからな。可能性の塊よ、俺は。


「休憩は終わったかい?」


「はは、次を探してる途中だよ」


鬼軍曹めぇ…









「えーとこちらが報酬の銀貨5枚、銅貨6枚と鉄貨4枚です」


「ふぉわぁ」


「それと、ギメイさん銅級に上がることができますけど、今手続きをしますか?」


「あ、はい」


「じゃあ、ちょうどいいね。ついでにパーティー申請もしておこう」


「パーティー申請の書類は…こちらですね」


「ありがとうございます、じゃあちょっと書いてくるよ」


「お、おう」


「ステータス鑑定はどうしますか?」


「…」


「ギメイさん?」


「あ、あ、お願いします…」



お金たくさん、もう借宿じゃなくていいし、装備が新しくなるし、銅級なったし、パーティーくんだし、おそらく新しいスキルも手に入ってるし…あばばばあ




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