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5話

【千里眼】を発動し続けることは可能か?…意識し続けられたら可能。


だいぶ暗くなってきた森の中で正面から走ってくるのは二人。


「助けに来ました!町はあちらの方向です!私はもう一人のほうの援護に向かいます!質問ですが、ゴブリンは夜目がききますか?」


「おお、助かったのか!それで、ほかの仲間は?」


「あ、一人です。すみません」


「あ、ああ、いやここから先は草原だろう、私たちは大丈夫だ。ぜひアラン君に助太刀してほしい」


「ゴブリンは夜目が効くって話は聞いたことがないわ」


「ありがとうございます!では!」


二人とすれ違いながら考える。正面からゴブリンと戦った場合俺のステータスじゃ太刀打ちできない。

だが、日が落ちた今、夜目が効かないゴブリンか【千里眼】もちの俺かじゃアドバンテージが違う。


見えた!ひと際大きいゴブリンが1体とその取り巻き達が5体。内訳は松明もちが2体、錆びた短剣もちが2体、比較的きれいな短剣もちが1体。

それらと相対する騎士然とした人が一人。その足元にはすでにゴブリンの死体が3体転がっている。


まだ少し余裕がありそうだ。俺はリュックを地面におろし、昨日買ったタオルに持っている石を入れて簡易的な武器を作る。

ここからどいつを倒すかが肝心だ。ポジション的には短剣もち、松明もち、短剣もち…と交互に並んでいる。その取り巻きの前方に大型がいる感じだ。大型の武器はおそらくショートソードといわれるもの。


…まずは明かり要因を潰す。話はそれからだ。


少し弧を描くようにしてゴブリンたちにばれないよう背後を取りに行く。

夜目が効かないとはいえ、音を出しすぎるとばれるので急がば回れだと自分に言い聞かせて慎重に、慎重に。


よし、背後をとれた。いま、俺の目の前では大型のゴブリンの攻撃をいなしながら小型のゴブリンの攻撃を避けている少年一人といった構図の戦闘が繰り広げられている。

言ってしまえば松明要員は賑やかしのようなことしかしていない。武器もちと少し距離が離れた。


今だ。



背後から忍び寄り…武器をスイング。鈍い音とともに小型ゴブリンの頭が陥没する。


まだ武器持ちはこっちに対応できる距離じゃない!もう一体の松明もちまでやれる!


足元に落ちた松明を拾い上げ、もう一体の松明もちへ投げながら距離を詰める。


松明もちのゴブリンは一瞬味方に合流しようか迷ったようだが、松明を振りかぶりながらこちらへと突撃してくる。


「ああああぁ!」


「グギャァ!」


ステータスはおそらく同等。

勝敗を分けたのは体の大きさ。リーチだった。


横からフルスイングした簡易鈍器がゴブリンの頭に吸い込まれるようにあたる。よろめいたゴブリンにもう一度追撃を入れると今度こそ動かなくなった。


そのまま前に走り、後ろを見る。


案の定、取り巻きはこっちを追ってきているが、大型は少年がひきつけてくれているようだ。



足元の松明を少年の付近に投げながら、もう一本の松明の場所を確認する。


俺が近づくために投げた松明は結局松明持ちに当たることなく俺の進行方向に落ちている。

そこまで走っていき、松明の火が燃え広がらないことに少し安堵する。松明の周りには木が生えており、大きな影を作り出している。

これは幸いと松明はそのままに影へと飛び込む。


切れていた【千里眼】を再び発動し、弧を描いて移動しながら周りの安全と取り巻きたちの動向を確認する。


ふむ、俺を追うついでに松明を回収するつもりか…まあ、それか大型に合流して一人を早く倒すかの二択だもんなぁ。


三体で固まっていつ俺が飛び出してきても対処できるようにしている。それはえらいのだが…こうしてみると的が大きいだけだ…ぜ!


俺は布にくるんでいた石を取出しフルスイングする。

もちろん【千里眼】は発動している。


ハズレ。


三体は木に隠れてこれ以上の追撃を避けるつもりらしい。


そう来るなら話は早い。足元にあった石を補充して…いやこすれて音が鳴るよりかは大きい一つに絞ったほうがいいな。


今持っている石を捨て、こぶしより少し大きい石一つを布にくるんで今さっきの大型のところに向かう。




よかった。


まだそこでは大型と少年が打ち合っていた。


若干少年有利といったところだが、大型の持っている武器のほうが森においては取り回しやすそうだ。

剣を振り回すスペースがない少年のほうは決定打にかける様子だ。


まあ、都合がいい。


足元にある松明が大きな二つの影を作っているところその影が一つ増える。


もちろん俺は影が大型の目に映らないようなポジションだ。


少年が気が付いたのか大型の背中がこちらを向くような角度に調整してくれる。


すばらしい…俺は足音を消しながら…渾身の力で簡易鈍器をスイングする。


「グギャァ!」


頭にクリーンヒットしたそれは鈍い音を響かせながらも、致命の一撃足りうることはなかった。


「伏せろ!」


その一言に体が反応する。


「もう大丈夫だよ、助かった」


顔を上げるとそこには振り返ろうとした大型ゴブリンの首を貫いた剣と笑顔の少年が立っていた。


金髪碧眼、きめ細やかな肌。騎士然とした服装。


なんというか…イケメンすぎである。


「あ、そういえばまだ小型三体は生きてるから、早くここを離れよう」


「ああ、普通のゴブリン三体くらいなら軽く蹴散らせる。安心してくれ」


「そうか、まあ、無事でよかったよ。強いんだな」


そういって右手を出す。


「?」


あ?握手ってこの世界にある概念なのか?


「あ、握手か。はは、ありがとう」


なんというか、天然感すげぇ。イケメンだから様になるのもちょっとむかつくぞ。


握手を終えた後大型の耳をそぎ始めたときはびっくりしたが、ゴブリン系の討伐証拠品は耳だという説明を受けて納得する。

そのあと体を割き始めてもう一度びっくりするのだが魔石を回収するためだと説明を受けて再度落ち着く。


「そういえば君、装備はないのかい?」


「あ、ああ。まだ冒険者になったばっかりで戦闘系の依頼を受けるつもりもまだなかったからな」


「そうか、この剣はどうする?君が欲しいなら私はそれに反対するつもりなどないよ」


まあ、ただでもらえるなら。うれしい貰い物ととらえておこう。


「じゃあ、ありがとう」


鞘がないことが問題だが、運がよかったことにタオルでくるめるくらいのサイズだったので取り合ず抜き身の状態は回避できた。


あとでリュックに突っ込んでおけばとりあえずけがはしないだろう。


「あ!」


「?」


「あ、いやここに来るまでにリュックを置いてきたのを忘れてた」


「ああ、なるほど。こちらも回収はあらかた終わったから、リュックを回収しながら街に行くとしようか。ラズニック夫妻の無事も確認したいしね」



リュックを回収して中身を確かめる。無事だったことに安堵しながら、薬草を少しどけ、タオルでくるんだ剣を入れてみる。入りきらなかったのでこれは手で持って帰ることにする。

町について、門のおじさんから簡単な質問を受けた後ギルドへと向かう。


「そういえば、どうして三人で移動してたんだ?冒険者パーティーみたいにはみえなかったけど」


「ああ、簡単な護衛依頼だと聞いたからね、ちょうどこっちの町にわたってみようと考えていたところだったからその依頼を受けだたんだ。実際ただのゴブリンくらいなら何体出ようが問題なく対処できるからね。まさかゴブリンリーダーがいるとはね」


「あの大型のことか?」


「そうそう」


大変だったんだなぁ


「だから、感謝してるよ」


「ん?」


「死んでいたかもしれないからね。やはり私もまだまだだ」


いやー、俺も夜ならゴブリンたちに有利に戦えそうなことがわかってほくほくですよ。




…なんて考えているとギルドの内側が騒がしい。


「すみません。もう日が落ちた後なので、これから救助に向かうのはその冒険者たちの身にも危険を及ぼしてしまいます。ギルドとしてはそれを許可できません」


「そんな…」


Oh、またデジャブ。


扉を勢い良く開けたイケメンがカウンターの前でうつむく二人を見つけて駆け寄る。


「ラズニック夫妻!無事でよかった!」


「な!アラン君!無事だったのかね!?よかった!よかった!」


「ああぁ、心配しましたわぁ」


無事を確かめるようにお互いの体を見つめあう。

うんうん、無事でよかったねぇ。頑張った甲斐があるってもんよ。





「ギメイさん…私言いましたよね、無謀だって」


ちょっと誇らしくなってた。だから背後から近づく怒気に気付くのが遅れた。

受付のお姉さんの目が、かつてないほど冷たい…


「い、いや。町まで助けを求めに走って戻れる距離じゃなかったですし、夜なら【千里眼】で勝ち筋があるなと思って…はい」


「まってください、彼の戦い方に危なっかしさは感じませんでしたし、現に私は彼のおかげでここにいます。あまり彼を責めないでほしい」


イケメンが受付嬢と俺の間に割って入る。

おお!イケメン!惚れそうだぜ!


「あなたもです、確認したところ銅級だそうじゃないですか、それでいて護衛依頼を一人で受けて護衛対象を危険にさらした。今後は気を付けたほうがいいと思いますよ」


「はい…」


イケメンが折れた!だめだ、この戦いに未来はない。


「まあまあ、無事を祝おうじゃありませんか。受付嬢さん依頼の完了手続きをたのめますか」


「まあ、これに懲りたらあまり危険なことはしないでくださいね。…依頼書はございますか?」


「こちらに」


目の前で手続きが終わっていく。

もう一度あの受付嬢さんと話すのは怖いので、他の受付嬢がいるカウンターに行って薬草採取の完了報告をしよう。


「すみません、薬草採取の完了手続きをお願いします」


「はい、それにしてもトラブル続きですねぇ」


「はは、そうですね。あの森ってもう少し危険度が低いと思ってました」


「いやぁ低かったはずなんですけどねぇ、今銀級パーティーに調査依頼を出しているところですので近々わかると思いますぅ」


「はい、こちらが報酬です。銅貨と銀貨どちらにしますか?」と聞かれたので「銅貨で」と返す。


銅貨10枚と鉄貨5枚だ。これで合計銅貨25枚だ。労せずして剣を手に入れたので自由に動かせそうなお金が増えたな。

宿をとるか?いや正直借宿がかなりきれいになったからあんまり不満がないんだよな。


今日の夜ご飯と明日の朝で銅貨三枚と少しがなくなるとして、残り銅貨22枚くらい。


必要なのは剣の鞘と、血で汚れてしまったので新しいタオル。それと下着と服って…そういえば俺の服この世界でも違和感がないものに変えられてたんだよなぁ。なんか詳しく考えるのが怖いのでまだ馬鹿でいることにする。知らぬが仏なこともあるのだ。いや、わりとマジで前の世界の俺って死んでこの世界に来たのか?でも俺の体は俺の体のままだしなぁ。もしそれ以外なら何なのって……想像つかねぇ。


ええっと思考を戻して剣を抜き身で持ち歩くわけにはいかないので鞘を買いに行くか。


と思い、ギルドから出ようとすると…


「まってくれ!名前を聞いてなかった!」


後ろからイケメンが声をかけてくる。そういえば自己紹介をしてなかった。おじちゃんがアレン君だかアラン君だかいってたのは覚えていたが…


「ああ、ギメイ。ギメイ・アカラサマです」


「敬語はいい。今さっきまで砕けてただろ。私はアラン・ハート、当分この街で過ごそうと思っている。お礼をしたいんだが暇なときはあるか?」


「お礼?」


「ああ、食事でもなんでも」


「あー、じゃあ今度レベリング付き合ってくれよ」


「レベリング?」


「魔物狩りのこと」


「それはパーティーを組もうということかい?」


「ああ、いやいや。なんていうかな、俺レベルが1なんだよ。早めにレベルを上げたいんだけど、一人でやると危険だろ。だから…んん?パーティー組むのと何がちがうんだ?まあ、とにかくパーティーを組もうという意味を込めていったわけじゃないんだ」


「…はあぁ、なるほど。どうりで受付嬢があんなに怒っているわけだ。」


「すまん」


「いや、そういうことなら付き合おう。君が無茶な戦いをして死んだなんて日には夢見が悪いどころじゃないからね。レベル10に上がるまでは私が責任をもって君を守るよ」


「そんなにいいのか?」


「もちろんだ、私は命を救われたんだぞ」


なんといいうか、俺のほうが受ける恩がでかくなりそうな気がするが…まあ。この世界で生きるためにある程度のレベルは必要だ。レベリングしようにも最低ランクの魔物も安全に倒せないようじゃ話にならないからな。

これほどありがたい話はない。


食費を考えるとおそらく五日くらいは収入がなくても大丈夫なはずだ。その間にレベル10を目指すか。


「ありがとう。じゃあ明日、朝のえーと四刻半とかどうだ?」


「かまわないよ。それじゃあギルドへの報告がまだ残ってるから、ここで」


「ああ、またな」


四刻半は九時くらいだ。よし、もう日が落ちてから時間がたっている。店が閉まる前に鞘とタオルだけは買いたいな。



最悪だ…タオルは買えた。新しい服、下着も。あわせて銅貨6枚くらいしたが。下着は新しいのを買おうとして高くついた。さすがに古着はいやだったので少し奮発したが。

問題は鞘を売っている予想していた武器屋が閉まっていたことだ。


「どうしよう…」


今はゴブリンの血でぬれた布で刃部分は隠れているが、鞘があるに越したことはないだろう。


一抹の希望をかけて前お世話になった古具屋に向かう。



「なんじゃ」


中は明かりがついていて、変わらずドワーフっぽいおじさんが部屋の隅で座っている。


「あ、この剣の鞘が欲しくて」


「ん?ふむ。まあ、ここは古具屋だからな。この剣にぴったしあう鞘なんて無いぞ」


「ですよね…夜にすみませんでした…」


「まあ、ぴったしあうものがないってだけで、少し大きくてもいいのならそこら辺にあるがの」


神ぃ!それでいいんです!刃物がずっと外に出ているのが精神的苦痛だっただけなので!


えっと、それでもできるだけサイズが近いものがいいだろうなぁ。

革で作られた鞘でかなりちょうどいいサイズのがあったのでそれにきめた。


「これにします。いくらですか?」


「銅貨2枚ってところだな」


なんというかすべての装備ここで揃うのではないかという、謎の信頼感を感じながら銅貨2枚を渡す。

剣を鞘に入れてから、鞘についているベルトに装着するための輪っかにタオルを通し、剣の柄を通してからもう一度輪っかに通すことで簡単に抜けないようにする。


よし、これで危なくないな。


「本当にありがとうございました」


「気にすんな。まいどあり」


かっけぇ、なにか欲しくなったらまずはここだな。間違いない。うん。


その日俺は何か確信を得たまま酒場へと向かった。今日の出費は合計して銅貨10枚だ。まさかのプラスマイナスゼロ。




ギルドの借宿までもどり、忘れていた銅貨1枚をはらい、井戸で身を清めてから寝た。



プラスマイナス若干マイナスでした。


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