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4話

「んー」

この宿に泊まるのも二日目だが…慣れないなぁ。

痛む体を起こし、もうそろそろ風呂を浴びたいなと考えながら現在の所持金を確認する。


銅貨11枚鉄貨6枚。


グウゥ


そういえば…昨日の夜ご飯食べてなかった。教えてもらった酒場は朝からはやっていないだろうから…市場に向かうか。

適当なパンがあればそれでいいや。


その前に…鉄級依頼の確認と…スキルの発動だなぁ。装備はスキルがどういうものか分かってからのほうがいいだろう。


リュックを背負い、ギルドに向かう。


えっと…鉄級の依頼は…おお、一気に数が増えている。


恒常依頼

≪ホーンラビットの討伐・五体あたり銅貨1枚と鉄貨7枚≫≪ゴブリンの討伐・五体あたり銅貨2枚と鉄貨2枚≫≪魔石採取・1個あたり鉄貨5枚≫≪薬樹皮採取・品目による≫≪商業ギルド肉体労働・1刻あたり銅貨2枚≫


単発依頼

≪魔法薬の治験・完全4日銀貨1枚≫≪商業ギルドキャラバンの雑務・一日当たり銅貨5枚食事つき計6日≫≪冒険者ギルドの貸し宿清掃・銅貨4枚≫


魔法薬の治験報酬が高すぎて怖いなぁ…しかも紙が少し古びているからだいぶ昔からありそうだし…まだお金に困ってないからいいや。

で、討伐系は今日はまだできないだろう。スキルの使用が自分の能動意識でできるようになってからだなぁ。


となると冒険者ギルドの貸し宿清掃がいいのかぁ?そのあと薬草採取をしてもいいし…商業ギルドの肉体労働もしていい。


よし、そうと決まれば朝ごはんだ。単発依頼の受注だけして市場へと向かう。






「安いよ!安いよ!」


「そこのねーちゃん!ちょっと見ていきな!」


「焼きたてだよ!今なら三個セットで1銅貨さ!」


おお…ザ市場って感じの盛り上がりだ。

アクセサリーや武器、本を売っているものもある。


焼きたてという言葉が聞こえたのでパンかなと思って近づいていくとすこし甘い香りがした。どうやら果実が中に入っているパイのようだ。


「すみません、銅貨1枚で三つですか?」


「ああ!買ってくかい!」


「それじゃあ」と言って銅貨1枚を渡す。


活発そうなおばさんだ。甘いものだからだろうか、少し虫が寄ってきて不快だが、異世界生活…こういうことはなれないとな。


「はいよ、まいどあり」


「ありがとうございます」


市場を練り歩きながらパイをほおばる。朝ごはんに銅貨1枚、昨日では考えられないことだ。

考えていることは貸し宿の掃除だ。簡単な掃除道具は貸し与えられるし、掃除内容も聞いた限りだと簡単なのだが…寝泊まりするところだ、せっかくならとことんきれいにしてやろうと思って、何か必要な道具はないだろうかと考えていたところだ。欲しいもので行くとマスク…はさすがにないのでその代わりとなる布かな。


市場でタオルのような布を買ってギルドへと帰る。鉄貨5枚で買えたのでよしとする。





「掃除道具と、あとはしごって貸してもらえますか?」


「はしごですか?」


「上のほうも掃除しようと思って」


「備品倉庫に一緒にあったはずですが…けがに気を付けてくださいね」


「ありがとうございます」


備品倉庫はギルドの裏手にあり、掃除道具とも一緒のところなので知っている。

空けるとかび臭いがまあ掃除道具いれなんてそんなもんだろう。

バケツ、ほうき、雑巾が複数個ずつ。それだけだ。それらとはしごをもって貸し宿に入る。


日中ということもあり誰もいなかったので早速仕事に取り掛かる。ここで簡単に貸し宿の構造について触れておくと、積み木でよくある立方体の上に三角柱を乗せたような形をしているので、なかの屋根はそこそこ高いのだ。それらを支える梁から埃を掃いつつ空気の入れ替え、比較的落ち着いてきたら窓掃除あとは順番に壁、床と掃除していくつもりだ。


上を見る。すこし暗くて見えにくいが…こんなことでも使えるのだろうか…【千里眼】!


ん?んー思ったよりスムーズに使えた…なんか感覚をつかんだりとかしたかったんだけどなぁ…

けど、なんか違いをあんまり感じないというか…サングラスを外した時みたいな…まあきれいに見えるって感じだ。


えっと、埃はかなりたまってるなぁ、はたき落としますか…


はしごをかけて、登ってはたく


はしごをかけて、登ってはたく


はしごをかけて、登ってはたく


…単純作業だが…リズムが乗ってくると少したのしいなぁ


はしごをかけて、登ってはたく


はしごをかけて、登ってはたく


OK、これでラストか


最後の梁の埃を落とし切ると窓、門を全開にしてほこりが充満している空気を入れ替える。その間に井戸から水を汲んできて、窓掃除を開始する。


窓の数はそんなに多くなく、ガラスも曇っていることからガラス関連の技術は遅れているんだなと思う。

ガラスの内と外を拭き終えて、乾拭きも終わらせたので今度は床を掃いていく。かなり汚れがたまっており、それらを玄関口のほうにまとめていく。出しだゴミをそのままにするのはなんなのでスコップを借りて穴を掘ってその中に捨てる、最後に穴を埋めるつもりだ。多分埃や髪の毛たちだから…大丈夫だよね?


窓をしめ、少しまってから床の乾拭きを開始する。時々【千里眼】をつかって隠れた汚れをみつけて、水ぶきだったりで対処すれば…床は驚くほどきれいになった。


もちろん新品同様なんて言うつもりはないが…これをみて汚いと感じるひとは少ないだろうと言えるくらいには。


【千里眼】便利。


最後に玄関口の掃除を終わらせて…完了と。


まだ夕方になってないし…完了報告がてら時計を見に行こう…




「完了しました。確認をお願いします」


「はい、私が確認しましょうか」


「おねがいします」


いまは昼1刻半、三時のようなものだろう。依頼完了報告がたくさん来るのは5時から6時。それまで比較的暇な受付嬢さんは人に振るより自分で確認することを選んだって感じかなぁ。

なんて、心の中でホームズごっこをしていると玄関口まで来ていた。


あ、外側とか雑草取りとかやったほうがよかったかな?という考えが浮かんだが受付嬢さんの顔を見るにそんなに気になっていないらしい。


まあ、見てくれはそんな汚くないから、問題は中だったから。と思いながら受付嬢さんの後ろについていく。


「これは…」


ゴクリ


「奇麗…ですね」


ですよね!

まあ、できることなんてたかが知れてますが、頑張りましたもん。

フローリングであればもう少しきれいにできたんですけどねぇ…今できる最善は尽くしました。


「よかったです」


「いや、想像以上です。これは1泊銅貨1枚以上とってもいいかも」


やめてぇ!?僕何のために頑張ったのかなぁ!比較的きれいな空間に安く済むためなんだよねぇ!


「はは、それはそうとあの掃除道具たちたまに使っていいですか?掃き掃除くらいなら泊めてもらっている身ですしやりますよ」


「ああ、そういうことでしたら後で事務長のほうに確認を取っておきます。おそらく大丈夫だとおもいますので、よろしくお願いします」


よし!これで井戸、バケツ、布がそろった。つまり…体が拭けるってわけだ。さすがにもうそろそろ体が気持ち悪いので、シャワーとは言いませんが水浴びくらいはしたかったんですよね。


じゃあ千里眼が使えることも分かったし…ん?これ使えば薬草採取も楽なんじゃね?これで、荒稼ぎしてから潤沢な装備を整えて…レベリング。

一気に今後の流れが見えてきたぞ。よし、そうと決まったら夕方まで薬草採取だ!


「じゃあ、こちらが報酬です」


「あ、うす」



これで銅貨14枚、さらに薬草採取しだいでは銅貨20枚を目指せるぞ…そしたら装備もまともなものが買えるのでは?







よし、場所は変わって平原なわけですが…

【千里眼】!


おお!おお?なんか遠くが鮮明に見えるだけだなぁ…薬草があるところが明るくみえる、みたいなことを期待したのだが…


まあ、薬草採取は慣れてきましたから。自分の力で頑張りますよーと。


【千里眼】でできることを試しながら歩く。

今わかっていることは


1、遠くのものが鮮明に見えるようになる。(例えば遠くの木の葉が見えるとか、町の外についている旗の柄が見えるとか)

2、暗いところが明るく見える。(森の中や明かりがない家の中など薄暗いところでも鮮明にみえる)



だけだ。もしかしたら見ているものに対する命中率とかが上がるかもしれないが…まあそれは比較してみないとわからない。


千里眼を発動すると色の違いが鮮明に分かる。ので気が付いたのだが…この草原主な雑草が4色くらいしかない。つまりそのほかの色があるところに行くと…


「あった…」


薬草が高確率で、ある。




それに気が付いてからは爆速だ。あたりが暗くなってくるとさすがに細かい色の識別は厳しいと思うので夕方になるまででとりきる勢いだ。昨日のリュックサックの容量を超えているので銅貨10枚分くらいはありそうである。しかし…もしかしたらここら辺の薬草を軒並み摘み取ってしまったかもしれない…これは由々しき事態だ。


まあ、こっちも生きるのに必死なのだ。今回の資金で装備が買えるだろうし、まあ【千里眼】との相性を考えると投石具でもいいかもしれないな。弓矢と違ってお金かからなそうだし。



当たりが茜色に染まってきた。もうそろそろで町に帰る時間だろう。


「町まであと少しよ!」


「し、死にたくない!」


「…っ、私が殿を務める!お二方はそのまま町まで逃げてくれ!」




…なんかすごいデジャブ。まあ、前回生きて帰ってこれたのは運がよかっただけなことも分かったし、さすがに今回は…ねぇ。



彼は近くにある石を3つほど握りしめて森へ飛び込んだ。

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