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25話

「俺もこんなこと言いたいわけじゃないが…本当に背中を任せていい相手なのかという疑問がある。こちらとしても命の危険があるんだ…実力が保証されていないなら…残念だがこの依頼は降りさせてもらう」


相手パーティ『沼蛇』のリーダらしき人がギルドの仲介人に厳しい視線を送る。


隣でアランの笑顔が深くなっていく。

俺の予想だが…アランからしたら目の前の仲介人とリーダーを懐柔することはたやすいのだろう。

今までアランの懐柔にかからなかった奴を俺は見たことが無い。


じゃあなぜアランは黙ってみているのか…何かを待っているんだ。

ただそれが何なのかがわからない。


「なあ、お前らレベル20ぐらいで銀級になったんだろ?いくら積んだんだよ、なぁ?」


「特に何も積んでいないよ」


「ジャック…やめなって」


その隣の気弱そうな少年が最初に煽ってきたジャックと呼ばれる山賊みたいな男をたしなめる。

なんというかアンバランスなパーティだなぁ…


「まあ、お前はいい。強者特有の気持ち悪さ…その一片は感じるからな。だが…隣のお前、お前からは何も感じねえ…お前はせいぜいが普通どまりだ。そのお前が銀級に短期間で慣れるのは絶対におかしい」


「ジャック…その人銅級だって…」


「……あ?銅級?」


「あ、はい」


聞かれたっぽいので返事をする。


「え?この街って銀級からしか入れないんじゃ?」


「なんか銀級パーティーとしてならはいれるらしくて…」


「へー、そうなんだな…っじゃなくて、ならなおさらいやなこった!実力がしっかり銅級程度ってことじゃねえか!」


「じゃあ彼の実力が保証されたらこの依頼は受けてくれるのかい?」


「……ああいいぜ」


「じゃあ模擬戦を申し込むよ」


「受けて立つ!」


「受けて立つ!じゃないよ!」


リーダーさんが後ろからジャックの頭を強くたたく。


「そういうの僕しか決定できないのに話を勝手に進めないでくれ!」


「んだよ…模擬戦なら時間はかからないし、実力も測れていいことばっかだろ」


ん?さらっと流されたけど、俺の同意も取らずに話が進んでない?

………これ懐柔を狙ってたの相手パーティじゃなくて俺?


この前、模擬戦ができなかったから模擬戦をやらないといけない環境を作った?

俺が対人戦闘もできるように?


そう考えるとそうとしか思えなくなってきた…


「ギメイはいいよね?」


「…はい」


「…あーもうわかったよ。それで行こう」


相手のリーダーも折れた。

俺も折れた。









改めて考えると難しくないか?

俺たちもレベルが上がったとはいえ相手は人数が3人いるし、聞いたところによると相手のレベルは36、35、33という事じゃないか…

全員俺たちよりレベルが上。


「そうだね…とても難しい」


「他人事じゃないか…」


「相手の弱点は戦闘系スキルが少ないことだろうね…」


「それはそうだな。共同依頼に戦闘系を差し込む当たりそうなんだろう」


「…でも全く分からないや、ははは」


「ああ、そうだな、ははは…わらいごとじゃないぞ」


「いいんだよ、実力を出し切ろう。それでだめならこの依頼は早かったんだよ。」


「……まあそっか」


そのスタンスで行くのなら少し気が楽というものだ。



「行くよ、ギメイ」


「応」





練習場に行くと数人の冒険者が見物人になっていた。


「彼らは?」


「暇だったんだろう」



「それでは、これより『泥沼』と『針と糸』での模擬戦を始めます。使用する武器は自由、魔法使用も許可が下りています。どちらかが降参した場合、もしくは審判が止めと言った場合そこで終了となります。両者準備はよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です」


「こちらも」


「それでは……はじめ!」



【水魔法】を使って砂水壁を作る。

相手の数は3、出す数も3。今の俺ならば3つくらいならば片手間に操作ができる。


相手が仕込みも警戒して2人と1人に固まる。うまく人数有利を突かれた戦い方だ。

どちらか片方と戦うとどこかで俺たちに不利が生まれる。もっとも勝つ確率が高いのが一人を早めに潰して二人とイーブンな状況で戦うというものだが…それには障害物が少なすぎる…


「ギメイ!一人のほうは任せたよ!」


指令が一つ飛んでくる。

分かりやすく、また裏の意を返せば傲慢な指示だ。


「すぐ終わらせる、少し待ってろ」


結局これなら3対2でやる必要性は薄いと思うがな…


「はは、君たち二人とも…失礼ってやつだね」


リーダーさん、レベルは36。曲刀を使う珍しいタイプだ。それ以外の情報はなし。

はあ、行き当たりばったりの攻略は…


俺の好みだ。


見合っている状態でリーダーさんの背後に砂水球を作る。それを後ろから頭にかけるタイミングと合わせて、前へ!

と思ったのに…よけられた。


「後ろに目でもあるんですか?」


「はは、空に目があるのさ」


【鷹の目】か…戦闘中に使うなんてよくやるよ、2カメがある状態での戦闘なんてやりにくいだろ…


そういうことなら、今正面からは弱いかな?

踏み出し、踏みとどまったその足をまた奥に一歩ずらす。

踏み出そうとした矢先にリーダーさんが切りかかってくる。


左手の短剣でガードし、右手のレイピアを振るうが一歩引いて避けられる。


「なんだ?」


「はは、まるで小動物みたいにたたかうんだね」


この挑発は乗らなくていい。

今の違和感…相手が攻撃し始めるのを認識できなかった。

おそらくそういうスキル。


認識疎外系か?


影を使っていないから【影魔法】じゃない…

なら【隠密】か【暗歩】とかだろう。


そこまで思考が進むと【水魔法】で足元を濡らしていく。相手は動きにくくなるだろうが、俺はアルゴスさんのブーツを信じるぜ。


水魔法を外套の内側にまとわせる。


「ほう?」


俺の上にも覆うように水の壁を展開する。

正直かなり処理が限界だ。


「行きます!」


「はは!」


馬鹿正直に言うとは思っていなかったんだろう、面白いものを見る目で俺を見てくる。

いいよ、注目してくれ、俺の一挙手一投足に。


【軽業】【剛力】を使用して、一瞬で相手の間合いに飛び込…もうとする直前に相手の目の前に水球を生成。一歩引いて水球を超えてきた俺のレイピアを受け止めるが…


「…!」


「降参するか?」


「ああ、まいった」


視界が途切れた一瞬の間に【軽業】を使用してローブから体を抜き、ローブとレイピアを【水魔法】でそのまま前進させ、俺は短剣で相手の間合いのさらにそのなかに入り込んだ。

正直手加減されていた感じがぬぐえないので素直には喜べないが、やりたかったことが成功したことは喜ぶとしよう。


「あ、そっちも終わった?」


…おおう

アランさん…あんた強すぎないかい?二人を倒しちゃったの?



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