20話
「さて、明後日までは一昨日と同じ感じでやるとして…それからは魔道袋ありきで行動するからかなり変わる」
「その魔道袋って、どれぐらい入るんだ?」
「んー物によるけど…金貨一枚ならそのベルトについている大きめのポーチがリュック二つ分くらいになるかな」
「そんな入るのか…すごいな」
「ああ、待ち遠しいね」
効率が上がるからなぁ…
「よし、稼ぐか」
「乗り気でなにより」
森の中を進む二人組。
飛猿と呼ばれる白色のサルの群れを探しては潰している。
彼ら単体ではゴブリンより少し強いくらいなのだが、群れの規模が大きいため危険度が一段階上がっている。
金策をするうえでは効率がいい。ゴブリンよりまとまっていてゴブリンより単価が高い。
なかなかクソな思考をしているなと思いながら割り切る。
今はこの最高効率を最高速度で走り抜ける。
周囲に【水魔法】製の水の矢を複数個作る。
『マ ゾルデ セント』(圧縮、回転)
一つ違うところは回転を付け貫通力を上げたところか…
知力が上がって一つ感じたことがある。魔法などの並列処理が得意になったことだ。
今の俺が実戦で使える水の矢は5本がいいところだが。
だが、1本で2体倒す火力はある。
先手にこれをぶち込めばとりあえず有利に群れを解体できる。
俺たちのことを警戒し始める間合いの外から【千里眼】でねらいをつけて魔法を操作する。
それについていく形でアランが進む。
飛猿が気が付いた。
だが遅い。
一気に5体が倒れる。
「はああああぁ!!!!」
アランが飛猿がいる木を蹴る。大きく揺れた木の上でバランスを取ろうとむやみには動けない飛猿に操作を続けた水の矢を飛ばす。
そのまま残りの残党もやると一つの群れが終わる。
これを繰り返す。
「マジか…」
「結構稼げたねぇ」
前半と後半でそれぞれ10の群れを倒し、一人当たり小金貨2枚の稼ぎになった俺たちは困惑する。
「あれだな、俺たちが稼ぎがいいのってパーティメンバーの数が少ないことと効率よく回れるスキルがあるからだろうな」
「そうだねー…僕も戦っていてもう少し大きい武器がいいと思ったから、魔道袋買った後は武器更新のための費用をためようかなぁ」
「いいんじゃないか?」
そのまま夜ご飯を食べに行き、風呂に入り、宿に戻って寝たかったのだが…
「お前たちをどうするかだよなぁ」
鉢いっぱいに育った薬草が俺を迎えていた。
できるのならば活用方法を見出したい。
まずはポーションの作成ができるのかだな。
もしできた場合は販売価格銀貨4枚だったので一気に効率が良くなる。
もしできなかった場合は大量に売るので商業ギルドに行くか…
もしくはこの製法が広まってなかった場合権利を買い取ってもらってもいい。
なんて…考えてはいるんだけど、あんなに簡単に行けたことを考えるともうある手法なのかもな。
だったら、俺がやっていること違法だったりしないよな?
…それも調べるか。
「ふあぁ」
今日は早起きだったので少し眠気が残っている。だが調べ物をする時間が朝ぐらいしかないから仕方がない。
金策も支払いがある以上休めないしな。
えーと…薬草学とポーションの作成についてだな。
ちょうどいい本があったのでそれを読む。
薬草を乾燥させて粉末状にした後魔法水と混ぜ月光のもと一晩おく。
え?それだけ?というか魔法水ってなに?えーと、魔法水の説明は…あった
魔法水とは純水に魔力を流したもの。
ああ…もしかして【水魔法】って人権?
あと他には…薬草の栽培方法とかは…のってないねぇ
マジでなんでだ?この世界の技術の進みようから見て薬草栽培ぐらいはできててもおかしくないぞ…
必要がなかったのか?
今のことを考えると【水魔法】もちは冒険者よりポーション屋にでもなったほうが安全で稼ぎがいいだろう。
となると【水魔法】を持っている駆け出し冒険者ぐらいなのか、選択肢が身近なのが。
もしくは駆け出し冒険者の労働を残すために?
わからない…
法律に関しては調べる手段がなかったので後でアランに聞こうと思いすり鉢と瓶を買って宿に戻る。
薬草を一つとり、【水魔法】を使って水を抜く。乾燥したところをすり鉢で粉末にし、気持ち魔力を大目にかけた【水魔法】で生成した水に混ぜる。
あとは月光に当て、このビンの中身が緑色から黄色になれば成功だ。
もうそろそろ朝ごはんの時間だろうから下の食堂に向かうか…
「やあ」
「おう」
席に着くと適当にご飯が運ばれてくる。
それを口に突っ込みながらアランに聞く。
「なあ、薬草って栽培してもいいのか?」
「一応やってもいいんだけど、セントラルアーセナルからは推奨されていない…かな?」
「なんでだ?」
「薬草栽培を続けていると土地に毒性がたまるらしいよ」
「なるほどなぁ…」
そういう理由だったのね…
「毒性がたまるとどうなるんだ?」
「さあ?そこまでは知らないなぁ」
「そうか…」
「詳しく知りたいならセントラルアーセナルに行って研究資料を見させてもらうのが一番確かだよ」
「いや、取り合えず有効活用できないことが分かったから大丈夫だ…」
まあ、やっぱり試された上でだめだったか…
はぁ、せっかくいい手段見つけたと思ったのに…
「…でも誰からも教わらずに薬草栽培の手段を見つけたんだろう?凄いじゃないか」
「世辞はいい」
「お世辞じゃないんだけどなぁ」
「…よし!切り替えていこう。金策も順調だしな」
「そうだね」
「今日は依頼終わりに防具屋に行けばいいんだもんな」
「グリップの調整だっけ?」
「らしいが…どんなことするんだろうな、初めてだからちょっと楽しみだ」
「武器のためにも頑張らないとね」
「そのあとは俺も魔導袋を買わないとな」
「ただ、ギメイが武器の扱いに慣れたらレベリングに移さないと…いつまでたっても強くならないからね」
「それもそうだ」
「よし、行こうか…」
「ああ、今日もやることは変わらないもんな」
「そういう事」
そのあとはいつも通りに飛猿の群れを狩り、街に戻る。
「だんだん慣れてきたね」
「そうだな、体の疲れはあんまり変わらないが…精神的には少し楽になったな」
「でも気は引きしめていこう」
確かに気を緩めているとも取れるな。
フランさんがここにいたらボコボコにされてただろうな…言葉で。
「よし、じゃあ防具屋に行ってくる」
「僕はお金がたまったし魔導袋を買ってくるよ」
「じゃあ…また明日かな」
「そうだね、また明日」
日が落ちたあともこの街はにぎやかだ。冒険者がたくさんいるからだろうか…酒場の数が多く光源には困らない。
鍛冶屋地区に向かい一直線に進む。
鍛冶屋地区も全体的に明るく、ジオール防具店もまだ明かりがついていた。
「こんばんわ」
「あ、いらっしゃい…ってギメイ君じゃないか。どうしたんだい?」
「いや…グラさんに用があって」
「そうなんだ…グラは恥ずかしがり屋だからね、あんまり話してくれないんだよ…」
「はは…」
グラはアルゴスさんに伝えてないんだ…まあ年頃の娘と父親の問題みたいなもんだろうか?
「グラー、ギメイ君が来たよー!」
反応がない。
「あーごめん、ギメイ君この後予定とかあるかい?」
「いや、とくには」
「それはよかった…おそらくグラのスキルの影響だろうね…【集中】ってスキルで周りの声とかに反応できなくなる時があるんだよ」
「そんなスキルがあるんですね」
「冒険者なら致命的だろう?でも僕ら職人にとっては有用なスキルさ」
「なるほど」
アルゴスさん自身が職人気質だから今のグラの集中を乱したくないんだろうなとなんとなく理解した。
「そういえば、店頭の鎧を見たんですが…勇者様とお知り合いたんですか?」
「ほう!知っているのかい!?」
ああ、もしかして勇者ファンなのって親子遺伝…
「実はそうなんだよ!勇者様に献上できることになってね」
「献上って何が基準なんですか?」
「………僕が言うのもなんだけど、最強の勇者様にふさわしい至高の装備品…かな?」
とてつもない自信だ。
普段のアルゴスさんの物腰からは想像できない。
「すごいですね」
「ありがとう」
俺はこの人たちの世界に足を踏み込めるのだろうか…世界を背負って戦っている人たちと渡り合える次元に到達できるのか…
分からないが、遠いからと言ってたどり着けない保証もない。
一人モチベーションの再確認を終わらせていると奥のドアが開く。
「来たのね」
「ああ、グラ…お邪魔してる」
「こっちよ」
そのままドアの奥に消えていったのでついっていいのかわからなくなってアルゴスさんのほうを見る。
「全然いいよ」
「あ、じゃあ失礼します」
中は工房とその奥に家がつながっているような構造になっていた。
黙ってついていくと家の中に入って…おそらくグラ自身の部屋の中に案内される。
初めて女性の部屋に入ったぞ…分からないんだけど女性の部屋ってこんな鉄のにおいするの?さすがにグラが特例だよな。
周りには武器しかない…
初めての経験なのだが別の意味でしか緊張しない状況で椅子を指さされたので座る。
「これ、握って」
「はい」
渡されたのは剣の形をした鉄板のようなものにグリップが付いたものだった。
「どう?」
「……ごめん立っていい?」
「どうぞ」
座ったままだったらよくわからなかった。
よし、いつも通りに武器をもってみる。
「ちょっと軽い…かな。あと握った感触はわからない。悪くはないけど…比較できるものがない」
「そう、じゃあ次」
そういってぱっと見何が違うのかわからない武器もどきを渡される。
「あ、これちょうどいい重さだ。グリップもこっちのほうがいい」
「そう、じゃあこれも握って」
そういって今度は短剣もどきを渡される。
利き手じゃないほうと言われたので左手で握る。
「んー、ちょっと重いかな…。グリップは握りやすくていいね」
「これに持ち替えて」
「あ、いいね」
「よし」
そういうと武器もどきを回収して、短剣もどきをもう一度渡される。
「これ右手に持って」
言われたとおりにもつ。
「…悪くはない」
「軽いの?」
「…まあ少し」
「分かった」
「本当に少しだから…大丈夫だぞ?」
「あ?」
「あ、すんません」
そういえばこいつもストイック大魔神なのを忘れていた…
結局宿に戻れたのは酒場からも喧騒が収まった時間だった。




