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15話

「ここが…中央都グランか」


「やっぱり今まで寄ってきた街に比べて活気があるね」


「ああ、ちょっとわくわくするな」


「子供だねぇ」


「うるせっ」


対焔雷竜戦から二週間、アランともかなり打ち解けてきたなと思う。

ここに来るまでにフランさんによる鬼の勉強会が有ったり、鬼軍曹アランによる連携強化週間などがあったが…それ以上にきつかったことは魔物をいくら倒してもレベルが上がらなかったことだ。あの街付近にいた魔物じゃあ上がったレベルからさらにレベリングできるほどの魔力がなかった。

30レベル…銀級の目安に到達するのは確かに難しいとなったんだが……左にいるこの男、アランはなんと対焔雷竜戦での成果が認められてレベル20で銀級に昇格しやがった。

俺?もちろん銅級だよ、だって活躍してないもん。これでパーティリーダーが銀級になったことで受けられる依頼の幅が広がったのだが…銀級依頼を受けられるほどのレベルはまだないので早急なレベルアップが必要になったわけである。


というわけで来ましたのがこちらの街…国境なき街、冒険者の街、いろいろな名前で呼ばれていますが正式名称は中央都グラン・アラトナヒト区。

お気づきでしょうか、国名が区と呼ばれちゃってるんです。何を隠しましょう、この街、神山をグルっと囲むように作られており、その外にある国の主要な都市を守る防壁のような役割も果たしているんです。


その特性上一度入った人を国境で縛ることは難しく、入るための審査がとても厳しい…のだが、冒険者というか戦力は大量に必要なわけである。

なので冒険者は銀級になるとギルドが責任を持つということでこの街へのパーティー単位での出入りが認められている。


だから銀級になるのは一段階難しいんですね。うちのアランさんはやっちゃいましたけど。

というわけでアランさんの腰巾着としてギメイ、まいります。


「へへ、旦那ぁ…まずは宿でさぁ」


「君が何を考えてそこにたどり着いたのか謎だよ…」


「なんでだよ、宿探しは基本だろ」


「そこじゃないよ、その下手な芝居のことだよ」


「へいへい、じゃあどうします?宿行くか…ギルドか…武器屋か…飯でもいいなぁ」


「んー、ギルドに行こう。神山方向に出るための通行証をもらわないと」


「了解でさぁ」


「まだ続くんだ…」






「ようこそ冒険者ギルドへ」


「神山への通行証を発行していただけますか?」


「冒険者カードをお預かりします」


目の前で受付作業が始まった。俺は特に何かしないといけないとかもなさそうなので話半分に聞きながら周囲を観察する。

全員歴戦の猛者って感じだ。見た感じじゃわからないかなと思ったがオーラみたいなのが違う。

あそこにいる筋骨隆々で顔に古傷がある人とか…絶対つよい。男性ゲーマーは二分化される。かわいい女の子が好きなゲーマーと、ごっつい男が好きなゲーマーだ。

俺は後者だ。あふれ出る重厚感、圧倒的な頼もしさ、気持ちのいい性格、すべてが好きだ。


「ようこそ。依頼手続きですか?そういうことでしたら…」


あ、ギルド職員さんだったの、冒険者側でしょ…やっぱり見た目で判断できねえわ。だってステータス見た目に関係ないもん。オーラとか嘘。場の空気に飲まれましたわ。


「終わったよ、ギメイ。どうしたの?何かあった?」


「いや、やっぱりみんな強そうだなぁって」


「わくわくする?」


「する」


「君のことがわかってきたよ」


俺は分かりやすいからなぁ…








「さて、ギメイ。今の僕たちにとっての問題とは何だい?」


「レベル」


「それもそうだが、それ以外だ」


「んー?」


「お金です!」


「あー確かに」


今いくら持ってるんだろうと財布の中を見たが銅貨が数枚あるだけだった。


「ちなみに僕のほうはまだお金があるけど…これからのことを考えると少し厳しいね」


「ならいったんは金策かぁ」


「ただ、ここからが大事でね。この神山の魔物を増やさないためにも基本恒常依頼と似たような仕組みで魔物の討伐部位と金品が交換される」


「金を稼ぎつつ、レベルも上げるわけだな」


「そう、依頼金を優先はするが…レベル上げもゼロじゃない」


「そういう事なら反対意見なんてないさ」


「よし、明日から活動は始めるとして…今日はこの街の観光と行こうか」


「俺、装備品と魔道具みたい」


「じゃあ鍛冶地区いこうか」







「あー物欲が刺激される…」


「でも出すものがないからよかったね。散財できないよ」


「拷問だ」


市場…と言うよりはデパートのショーウィンドウのようなイメージだろうか、商店街みたいな構造でそれぞれの鍛冶屋が自分たちの腕を、熱意を、誠意を商品越しに見せてくれる。

もちろんそれに見合った成果が下に書かれているが…


「金貨5枚…」


「稼げるようにならないとね」


「はは、こんなん壊れた日には泣くぞ」


「命よりは軽いだろう?」


全身装備固めるのに一体いくらかかるんだよ…


「まあ、展示品はそれぞれの店の権威を象徴する一本だからね。値段も高いのが多い。中は意外とそうでもなかったりするよ」


「そうか」


「それでも小金貨は下らないかなぁ」


中も大概じゃないか…まあ今の俺に買えないことなんてわかっていた。今回見に来たのは趣味だ。最終的にはお前らを買ってやるぞという意思表示だ。


「んー」


「どうしたの?」


「いや、俺が使う武器って剣でいいのかなぁって」


「たしかにね…ゴブリンリーダーが持ってたからそのままの流れで今の武器が決まってるもんね」


「ああ、せっかくこんなに種類があるならいろいろ試して自分に合う武器にしたいという気持ちもある」


「いいんじゃないかい?」


「ただ…試す手段がなぁ」


「たしか…この街なら冒険者ギルドと鍛冶ギルドの連携で銀貨1枚でいろいろな武具が試せたはず…」


「銀貨1枚」


「まあちょっと高いかなぁ」


「いや、払う」


「そう?」


「ああ、今後のことを考えたら安い」


「…そうだね」


たまに獲物を見る目を向けてくるのやめてくれませんか?アランさん。



「防具もたくさんあるのな」


「うん、僕も初めて見るものばかりだ……あ」


「ん?…お」


アランが見ていた先を俺も見ると二人とも固まった。

そこには俺たちにとっては忘れられない鎧がかかっていた。


『魔鎧』『黒金貨8枚』


勇者が装備していた鎧だ。

「勇者がここで買っていったのか?」


「いや…勇者が神山攻略に出向いたという話は聞いていない…」


「じゃあ…」


「おそらく献上されたんだ。国から勇者は支援を受けているからね」


「ってことはあれが今の最高峰…」


「値段も途方もないね」


「黒金貨10枚って…」



「あんたちねぇ!勇者、勇者って何様よ!勇者様でしょ!」


「うわ!」


急に後ろから大声で話しかけられてびっくりする。


「失礼しました、お嬢さん」


こういう対応はアランに任せよう、と話し出したアランを端目にとらえる。


「…分かればいいわ」


あら?意外と素直。アランが何か話す前に少女のほうが引いていく。もとはと言えば俺たちが悪いし…


「俺も、すみません」


「いいのよ、私もちょっとかっとなりすぎたわ。最近勇者様のことを甘く見ている人が増えてきてね…あの方があまり力を見せびらかすのが好きじゃないから…しょうがないんだけれど」


「勇者と知り合いなのか!?」


「あ?」


「あ、すみません、勇者様でございます。言い間違いです。」


「まあ、知り合いなのは私のお父さんなんだけど…鎧の調整の時に少し話す機会が有ったり…まあその位よ」


「ってことは…この店は」


「私の父の店よ」


「ああ、そういうことか…進行を止めて悪かったな」





「一時はどうなることかと思ったが…意外と話を聞いてくれたな」


「うん」


「どうしたんだよ…アラン?」


「いや…装備の更新が楽しくなったなと思ってね。この店で装備を買えるくらい大きくなろうじゃないか」


「おうよ」


「今日はもういい時間だし…宿を探すかぁ」


「そうだなぁ…予算も限られているし…」


「いやギメイ、宿はしっかりしたところを取ろう。これから受け取るお金はだんだん増えてくる。そうなったとき安宿だと盗みのリスクがつきものだからね」


「なるほど」


今までは盗まれる金がなかったもんで…


「銀貨1枚くらいのところを探そう」


「一泊でか?」


「そうだ」


「たけー」


「でもそういう宿は朝ごはん付きだったりベッドがよかったりと必要な出費さ」


「俺一泊もできねえ」


「今日の分は僕が出すよ。明日からじゃんじゃか稼ごう」


「すまん」






この世界に来て初めてのベッド、本当に気持ちよかった。もう戻れない。

ちなみに一人一部屋で銀貨1枚と銅貨5枚です。高いです。

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