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11話

「『マ ヘレゲル シータ』」(規模縮小・纏え)


石に水をまとわせて投石具にセット。回転させて、タイミングよく片方の紐をリリース!


ビシュッ!


おお!全然見当違いのほうに飛んで行った!草原でやっててよかった。


もう一回!失敗!

もう一回!成功!


めっちゃ遠くまで飛ぶじゃん…。


というかこれ片方の紐だけ手放すの難しいな。片方の紐の端に結び目を作ってやりやすくしてみる。


ん、まあまあやりやすい。


これ問題なのが早すぎて速度を殺さずに水魔法でコントロールするのが難しいところにあるな。

まあ、エイム練習みたいなもんだ。毎日やってりゃ勝手にうまくなる。

【剛力】を発動してやってみる。

…は?多分100mくらい先の木の幹に石ころが突き刺さっている。


距離をはなして有効射程をしらべる。


うまくいった場合、多分200mぐらいなら致命傷になりそうな威力がでている。

今までの飛距離が30mぐらいだったことを考えると雲泥の差だ。

これは強力な武器になる。








「さて、ギメイ、準備はいいかい?」


「ああ、完璧だ」


門の前ですべての装備を整えてアランと合流する。


「今回の依頼は『針と糸』初めての依頼だ。絶対に成功させよう」


「おう」


「よし、じゃあ移動しながら説明するよ。今回の依頼は鉱山で発見されたクレイベアの討伐だ。鉱山までは乗り合い馬車があるからそれで移動する。こっちだ。」





「さて、話の続きだけどクレイベアの特性は知っているかい?」


「泥で体が作られた熊がたの魔獣。核を壊さない限り体が再生する」


「正解、目安レベルは16だけど…君ならなんとかなりそうな気もするね」


それは買いかぶりすぎでは…


「依頼達成報酬は銀貨6枚」


な!?一回の依頼で?冒険者様々だな!


「ただ、パーティーとして今後やっていくにあたってお互いの戦い方を理解する必要がある。だから、今回は僕もしっかり参加する」


「了解」


「これが今日の朝ギルドで鑑定してもらったステータスだ」


================


アラン・ハート Lv 18


体力 B

筋力 B

魔力 C

器用 D

知力 D


スキル【剣舞】【超回復】【夢魔法】


================



「ステータス高くね?」


しかもなんだよ、【夢魔法】って…いいなぁかっこよくね?比較して感じるけどやっぱり俺のステータスってちょっと地味だよなあ…


「僕は生まれつきステータスが高かったからレベルが上がりにくいんだ…」


それがアランの悩み…強さに固執する理由なのだろうか?

いや、もっと別の何かな気がする。


「あと、【夢魔法】なんだけど…相手が見ている夢を操る魔法だから、今のところ活かせていないんだよね。もしいい使い方を思いついたら教えておくれよ」


「僕は君の能力の使い方が好きなんだ」と俺たちしかいない馬車でアランが笑う。


とは言われても、俺もそれを戦闘に活かせる気はしないけど…


「一旦僕が陽動役で、君が遊撃ってことでやってみないかい?」


「了解、まあ都度変えていこう」


「さて、ついたようだよ。まあ、慌てずに行こう」


「そうだな」




クレイベアは日の当たるところには生息しないのでおそらく坑道の中にまだいるだろうと、最初の目撃情報があった場所に向かっていく。

【千里眼】をずっと使用していたかったのだが、アラン曰く銅級依頼は捜索に時間がかかるらしく(軽く1日)、ずっと使用していると目への疲労が尋常ではないことが予想されたので、要所要所で使っている。


例えば…分かれ道に足跡や泥の痕跡がないか、薄暗いところの安全を確保するとか、そういったものだ。



「お、ここ…不自然に岩壁が削れてる…」


「……そうだね。もうそろそろクレイベアの生息域だから、クレイベアの可能性が高そうだ」


「体は泥なんだろ?こんな鋭利な傷を作れるのか?」


「ああ、魔力を使って体を硬化させるんだ」


ああ、そういえばフラン印の攻略本にも書かれてた。一日で頭に叩きこめる量じゃなかったんだよなぁ。弱点から優先的に覚えていった結果か…次からは依頼の前にちゃんと読み返しをしよう。


「なるほど」


「なにか…聞こえないかい?」


耳を澄ます…かすかに何かがぶつかる音がする。


「あ、ああ。何かがぶつかる音が」


「行こう、おそらくクレイベアだ」




到着すると、大きな…土で汚れたような熊が壁を削っていた。


「何してるんだ?」


「魔宝石をさがしているんだろう。クレイベアにとってのごちそうだ」


「なるほど」


「さて、周りに敵は?」


「いない。アランが近づくタイミングで牽制球をいれようか?」


そういってあたりの石を探そうとすると、アランが首を振る


「いや、周りの土を使って、【水魔法】で僕を隠してほしい。近づきさえすれば僕の【剣舞】で相手を足止めできる。そしたら後は【千里眼】で核を探してくれ」


「了解」


【水魔法】を使って、砂水壁の泥版…泥水壁を作る。

アランとクレイベアーの間に展開し、少しずつクレイベアに近づけていく。


クレイベアはまだ壁を削るのに夢中だ。

アランからしたら、泥水壁の向こうは見えていない。クレイベアが壁を削る音だけが得られる情報だ。


だんだん近づいていき、アランが泥水壁を追い越し、クレイベアに急接近する。


【剣舞】を使ったのであろう。クレイベアの指を落とし、再生する前に足首に大きく切り込みを入れる。またそこも再生しようとするが、その間に膝に切り込みを、それの連続でクレイベアの行動を完璧に封じた。強い…あれはステータスもそうだが、大きくプレイヤースキルに起因するタイプの強さな気がする。


もちろん俺もぼったちしているだけではない【千里眼】を使って切り込みをいれたあと再生するまでの間に体の内側に色が違うところがないか見つけようとしているのだが…


「ギメイ!」


「だめだ!見つからない!おそらくまだ攻撃できていない首か頭だ!」


「それだけ分かれば…足場をくれ!」


「了解!二段だ!『マ グレンデ ゾルデ アルク』道となれ!」(拡大、圧縮、留まれ)


クレイベアに向かって走るアランの前に二つ、階段の様に地面から水の壁をだす。


これは魔法言語を手に入れた後に考案した壁の応用だが、人の体重に耐えられる密度の維持に馬鹿みたいに魔力を必要とするし、そのくせ集中力だけはいっちょ前に必要としてくるから俺が使うのは現実的じゃないと思っていたが…魔法言語の練習を見ていたアランは俺にこの手札があることを覚えていたんだろう。


アランは水の階段を駆け上り、クレイベアの首を切り落とす。その後、ズレ落ちた頭を縦横に斬り、四等分にする。


「核は割れたみたいだ」


【千里眼】を使って戦闘が終わったことを確認する。


「おつかれ、ギメイ」


「ああ、でも…俺がいなくても結果は変わらない気がするよ…」


こいつ本当強い。ゴブリンリーダーはなんでこいつ相手にいい勝負できてたんだよ…

どうしても気になったので証拠品を回収しながら質問してみた。


「ああ、あの時は先手を取られてね…斬られた左腕の傷を癒しながら戦っていたから本調子じゃなかったんだよ」


「集中力が切れていたようだ。僕もまだまだだね…」とつぶやくアレスを横目にあと5レベルでこいつと同じ土俵に立たないといけないことに戦慄する。



【千里眼】が新たな敵影を移す。

「ゴブリンだ」


「ギメイに任せるよ」


「了解だ」


ゴブリン三体くらいならすぐ倒せる。

少し考えて魔法で倒してみることにした。


「『マ グレンデ ゾルデ』敵を貫く矢のように」(拡大、圧縮)


手元に一本の水でできた矢ができた。これを自分で操作する。


回転させながら前へ、ゴブリンの体の中で一番柔らかいであろう目を狙って、途中で向きを変えられること。十分な速度を与えられることが功を奏した。

途中で自分の意図した方向へ曲がる弾を外すわけもなく、ゴブリン1は絶命した。


「『マ グレンデ ゾルデ』敵を貫く矢のように」(拡大、圧縮)


当たって消えた水の矢をもう一度生成する。もちろん残りの二体は警戒して、こん棒で体をガードしながらこちらへ向かってくる。

なので泥水壁を二枚作って視界を奪ってみた。


泥水壁を前に警戒している一体を壁を貫通させた水の矢で倒し、それを見たもう一体が逃げようとしたので泥水球を頭に落とし、止まったところをさらに新しく生成した水の矢でとどめを刺す。うん、スムーズになってるな。



「しかし、ゴブリンって本当にどこにでもいるのな。ここ鉱山なんだろ?」


「いや、ここはこのあたりのゴブリンの生息域からは大きく離れているはず。何かおかしいな…少し調べてから帰ろうか」


「了解」








「おかしい、ゴブリンが多すぎる…」


坑道の中を移動しながらゴブリンを討伐して回っていたが、倒せども倒せども一向に数が減っている気がしない。


「そうだな…クレイベアが目撃されたのはいつなんだ?」


「昨日だ」


「思ったより新しかった」


「銅級は依頼に単発依頼が増える。それは緊急性があるが依頼金は出し渋りたい…という時に最低限の実力が保証された銅級冒険者は使い勝手がいいからだ。」


「なるほど」


ゴブリンが大量発生してそれに追われる形で生態系とかが崩れる、といったものがファンタジー物あるあるだと思ったからそれかなぁと思ったけど…それならもう少し前から予兆がでていてもおかしくないもんね。


ゴブリンリーダーが生まれるとかね、ゴブリンの巣討伐に向かった銅級冒険者パーティーが敗走するとかね。


怪しいね。


「ゴブリンの特別変異体とかいる?」


「ああ、ゴブリンキングやゴブリンジェネラルならいるが…もしそれらがいるなら銀級パーティー…もしかしたら金級の依頼になるだろう」


「もしかしたら…」


「いや、その可能性は薄い。どの町もギルドお抱えの銀級冒険者に定期的に調査させているはずだ」


「ふむぅ…」


「だが、それぐらいしか原因が考えられないのも事実だ。一度ギルドに戻り、このことを報告しよう」


「了解だ」











「それは、本当ですか?」


「ええ、鉱山にはゴブリンが少なくとも50体はいました」


「そうですか…分かりました。ギルドマスターに報告してきます。こちら今回の報酬の銀貨6枚です」




「お疲れ、ギメイ」


「ああ、どうだった?」


「ん?まあギルドで会議して銀級に捜査依頼が行くんじゃないかなぁ」


「そういうもんか…」


「気持ちはわかるけど、依頼完了を祝おうじゃないか」


「それもそうだな、お疲れアラン」


「じゃあ銀貨6枚手に入ったし、装備品を買いに行こうか!」


「まてまて、装備はいいの買ったし、手に入った銀貨全部それに使うつもりかよ」


「?うん、だってそっちのほうがいいだろ?」


「んー」


俺自身ゲーマーとしてその思考はわからなくはないが…ゲームじゃないしなぁ。

生活費もそうだし、病気になって動けなくなったりしたときの収入も…


あーいや、そうか。安全に金を稼ぐために装備が必要なのか。いや、お言葉に甘えさせてもらいます率が上がっている。このままではクレクレ大魔神になってしまう…


「とはいってもこれ以上何を増やすんだ?あまり防具を付けると動きにくくなりそうなんだが…」


「回復ポーション」


「確かにそれは必要だ」





というわけで魔法薬品店に来ていますが…魔法陣とか、よくわからない液体とか、カエルの素焼きみたいなものがたくさんあってすごいわくわくする!

棚から適当にポーションを1つ手に取ってみて値段を見て戻す。消耗品に銀貨4枚とか駆け出しじゃ無理です。


と思ったら、それを横から手に取ったアランが受付に向かう。


「ねえ、お姉さん。このポーションと保管筒を銀貨6枚で売ってくれない?」


「なぁ…あ、む、無理でしょう、それ二つで一体いくらだと思っているの?」


お姉さん、がんばれ。アランを見てあまりのイケメンに一瞬ひるんだが商売人の意地を見せるお姉さん。


「そういわないでよ、次の依頼が終わったら奮発できるからさ」


「ま、まあそういう事なら。次はちゃんと払ってもらうからね、また来なさいよ。」


「うん、ありがとう、お姉さん」


「メルダよ、私の名前」


「そっか、じゃあまたねメルダ」


そっと促されて店の外に出る。

当分の間無言で歩いていたので俺もそれについていく。




広場についた後に、

「はい、これ。この水筒に入れているとポーションの劣化が遅くなるからちゃんと移し替えること。ポーションは一度前線を離脱してから飲んで、回復したら前線に戻る。これが基本だよ」

と言われながら今さっき買った商品を渡される。


「あ、ああ。悪いな。銀貨6枚全部使わせて」


「気にしないでくれよ。僕たち仲間だろ」



俺、こいつに逆らえる気がしない。あの速度で人心掌握するのちょっと怖いよ。



「よし、じゃあやること終わったし夜ご飯食べに行こうか」


「あ、リリーさんが新しい魔法言語教えてくれるの今日か」


アブねー






「って感じね。何か質問はある?」


「えっと、アクション…相手の攻撃が当たった後にみたいな時間を指定する魔法言語ってありますか」


「それは時間指定というよりかは条件指定ね。時間指定も条件指定もあるけれど、条件指定なら教えられるわ。時間指定は私たちのレベルでやるのはお勧めしないわ。魔力消費が多すぎるのよ」


「なるほど」


酒場での魔法教室がおわり、ギルドに帰る。


新しく知った単語たちは

1、行動指定ワード

 「回転・セント」「分割・ジオン」

2、方向指定ワード

 「上・ウィ」「左・ア」「右・デ」「下・ソ」

3、条件指定ワード

 「衝撃が加われば・アランガル」「魔力がなくなったら・アマンデラ」

となる。かなり複雑な魔法言語を構築できるようになったが…魔法言語には十分な魔力を加えないと魔法言語として効力が薄れるらしく、魔力量が足りない問題が常に付きまとう。



「あ、ギメイさん」


「あ、フランさん」


ギルドが騒がしい。


「なにかあったんですか?」


「…ゴブリンキングや、ゴブリンジェネラルの存在は確認できませんでした」


「はあ、だったらなんでこんなに忙しそうなんです?」


「かわりに、焔雷竜が確認されました」




「この街は滅びます」

その言葉がやけに耳をこびりついて離れなかった。

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