祝勝会だな
「どうだった? 何を話してたの?」
「え? ああ、まぁ、ゴブリンロードを討伐した件について色々聞かれたりだったな。結構めんどくさかったぞ?」
「まだギルドマスターは疑ってたの? テンジさんの冒険者カードを見たのに何を疑う必要があるのかわからないよ。それに、証人が二人もいるのにね」
「それは、遠回しに私が気絶していたことを攻めてたりはしないかい? 心が折れてしまいそうだ……」
「違うよセラちゃん。そんなつもりじゃなかったんだって。ごめんね」
思わぬところでセラにダメージを与えてしまったテリーヌが少し焦っているのが可愛い。
やっぱりこの三人を見ていると可愛い以外の感情が消滅してしまうな。前みたいに悪態をつかれてばかりだったらこうはならないんだが、今はもうテリーヌですら俺のことを認めてくれているからな。もう完全にパラダイスだ。楽園だここは。
「そうだ、報酬を前払い分だけ貰ったんだよな。金貨5枚だから綺麗に割れないな」
「何言ってるのよ。そんなの私たちが受け取れるわけないじゃない。何もしてないのよ私たちは。もう、ホブゴブリンの報酬は受け取ったからそっちをわけなくちゃダメでしょ。それでも、クエストを達成したのはほとんどテンジだから、テンジがすべて欲しいって言うならクエスト報酬のほうも渡さなくちゃいけないわよね」
「いいって。俺の実力を試すためにつき合わせてただけじゃないか。それなのに報酬を独り占めするなんてゲスな真似しないっての。こっちの金貨も一緒に分けようぜ。俺たちはもう一緒のパーティなんだからな」
「ほんとに? ……いえ、ダメよ。それを受け取ったら私たちはテンジの稼ぎを頼ってるだけの仲間になってしまうわ。それはダメ。お金目当てでテンジを誘ったのじゃないもの」
「そうだよ。私だってそれくらいのプライドはあるんだからね。命を助けてもらった挙句報酬を分けてもらうなんてできないよ。それとも、私たちに何かしてほしいの?」
ちょっと顔を赤らめながらテリーヌがとんでもないことを口走った。
それは誤解を生むから今すぐやめてくれ。というか、今の発言を撤回してくれ。まだここは冒険者ギルドの中なんだぞ。ほかの冒険者たちから俺が殺されちまう。
「やめてくれよ。でも、受け取らないって言われてもこんなに金が必要なんてことないからな。分けるのはダメなら、この金はパーティの資金にしてくれよ。それなら、俺もパーティの一員だし問題ないよな?」
「でも……テンジが稼いだお金よ。私たちが全員でクリアしたクエストの報酬だったらわかるのだけど……」
「いいんだって。だから俺はそんなに金が必要ないって言ってるだろ。とりあえず満足のいく生活が遅れればそれで問題ないんだよ。今の宿だって気に入ってるんだ。ほかに移動するつもりもないしな。金だってそんなにかからないって」
俺はあんまり物欲のあるほうじゃないからな。この世界に来て欲しいものなんて今のところ一つも思いつかない。武器だって何も必要ないし、防具に金をかけるって言うのもなぁ……まだ別にいらないよな。今日だって、この防具なしの状態でゴブリンロードを討伐してしまったし、実際に俺に防具が必要ないってことを証明しちまったもんな。
「そう言うことならありがたく資金にさせて貰うわ。ありがとうテンジ」
「ありがとう。金貨が五枚もあれば色々グレードアップできるよ。でも、最初はテンジさんの防具を買うところからだね。今のままだと心もとないもん。モンスターの攻撃を食らっちゃったら一発で致命傷だよ。せめて、軽い防具を装備してないと」
「えー、俺は別にいらないと思うんだけどなぁ。二人だって俺がゴブリンロードを討伐するのを見てただろ? それだったら俺に防具が必要なんて発想は出てこないはずだが」
「違うわよ。そういう話をしているわけじゃないわ。ねぇ、テリーヌ。私たちはテンジが怪我するのが心配なだけよ。モンスターと戦って攻撃を貰いそうだからなんて思ってないわ」
「うん。レミアちゃんの言う通りだよ。テンジさんが心配だから提案してるんだから。セラちゃんがいるとは言っても怪我をしないほうが良いに決まってるんだよ」
「私が治せるからと言って過信は禁物だ。もちろん、あまりの重傷は治すことができないからね」
そりゃそうだよな。セラがヒーラーだからって、致命傷を負っても瞬時に回復とは無理だよな。そんなことができるんなら、戦闘力がどうとかじゃなくて絶対にSランク冒険者だろ。勝手な想像だけど、ヒーラーの回復能力とかバッファーのバフ能力は冒険者ランクが上がれば上がるほど強くなるんだろうな。そう考えると、セラやテリーヌはまだまだ成長途中なんだろう。レミアだって、攻撃魔法の威力がすさまじいんだったらEランクなわけないしな。
「祝勝会と、テンジの歓迎を兼ねてどこか行きましょうか。ここは、私たちの貯金から奢るわよ」
「当然だよね。奢るのにさっき貰った金貨からなんてかっこ悪すぎだよ。意外と貯金してるんだからね」
「私もだよ。慎重な性格だからいつもお金を手元に残してあるんだ」
「昨日も奢ってもらったのにまたいいのかよ。別にさっきの金から払ってもいいんだぞ? だって、パーティの資金なんだからな。こういう時のためって言ったら違うかもしれないが、パーティのために使うことには違いないからな」
レッツパーリィ。




