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それは違うだろ

「すまないが、テンジ君だけ残ってもらえるかい? 少し二人で話しておかないといけないことがあるんだよ」


「え? わかった。すぐ終わるんだよな?」


「それはテンジ君次第じゃろうな。まぁ、いいだろう。三人は説明ありがとう。今後も冒険者として頑張ってくれ」


 なんか不満そうなレミアたちを見送り、俺は一人だけギルドマスター室に取り残された。

 なんで俺は残されたんだ? しかも、一人って凄い怖いんだけど。どうしてくれるんだよ。これで、口封じになんてことはないよな。いや、それだったら三人をそのまま帰すのはおかしいよな。いい話だって信じよう。そうだよ、なんてったって俺はSランクのモンスターを討伐した男なんだよ。それ相応の対応ってもんがあるだろう。


 一人で勝手にテンションが上がってしまっているが、ギルドマスターのじいさんはまったく表情を変えない。


「テンジ君は昨日冒険者になったばかりだという話じゃったが、それは間違いないだろうか? すまないが、もう一度確認させてくれ」


「ああ、俺は正真正銘昨日冒険者登録を終わらせたばかりの初心者だぞ。レミアに助けてもらわなかったら一人で冒険者登録ができたかすら怪しいくらいだ。それがどうしたんだ?」


「いいや、そんな新人がSランクのモンスター、ゴブリンロードを討伐してしまったという事実が信じがたいのだよ。ゴブリンロードの真の脅威は万を超えるゴブリンの軍勢を率いて行動するという点だが、それでも単独での戦闘能力もSランク級なんだ。それをどうやって討伐したというのか説明してもらってもいいかい?」


「そんなことか。俺は自分でスキルを持ってるんだよ。すげぇ単純なスキルなんだけど、これが強力なんだ」


 単純かつ最強のスキルだからな。

 スキルというか、神様のじいさんから力を授かっているだけなんだけどな。ひじでの攻撃が神の一撃と化す最強の力だ。Sランク級のモンスターだろうが、それが神と同レベルの強さを持ってでもいない限り俺の勝ちだからな。


「スキル一つでSランク級のモンスターを討伐することなど不可能だ。テンジ君のスキルが本当に特別なものだというのかい? それも詳しく聞かせてくれないか?」


「ただひじで攻撃するときに威力が上がるようなもんだな。一応言っておくが、ゴブリンロードを討伐したときもまだ全力の攻撃じゃなかったからな。洞窟の中の巣で戦闘だったし、周囲の環境に気を配らないといけなかったからな。マジで、生き埋めにならないか気を使ったんだよな」


「そんなことがあるというのか? バフを貰って何とか討伐したわけでもないのだろう? はぁ、テンジ君のような新人が現れるとは。これは、私の一存で決められる範疇を超えているな。冒険者ギルド本部へ一度連絡して確認する必要がありそうだ。まず、テンジ君の冒険者ランクをどうするかだな。現状Sランク級のモンスターを単独で討伐することができる冒険者なんて両手の数で足りるくらいだからな。それを成し遂げてしまったテンジ君は必然的に冒険者ランクを最高ランクのSランクに昇格させなければならないんだ。だが、これを私が勝手に判断するわけにはいかないからな。一度本部へ確認するんだよ」


「謹んでお断りします。俺はまだFランクで十分だ。どうせ、三人とパーティを組んで冒険者活動をするんだからな。俺だけランクが上がってもいいことなんて無いだろう?」


 俺がSランクになったところで三人のランクが上がるわけでもない。それに、実力が見合わないというのに冒険者ランクを上げてしまうということは命の危険に直結するからな。自分の身の丈に合わないクエストに行けばそれは当然命を落とす可能性がある。レミアたちにそんな真似をさせるわけにもいかないし、断っておいたほうが無難だ。俺自身まだ、Sランクになるつもりもないしな。もう少し時間をかけて上げていきたいと思ってるんだ。


「そういうわけにはいかないな。私が冒険者ギルドの本部へ報告すれば、いずれテンジ君の昇格をどうするか連絡が来るはずだ。その時に、Sランクに任命すると書かれてあればそれはもう拒否することなんてできない。私が決められないように、テンジ君が自分で決めることだってできないのだよ」


「いや、そりゃ困るって。俺が拒否してるんだから諦めてくれよ。大体、昇格云々よりもゴブリンロードを討伐した報酬の方が俺は気になるんだ。一体どれくらいの報酬が貰えるんだ? 疑似的にではあるけど、Sランクのクエストをクリアしたようもんだろ? そりゃ相応の金額が貰えるんだろうな?」


「もちろんだ。それも、本部から連絡が来るのを待ってからにはなるが、期待してくれていて構わない。先に、金貨を5枚程渡しておこうか? 正式な報酬を渡すときにその金額分引いて渡すことにはなるが、報酬を完全に後払いにされてしまうのは不都合なのはないか? 冒険者になりたての頃は金がないからな。先に渡そう」


「ありがとう。それはメッチャ助かる。でも、ランクの件はできるだけ上げないようにしておいてくれよ? 何なら、パソコン人で討伐したことにしてくれても構わない。手柄が分散されたら昇格だっていきなりSランクはないだろ?」


「そういうわけにはいかないんだ。嘘の報告をしたことになるからね。テンジ君はやはり覚悟しておいたほうがいいだろう。聞きたいことは以上だ。本部からの返答が帰ってき次第、君に伝えるとしよう」


 そうして俺はギルドマスター室を後にした。

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