表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/57

一件落着

 部屋に入ると俺の予想通り初老の男性が座っていた。

 この感じわかるぞ。この人は偉い人だ。俺の権力センサーが反応している。まず、間違いなくこの人がギルドマスターだろうな。ここで、定番の実は今案内してくれたお姉さんがギルドマスターでしたみたいなことはないはずだ。


「よく来てくれた。知っているとは思うが、私はギルドマスターのゼルだ。君たちは私に報告があるということだったが、一体何があったのかい?」


「はい、私たちが今日受注したクエストで事件が起こったんです」


「ほぉ? 事件とは? それは本当に私に報告しないといけないようなことだったのかい?」


 ギルドマスターは妙な圧を出して俺たちを威嚇している感じだ。

 威嚇というと少し違うのかもしれないが、なんというか圧がすごい。これが、ギルドマスターの圧力ってやつか。権力半端ねぇ。


「もちろんです。私たちが受注したホブゴブリン討伐クエストで向かった巣で、ゴブリンロードに遭遇しました」


「なに!? それは本当か? こんな呑気に話をしている場合じゃないだろう。すぐに討伐隊を編成しなければ……まずいぞ、現状この町にいる冒険者だけでは討伐は困難だ。至急、近隣の町へ救援要請を出さなければ。うん? でも君たちはどうやってゴブリンロードに遭遇して生きて帰ってきたというのだ? 話は聞いているが、君たちはEランク冒険者だろう? こう言っては悪いが、ゴブリンロードはSランクのモンスター。君たちが遭遇して無事に逃げ切れるモンスターではないはずだが……」


「その通りよ。おかげで死にかけたんだから!! まずは、Eランククエストにゴブリンロードが出現したことについて謝りなさいよ」


 レミアがキレた。

 俺たちの事よりも、先に町を案ずる判断は決して間違ってはいないだろうが。それにしても俺たちへの謝罪がないってのはレミアは許せなかったんだろうな。さっきまでは敬語で喋っていたってのに、もうため口で語気も強い。


「それこそ理解が追いつかない。君たちはゴブリンロードと戦ったのか? それだと、全滅しているはずだが……もしや、私に嘘をついているわけじゃないだろうね?」


 まぁ、そう思うのも無理はないよな。ゴブリンロードはSランクのモンスター、決してEランクの俺たちが敵う相手ではない。いや、俺はFランクだったわ。どちらにせよ、どうやっても俺たちが倒せるはずはないと思うだろう。そうなれば、俺たちが生き残っていることは不自然に感じるだろうな。当然の反応だ。


「こんな嘘をついて何になるって言うのよ!! どれだけ怖かったかわかるでしょ? 目の前に絶望が現れたのよ。ふざけないで!!」


「レミアちゃんの言う通りだよ。どれだけ怖かったと思ってるの? それを嘘だなんて……ギルドマスターでも許せないよ」


「ああ、私もそう思うよ」


「私が悪かった。では、どのようにしてゴブリンロードから逃げてきたというのだい?」


 至極当然の質問だな。

 でも、これについては俺から答える方がいいよな。


 レミアたちに目で合図を送り、俺が喋ることにした。


「俺が倒したんだ。たまたま今日三人のパーティに仮で加入をしていて、これまたたまたまゴブリンロードに出くわしたわけだ。三人を連れて逃げるのは不可能だと判断したから倒した。それだけだな」


「ハハハッ!! 君はテンジ君だね。昨日冒険者登録をしたばかりの新人だろう? そんな君がゴブリンロードを討伐したというのかい? あまり冒険者を舐めないで貰えるか?」


 俺の言葉が気に食わなかったのか、先ほどまで圧力よりもかなり強い圧で俺のことをとがめてくる。

 しかし、これが本当なんだよな。どうやって、証明すればいいんだっけ。


「ギルドマスター、テンジが言っていることは本当よ。私たちはゴブリンロードを討伐する瞬間をこの目で見たもの。それに、私たちの命の恩人……いえ、この町を救った英雄にその態度はどうかと思うわ」


「あくまでもしらを切るつもりかい? いいだろう。それなら、冒険者カードを見せたまえ。本当に討伐したというのだったら何も後ろめたいことはないだろう? 見せられるはずだろう」


「ああ、そうだったな。これを見せれば証明できるって忘れてたぜ。ほら、これでいいか?」


 ギルドマスターに促され俺は冒険者カードを手渡した。


「な、なにぃぃ!! こんなことがあるというのか? テンジ君がゴブリンロードを討伐したのは真実のようだ。疑って悪かった。しかし、にわかには信じがたい。君たちで討伐したんだろう? 一体どうやって討伐したのだ? 明らかに不自然だろう」


「私たちでじゃないわ。テンジが一人で討伐したのよ。言ったでしょ。私たちは恐怖で動けなかった。そこを、テンジが助けてくれたのよ」


「そんなことが起きるというのか? SランクのモンスターをFランクのテンジ君が単独で討伐したというのか? むぅ、いや証拠はあるから信じるしかないだろう。わかった。ギルドマスターとして冒険者ギルドがクエストを誤った難易度に設定していたことを謝罪しよう。本当にすまなかった。テンジ君がゴブリンロードを討伐してくれていなかったら、若き冒険者3名の命、そして、この町も甚大な被害を受けていたことだろう。本当にありがとう。一体、どのようにしてゴブリンロードが出現したのか冒険者ギルドが責任を持って調査しよう」


「お願いするわ」


 話が通じて良かった。これで、一件落着だな。マジで、あんな普通の場所にゴブリンロードが出現した意味はわからないが、俺には関係ない話だし別にいいか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ