表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/57

町にもどってきたぜ

 無駄に広い巣から出るのに思いのほか時間がかかりながらも俺たちはなんとか町へ帰還した。

 かなりの戦闘だったし、帰り道の一時間がつらくてたまらなかったな。


「やっと帰ってきたな。やっぱり馬車とかは必要なんじゃないのか? 今回ですらこの疲労感だぞ? もっと激しい戦闘の後に町に戻ってくるなんて普通に無理なんじゃないか?」


「馬車もただじゃないのよ。私たちだって馬車を借りられるのだったら借りてるに決まってるでしょ。でも、高いのよ。稼ぎの半分以上が消えちゃうのに、借りられるわけないでしょ」


「そうなんだよね。馬車ってテンジさんが思っているよりも高いんだよ。でも、テンジさんがたくさん稼いでくれるんだったら借りてもいいじゃないかな? ねぇ、二人とも」


 馬車がいいってのはもちろんそうなんだけど、今はもう一つ問題があるんだよな。

 ずっと俺のことを嫌っていたあのテリーヌが帰り道から今に至るまで俺の右手に抱き着いて離れないんだよ。そりゃもうすげぇ嬉しいよ、でもさぁ、このまま町に入ったりしたら俺、男どもに殺されるんじゃないか? 密着度合いだってやばい。こんなにいいことがあっても許されるのかと思ってすらいるのだが、ここから先は本当にまずいんだよ。


「テリーヌもそろそろテンジから離れなさいよ。というか、なんでずっとくっついてるわけ? 男嫌いはどこに行ったの?」


「テンジさんは男以前に、命の恩人だからね。それに、あんなに強くてかっこよかったんだよ。もう、私もテンジさんに気に入ってもらえるようにアピールしなくちゃだめだよ。二人はいいの? テンジさんに逃げられちゃってもいいの?」


「色仕掛けってわけね。どうしようもなくなった時の最後の手段として使う予定だったけど、仕方ないわね。テンジ、私たちが優しくしてあげるからパーティに入ってちょうだい」


 テリーヌの言葉をきいたレミアも空いている俺の左手にがばっと抱き着いてきた。

 こんなことされなくても俺はパーティに入るつもりなんだっての。そもそも、こんな可愛い三人がいるパーティに入れてもらえるって言う時点で俺は満足してるんだ。これ以上は過剰サービスだって。二人とも自分を安売りするのは良くないぞ。


「そんなことしなくてもいいから。俺だって入れるパーティを探してたんだからな。レミアには昨日助けてもらった恩もあるし、今日だって俺一人だったらFランクのクエストにしかいけてないんだろ? それだったら、俺も困るからな。パーティに入れてもらえるんだったらそれでいいからさ。こんなことしなくてもいいんだぞ?」


「私が好きでやってるからいいんだよ。テンジさんは今後絶対に凄い有名な冒険者になるんだから。ほかの人達よりも早く知り合ったという利点を存分に生かしていかなくちゃ。でも、テンジさんが好きだからって言うのが主な理由だよ?」


「あのテリーヌが男の人に好きなんて言ってるわ? どうしたのテリーヌ? ゴブリンロードが怖すぎて壊れちゃったの?」


「レミアちゃんはあんな命の危険を感じる状況でかっこよくテンジさんに助けてもらったって言うのに何も感じないの? それもちょっとどうかと思うなぁ。私が正常だと思うよ」


「二人で勝手に話を進めないでおくれよ。私はずっと気を失って何も見ていないんだ。どうなのかな? 私もテンジに抱き着いたほうがいいのかい?」


「いや、いいから。二人も離れてくれ。このまま町に入ろうもんなら俺が町中の男どもから総攻撃を受けて亡き者にされちまうって。男の嫉妬は怖いんだぞ? とどまることを知らないんだからな」


 そりゃもちろん俺が反撃すれば俺が勝つに決まってるが、そうは言ってもだ、俺だって寝ていて無防備な時間だってある。そこを狙われたりしたら俺がいくら強かろうが意味をなさないからな。反撃できない状況で一方的に殺されてしまう。暗殺者なんかも雇われて来そうだな。それくらい三人は可愛いんだ。世が世なら国が傾くと言っても大げさじゃないんじゃないか。そおの三人からパーティに入れてもらえる俺って、世界で一番ラッキーな男だよな。ほら、もうこれ以上のことをしてもらう必要なんてないじゃないか。


「そんなの気にする必要ないわよ。私たちのことを評価しすぎよ。私たちなんてどこにでもいる女冒険者でしかないわ」


「レミアちゃんは世界で一番かわいいよ。自分の可愛さをしっかり理解していないのは罪が重いよね。私たちがどれだけ日頃男冒険者たちの視線を釘付けにしているかわからないの? セラちゃんと二人でずっと悩んでたんだから」


「嘘でしょ? でもそれはテリーヌとセラを見てるんじゃない? 私のことを見ている人なんていないでしょ」


「これだから困ったものなんだ。本当に理解していないのかい? だからミレアは平気で冒険者ギルドに一人で行けるんだね。私でも一人で行くのは勘弁なんだ」


 レミアはそういうところは天然だったのか。

 この可愛さで無自覚なのはかなりやばいな。今までどれだけの被害者を生んできたか想像もできない。男にとっちゃレミアのほうがゴブリンロードよりも危険度は上だろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ