決着
こいつを倒すには俺はどれくらい力を入れて攻撃すればいいんだ? というよりもこの洞窟が耐えられる限界を超えた攻撃はできないからな。絶対にそこだけは気を付けないといけないんだよな。難しいところだ。かっこよくゴブリンロードを倒したとしても生き埋めになっちまったら元も子もないからな。全員仲良く死亡だ。
「もう駄目よぉ……」
「逃げなくちゃ、逃げなくちゃ……」
「だから焦るなって。俺の後ろに隠れとけ。後は俺に任せろ」
失神しているセラを除く二人は座り込んでしまっている。
俺としても攻撃に二人を巻き込むわけにはいかないからな。こればっかりは後ろに退避してもらわないとどうしようもないところだ。都合のいいことにセラは後ろの方に倒れているからな。いや、でも前に倒れてくれてたら俺が抱えて連れていくしかなかったのに……なんてこった。
「ギャギギギャァァァーーー!!!」
「お? 来るか?」
ゴブリンロードは叫び声を上げ、こちらに向かって走ってきた。
凄い速度だが、向かってい来るのなんて早くても対応できる。綺麗にカウンターを合わせてやるだけだ。
「おらぁぁ!!」
ささっと、二人の前に踏み出し、突撃してくるゴブリンロードにエルボーを合わせた。
ドゴゴォォォン!!! ガンッ!!
「ガギャッ!!」
ゴブリンロードは悲鳴を上げながら後方の壁に激突した。
間違いなくこの洞窟に入ってからは一番の威力でエルボーをかましてやったんだが、まだ威力が足りなかったみたいだな。吹き飛ばしはしたが、悲鳴を上げているってことはまだ余裕があるってことだよな。ここは一気に畳みかけるべきか? でも、壁に激突した状態で攻撃を加えたら壁が持たないかもしれないよな。
「う、嘘でしょ? ゴブリンロードが吹き飛んだわよ……」
「私も見えた。悲鳴を上げて飛んでいくゴブリンロード……い、今のってあなたがやったの?」
「おう、二人もちゃんと見てたか? でも、まだまだこんなもんじゃないぞ。今だって洞窟を心配して威力を抑えてるんだからな」
「こんな時に何言ってるのよ。洞窟を心配して私たちが死んじゃったら意味ないじゃない。もっと、威力が出せるんならそれでやってちょうだい」
「そんなこと言ってもだな。生き埋めになっちまうぞ? それでもいいのか? 絶対まずいだろ」
これで俺の強さを二人にアピールすることができたな。後は、セラにも見せてやりたいところだが、まだ気を失ったままだしな。なんだかんだ言って一番ポンコツなのはセラなのかもしれないな。こんなんじゃ冒険者としてやって行けるのかよ。まぁ、徐々に慣れていけばいいんだろうけど、こういうイレギュラーなパターンも存在するからな。そういう局面にも対処してこそいっぱしの冒険者だろ。
「ガギャァァァァーーーー!!!!」
「お? 怒ったか? あれ? 意外と効いてるんじゃないか?」
がれきの中から這い出してきたゴブリンロードは全身血まみれになっている。
立ち上がっている姿も何と言うか足元がおぼつかない感じもする。これはさっきの一撃がかなりダメージを与えていると判断して良さそうだな。俺の力はSランクのモンスターにすら余裕で通じるって言うことが確認できてよかったな。後は、とどめを刺して終わりだ。二人のご要望通りさっきよりも威力を上げたエルボーをお見舞いしてやろうじゃないか。
「二人とも見てろよ。もっと威力を上げてやるからな。洞窟が壊れても怒るんじゃないぞ」
「もういいから!! 攻撃のダメージが残ってる間に畳みかけなさい!!」
「私もバフをかけてあげる。これが私が今かけれるバフの全部だからね」
テリーヌが何やら俺にバフをかけてくれたみたいだ。
先ほどまでとは体の軽さがまるで違う。俊敏系のバフと他にもいろんなバフを複合させて俺にかけてくれたんだろう。別に必要なかったって言ったら怒られるかな。もう後は、とどめを刺して終わりだからな。確かに、近づくまでに攻撃される可能性はグッと減るか。一瞬で距離を詰めて、終わりだ。
「よっしゃ!! 俺のエルボーを食らいやがれ!!」
ズゴォォォン!!!!
回避することもできずにゴブリンロードは顔面に俺のエルボーを受けてしまった。
今度は悲鳴を上げることもできずに、頭部は吹き飛び、それどころか上半身をすべて吹き飛ばしてしまった。こりゃちょっとやりすぎちまったかな。洞窟もちょっと揺れたし、大丈夫だよな?
「ほ、ほんとにやっつけちゃった……テンジって何者なのよ。Sランクのモンスターなんて個人で討伐できる冒険者はSランク冒険者だけよ。やっぱりほかの町からやってきたSランク冒険者何じゃないの?」
「違うって、正真正銘昨日冒険者を始めたばっかりだ。それに、俺がSランク冒険者だったら、冒険者について何も知らないのはいくら何でも無理があるだろ。流石に少しはぼろが出るって」
「でも……いいえ、その前にお礼よね。ありがとうテンジ。テンジが居なかったら私たちは間違いなくここで死んでたわ。まさか昨日声をかけた新人冒険者に命を救われちゃうなんてね。夢にも思わなかったわよ」
「悔しいけどレミアちゃんの言う通りかな。私からもありがとう。でも、その実力があるのに私たちのパーティに入ってくれるの?」
「うん? 別にいいだろ。三人だって上を目指していくんだろ? なら、関係ないな。俺はいずれ、魔王を倒さなくちゃいけないんだ。一緒に倒そうぜ」
これで、一件落着だな。




