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マジだよこいつら

「俺としては異論はないな。要するに今日そのクエストをクリアすれば一人当たり銀貨5枚が手に入るってことだよな。昨日の二倍以上だぞ。行くに決まってる。というか、すぐに行こう」


「そんなに焦らないの。クエストを受注してくるから三人はここで待ってて頂戴」


「えー? 私も一緒に行くよぉ。ここにこの人と一緒に居たら変な目でずっと見られちゃう。私を見るときに目が嫌らしいんだよね」


「適当なこと言うなよ……ほんとやめてください」


 テリーヌの声が周囲の男どもに聞こえてしまったのかわからないが、すさまじい視線が俺に注がれる。殺意が凄い、俺のことを本気で殺そうとしてるんじゃないのかこいつら。やめてくれ、俺のことを殺したって何も変わらないぞ。

 やばい、ここで二人と離しているのも、こいつらの神経を逆なでする行為だよな。やっぱりやばい、俺が殺されちまう。


「今日は一段と視線を感じる。これも、テンジが期待の新人だからなのかい? みんなもこぞってテンジを勧誘しようとしてるんじゃ?」


「いやいや、そんなわけないだろ。本気で言ってるのか? どう考えてもこの視線は異質だろ。まるで、今から討伐するモンスターでも見ているような目じゃないか。俺のことやっちまおうとしてるんだって。助けてくれよ」


「何を言ってるの? あなたが殺されるときは私の可愛いレミアちゃんとセラちゃんに手を出した時だよ。流石に私も今すぐに殺そうなんて考えてないよ」


 テリーヌのことを言ってるんじゃないんだって。ほら見て見ろよ。二人が俺に喋りかけるたびに怨念というか呪詛というか、まぁ、そういう感情の束が俺に向かって飛んできてるだろ。明らかに俺のことを恨んでるし、殺そうと思ってるんだ。

 一刻も早く、冒険者ギルドを出なければならない。俺はここに滞在している限り命の危険と隣り合わせの時間を過ごさないといけない。頼むから早くレミア帰ってきてくれ。


「テンジに一つ聞いておきたいことがあるのだがいいかな?」


「ああ、別に構わないぞ」


 いやーー!! やめてくれ!! 今は俺に構わないでくれーー!!

 叫びたい気持ちをグッとこらえ、平静を装いながら返事をする。こんな時に聞きたいことって一体何なんだよ。しょうもないことだったら、この視線をどうしてくれるつもりだよ。


「ありがとう。ずっと気になっていたのだが、レミアがあそこまで褒めるって言うことはなかなかないことなんだ。それだけ、テンジの力が凄いというのはわかっているつもりではある。でも、新人冒険者のテンジがどうしてそれほどまでの力を持っているんだい? どうしてもそこが納得できないんだ。何か経歴を隠してはいないのかい?」


「そんなことか。俺は正真正銘冒険者は初めてだし、どこかで戦闘するような仕事をしていたわけでもない。これはもうスキルの強さのおかげってだけの話だな。別に特別なことはしてこなかったからな」


「生まれ持った才能でという話かい? それが本当だとするならば、テンジは勇者にも引けを取らない逸材かもしれないね。うん、とりあえず納得した。後は、実際に見てから確かめることにする」


「セラちゃん、この人の言うことを信じるの? 今のだって、適当に話をしてるだけかもしれないよ。そんな最初から強いなんてことあり得ないよ。私たちだってこれまで努力してきたんだから」


 生まれ持った才能って言うのはあながち間違ってないよな。

 俺の力はこの世界に転生するにあたってじいさんから貰った力だからな。神の力ってだけでチート以外の何ものでもないからな。


「中途半端な実力であのレミアがこれほど褒めるなんてことあると思うかい? 私には考えれないね。テリーヌだってうすうす気が付いてるんだろう? テンジは本当に強いんだってね。第一、レミアが嘘をつくはずがないんだよ」


「それは……いや、私はこの目でしっかりと見るまでは信じないんだから。レミアちゃんだってもう一人のメンバーが欲しくて焦ってるだけかもしれないでしょ?」


「フフッ、そうだね。だから、私も答えを出すのはクエストをクリアした後にするつもりだ。今日は一日時間があるんだからじっくり見極めようじゃないか」


 俺の力がどうこうとか言ってる場合じゃなくなってきてるって。周囲にいる冒険者のほとんどが俺たちのほうを刺すような視線で見ている。特に俺のことを。というか俺のことだけを。ちらほらと、テリーヌやセラを見てなごんでる奴らもいるがそんなのほんの一部だ。いつ俺を殺してやろうかとかそんなことばかり考えてるんだあいつらは。


「ただいま。どうしたの? なんかやけに注目されてないかしら?」


 レミアが帰ってきて、不思議そうに周囲を見渡すと、男どもは何事もなかったように視線を外した。

 こいつら、マジでやってやがる。三人には気取らせずに俺にだけ精神的なダメージを与えるつもりなんだ。くそぉ、これも冒険者としての洗礼か。俺はこんなのには負けないぞ。耐えきって見せる。俺ならできる!!

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