表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/57

至福

「お帰りなさいませ。先ほど予約されましたテンジ様でよろしいですか?」


「そうです。さっき予約したテンジです。夕飯は食べてきたので、お風呂に入ってもいいですか? あとできれば着替えとかもあったりしたら嬉しいです」


「はい、着替えですね。すぐお部屋にお持ちしますので少々お待ちいただけますでしょうか? こちらがお部屋の鍵です。そちらの階段を上がって右の竹の間になります」


「ありがとうございます。それじゃあ、よろしくお願いします」


 出迎えの女将さんが素晴らしい対応過ぎる。

 着替えに関してはほとんど諦めていたがまさか準備してもらえるなんてな。ラッキーだ。そうなれば、この服も洗濯してもらったほうがいいよな? 女将さんが着替えを持ってきてくれた時にお願いしてみようかな。




 俺はそのまま宿の2階へ上がり、自分の部屋にたどり着いた。

 たどり着いたとは言っても数秒程度のものなのでほんの一瞬だな。


「へぇ、意外と広いじゃないか。竹の間って言うだけあってなんか和室っぽい感じだな。これって畳か?」


 異世界とは思えない和室が目の前に広がっていた。

 これなら、朝起きたときに日本の旅館に泊まっていると勘違いしてしまいそうだ。それはそれでなんかさびしい気分になるんだろうな。


「布団もあるし最高だな。これで安いなんてこの世界の宿のレベルは凄いな。マジですさまじいもんがあるぞ。俺でもこれはリピートしてしまいそうだ。女将さんの対応も完璧というおまけつきだからな」


 コンコンッ。


「はい、どうぞ」


「失礼いたします。こちらお着替えをお持ちいたしました。テンジ様の体系にピッタリのサイズをお持ちいたしましたので、おそらく着心地もいいかと思います。お風呂は一階の突き当りです。では、ごゆっくりしていってくださいませ。それと、お召しになっている服は洗濯籠の中に入れていただきましたら、こちらで洗濯いたしますのでよろしくお願いいたします」


「ほんとにありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」


 それだけ言うと、女将さんは下がっていった。

 洗濯もしてくれるとはやっぱり完璧だな。俺がお願いするまでのこともなかったようだ。凄いぞこの宿。この世界でも指折りの超優良宿なんじゃないか? もしかすると、この世界の宿の平均レベルがこれなのかもしれないな。そんなことになったら、最上級の宿はどうなっちまうのか想像もできないぞ。もはや、サービスが凄すぎてお節介の域になっちまってるんじゃないだろうか?


「とりあえず風呂に入ってくるか。ゆっくり浸かって疲れを癒しつつ、明日のことでも考えよっと」


 俺は女将さんに貰った着替えを片手に部屋を出た。




「はぁー、いい湯だったな。温泉ってやっぱり気持ちいいもんだぜ。疲れが吹っ飛ぶみたいだ。今日一日色々なことがあったからな。パッと思いつくだけでも両手の指で足りるか? いやいや、一日に詰め込みすぎだって。こんなの数日かけても濃ゆい内容だぞ」


 突然の死に、神様による異世界転生。このあたりで一日目は終わらせとくべきだっただろう。

 この後に、森でさまよったり、冒険者になっていたり、挙句の果てには美少女三人のパーティに入ろうって言うんだからな。展開が早すぎるっての。ほんとに長い一日だった。スライムを倒すのに体を動かしたのは楽しかったな。力の調整が難しかったが、それもいい感じに楽しかった。


「明日はレミアたちとクエストだよな。あんまりやりすぎるのも良くないんだろうけど、手を抜いてその程度かよみたいな顔されるのも癪なんだよな。一発かました後に、力の調節もできるって言うところをアピールしていくのが無難か? それとも、徐々に力を上げて行ったり? まぁいいや、その場の雰囲気にすべてを任せよう。こんなこと考えてたところでどうせ思い通りの展開になんてならないんだ。それなら、少しでも早く寝て明日に備えるほうが賢いよな」


 宿に着いてから、風呂に入ったぐらいだがもう俺は寝ることにした。

 部屋に戻ってきたら、綺麗に布団がひかれており、寝る準備といえばそこに俺が寝っ転がるくらいのもんだろう。女将さん流石すぎますって。


「こんないい宿を紹介してくれたレミアたちにも感謝しないとな。料金もお手ごろだし、文句のつけようが無さ過ぎる」


 俺は布団の中へ入り、ゆっくりと目を閉じた。






 バンバンッ!!


「起きなさいよ、テンジ!! もう九時よ。まだ寝てるなんてどういうつもりよ!! 早く部屋を開けなさい!!」


 誰かの怒鳴り声で俺は目を覚ました。

 まだ覚醒しきっていない頭で思い当たる声を考えてみるが……レミアだ!!


「え? 嘘だろ!? 寝過ごした!?」


「あ、起きたの? 起きたのなら、すぐに支度をすませて出てきなさい。あまり遅かったらテンジを置いてギルドに言っちゃうからね」


「悪い!! すぐ準備して降りるから宿の前で待っててくれ」


 早起きは学校で鍛えられてるはずだったのにな。なんで起きれなかったんだ? そうだ!! 目覚まし時計がないんだよ。そりゃ起きれないわな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ