宿へ
「いやー、マジで美味かった。奢ってもらってありがとな。これで明日万が一無収入だったとしても生き残れる」
「いいのよ。新人は大変だものね。役に立てたなら良かったわ」
俺たちは飯を食い終わり、店を出た。
期待通りの味でこの世界でも美味いものはたくさんあるということが知れてよかった。しっかし、今のところ異世界らしい食べ物には一度も出会ってないんだよな。異世界らしいって言うのがよくわからないが、モンスターの丸焼きとかかな。食べれるのか知らないけど。
「それじゃあ、もう帰ろうよ。ご飯も食べたことだし、あとは何もないよね? すぐ帰ろう?」
「どうしたのよ急に。早く帰っても何もすることないじゃない。ぶらぶらしながらゆっくり帰りましょうよ」
「ダメ。これ以上この人と一緒にいるのは良くないよ。大体、まだパーティメンバーでもないんだよ。ずっと一緒にいるのはおかしいよね? そう言うことだから早く帰ろう?」
「まだそんなこと言ってるの? わかったわよ。私も無理に連れてきちゃったしね。テンジ、明日は九時くらいに集合するからそのつもりでお願いね。私たちの宿の前にいてくれるか、冒険者ギルドで待ってて貰ってもいいわ」
「ああ、それで行こうか。俺もちゃんと休んで体力を回復させておくことにする」
「ここで別れるつもりかい? 帰り道は同じ方向だが?」
いや、そりゃそうだったわ。三人の宿の近くで見つけたんだからな。帰り道も同じに決まっている。
なんか、ここで解散みたいな雰囲気が出てたから俺もつい同意しちまったんだよな。置いてかれたら無事に宿に帰れるかも正直怪しいし、ここはついて行かないとまずいよな。
「ほんとね。まっすぐ帰るし、テリーヌもそれくらいはいいわよね?」
「我慢する。でも、寄り道とかはほんとにしないからね。私だって、精神的に疲れてるんだから早く部屋に戻ってくつろぎたいの」
男が苦手な上にレミアがパーティに入れようなんて話を急にしだしたもんな。そりゃ疲れもするだろう。俺だって同じ立場だったら疲れ切ってすぐにでも部屋に戻りたくなっているかもしれない。
でも、俺の実力を見せたところで、テリーヌの態度が変わるとは思えないんだよな。この調子だったら、強いけど男だからやっぱりダメとか言われそうだ。というか、絶対言われるんじゃないだろうか。
「宿まで戻る間に明日の予定について話し合いましょうよ。さっきは、適当に九時に集合って言ったけどテンジはそれで大丈夫? 合流して冒険者ギルドに向かうほうがいいわよね?」
「俺も一人で冒険者ギルドまで行けるかわからないし、そっちのほうが助かるな。そのつもりではあったけど、何処で合流するのが一番いいんだ? やっぱり俺が宿の前で待ってたほういいか?」
「そうね。宿の前にいてくれれば、すぐに合流できるもの。でも、寝坊されたら困るのよね。テンジって朝は強いほう?」
「起きれないということはないと思うぞ。なんか待ち合わせにいい場所でもあればいいんだけどな。それか、同じ宿だったらもっと楽だったかもな」
同じ宿に泊まっているのであれば、部屋に迎えに来てもらうもしくは、迎えに行けばいいだけだからな。それなら、寝ていたとしても起こすことができるし、無駄に待つ必要もない。
俺が三人の宿の中に入って部屋を尋ねるのも良くないだろうし、そうなったら逆に俺の宿のほうに来てもらったほうがいいのか?
「宿の前で待つのは非効率的だろう。私たちがテンジを迎えに行けばいいじゃないか。事前に部屋さえ教えてもらっていれば可能だろう?」
「確かにそうね。私たちが遅刻するなんてあり得ないし、九時にテンジを迎えに行くわよ。テンジはそれまでに準備してくれていれば構わないわ」
「悪いな。俺が女の子の部屋に行くのはどうなのかと思ってたから部屋でおとなしく待つことにする。パーティでクエストに挑むからって何か特別なものが必要とかないよな。冒険者カードさえ持ってれば大丈夫なのか?」
「ええ、テンジは冒険者カードだけ持ってきてくれればいいわよ。武器とか防具も無いだろうしね」
もちろん、俺は武器も防具も持っていない。というか今日冒険者を始めた俺が持っているわけもないよな。レミアは一緒にクエストに言ったからその辺も理解してくれている。防具は今後必要になるだろうから、調達することも考えないといけないな。
武器を持たなくてもいいってのは助かるが、冒険者としてはやっぱりカッコいい剣とか持って戦いたいって言う願望はあるよな。使わないにしても腰に剣くらい指しておきたい。そっちのほうが強そうだしな。
「それじゃあ、また明日ね。九時に迎えに来るから準備して待ってて」
「ああ、また明日。明日はよろしく頼む」
挨拶をかわし、レミアたちは自分たちの宿のほうへ歩いて行った。
これでやっと一人の時間だな。まったりしよう。すぐに部屋に戻ってまずは風呂かな。着替えとかがないのは不便だな、明日にでも服は買って来よう。




