店に到着
「悪かった、今のは俺の配慮が足りてなかったな。酒場の件はなかったことにしてくれ」
「別に私は構わないわよ。酒場のほうがお祝いって感じがあるのは事実だし、私とテンジはクエストをクリアしたわけだしね。それも、テンジにとっては初クエストよ。今思い出して、あれは異常な光景だったわ。新人冒険者が放っていい攻撃じゃなかったもの」
「そりゃ俺が規格外だから当然だって。もっと、高威力で度肝抜いてやれば良かったな」
そんなことしたら、森がとんでもないことになっていただろうし、実際にするつもりはないんだけどな。
「冷静に考えて見て二人とも、今は私たちはまだEランクパーティだけど、これからはどんどん上を目指していくのでしょ? それなら、強い仲間をパーティに誘うのは当たり前のことじゃない。テンジはFランク冒険者の強さじゃないわよ。下手したらAランク冒険者とかよりも強いかもしれないわ」
「いくらなんでも話を盛りすぎじゃないかな。Aランク冒険者なんて、この町にはいないし、人間をやめてるSランク冒険者を除外したら実質人類の頂点だ。その冒険者よりも強いなんて話は私は信じられないな」
「レミアちゃんも私たちを説得しようと必死なんだよ。少しくらい話を盛ってもいいじゃない。見ていて凄く可愛いし、やっぱりレミアちゃんを騙してるこの人は許せないよ。レミアちゃんの純粋な心に漬け込んで……明日が終わればもうさよならだね」
いくら口で説明したところで信じてもらえそうもないな。
というか、Aランク冒険者とかSランク冒険者とか言ってたけど、最終的には俺もそこまで登り詰めるのは確定だし、現時点でも人類の頂点くらいの強さはあるだろ。魔王と対等の強さかと言われればまだそれは難しいかもしれないけどな。レベルだって、まだまだ低いし、そこは今後の成長に乞うご期待だな。俺のレベルが上がればひじに宿っている神様の力も存分に発揮できるようになるはずだ。頑張って行こう。
「ご飯を食べようとしてるのに話を逸らして悪かったわ。もう細かい話は明日ちゃんと見てから決めましょう。それよりも、私はお腹が空いたわ。早く入りましょう。そこに見えるお店がそうよ」
レミアが指さした方を見ると、かなり大きな建物にピカピカと光る看板がくっついている。なんというか町並みにまったくあってないなこの看板。街灯と店の明かりが主な光源になっているこの道に、圧倒的な明るさの看板があるって言うのがなんとまあ浮いている。これが、見たら覚えられるって言っていたわけだろうな。確かに、この違和感は忘れないかもしれない。
でも、ほかの店と比べても建物のでかさが段違いだ。それだけ、繁盛していてお金を持っているということだろう。つまり、相当味に期待が持てるって言うことだ。最初から、三人のおすすめだって言っていたから味のほうは心配していなかったんだけど、こうやってみるとやっぱりいい店なんだろうなと思うな。
「外まで並んでないようだし、すぐに入ろうか。いくら店が広いからといっても待つときは待つからね」
「そうだね。無駄に話しながら歩いてきちゃったから時間がかかったよ」
「無駄な話じゃないわよ。私たちのこれからの進退を決める重要な話だったでしょ。真面目に聞かないからそう思うのよ」
「ごめんね。でも、いきなり突拍子もない話をされたら誰でも同じ反応になっちゃうと思うんだよね。それよりも早くいこ」
レミアはテリーヌに引っ張られて店へと向かっていった。
もちろん、俺とセラもその後をすぐについて行く。セラは男嫌いとか聞いていたわりに俺への態度は特にあたりが強いなんてことないんだよな。もしかして、レミアの勘違いか? それとも、うまく隠していたりとか? まぁ、今は考えてもしょうがない。たらふく食べることだけを考えよう。折角の奢りなんだ食わなきゃ損だし、失礼だろ。
店へ入ると、それなりの人たちで繁盛していた。
外から見ただけだと、中にどれくらいの人がいるかわからないしな。入ってみてわかることもたくさんあるんだ。
「いらっしゃいませ!! 何名様でしょうか? あれ? レミアさんたちじゃないですか。今日はこんな時間に珍しいですね。3人でよろしかったですか?」
「いいえ、今日は4人なのよ。アムリこそ、こんな時間までご苦労様ね。バイト頑張ってちょうだい」
「いえいえ、お金は必要ですからね。頑張りますよ……うん? もしかして、そちらの男性の方が4人目の方ですか? ええーー!! 一体誰の彼氏さんですか? 私何も相談されてませんよ」
「違うわよ。ただパーティに勧誘しているところなの。その流れで今日はご飯をご馳走しようと思っただけ。アムリの思っているようなことはないわよ」
「本当ですかぁ? 私の勘が反応してるんですけどね。詳しい話は後でうかがいますから。こちらへどうぞ」
そんなこんなで俺たちは窓際の四人掛けの席に案内された。
とりあえず、レミア以外の隣に座るわけにもいかないし、自然な感じで横に座った。これで、第一関門は突破だ。




