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異世界転生の儀

「お、俺の肘がぁぁーー!! やばいって、今まで見たことないくらい肘が輝いてるぞ!?」


「おぬしの肘は元々まったく輝いておらんかったじゃろうが、これくらいのことでうろたえているようじゃこの先が思いやられるのぉ。もう少し冷静になれんもんかの」


「そんなこと言ったってよぉ。今まさに俺は神のごとき力を授かったんだよな? だったら、これくらいの反応をしなくちゃ逆にじいさんに不義理ってもんだろ。俺はこんなにも力を貰って喜んでるって言うじいさんに対するアピールだ。どうだ? 俺に力を授けて良かったって思えるか?」


「今後のおぬしの活躍を見て見んことには何ともいえんのぉ。わしが求めておるのは異世界の魔王を討伐することじゃからな。現時点でおぬしが喜んで力を受け取ったところで何を喜ぶ必要があるというんじゃ」


 この爺さんには心って言うもんがないのかよ。

 人が喜んでいるのをみれば、なんか自分自身も嬉しくなってくるもんだろうが。俺だったら、こんなにはしゃいでくれたら力を上げた甲斐があったって思うけどなぁ。そういうところが人と神との違いか。


 とは言いつつも俺は本心から喜んでるだけだからな。適当にじいさんに対してどうちゃら言ったが、そんなこと微塵も思っていない。俺もじいさんと同じじゃないか。もう少し感謝の念とかが湧いてこないとダメだよなこの状況……いや、まだだ、まだ俺の心は腐ってねぇ。


「もうおぬしには力も授けたことじゃし、すぐにでも異世界へ旅立ってもらおうことになるが……準備はいいかの?」


「ちょっと待ってくれ。じいさんの言う通り力は貰ったが、肝心の異世界の説明が何もされてねぇじゃんかよ。俺は一体どんな世界に転生させられるんだ? 言葉とか文字は大丈夫なのか? それに、モンスターだっているんだろ? その辺の説明くらいしてくれるべきだろ」


「細かいことをうるさいのぉ。そのあたりのことはすべて心配する必要がないから説明を省いていることがわからんのか。これじゃから、察しの悪い奴はダメなんじゃよ。もっと先のことまで考えておかんとこの先生き残れんぞい」


 なんの説明もなしにこの言い草は流石にやばいだろ。

 神だからって何を言っても許されるくらいにかんがえてるんじゃないだろうな? ふざけんなよ。転生するって言うのに説明がないほうがよっぽどおかしいわ……と面と向かって言ってやりたいが、俺はじいさんに命を握られているようなもんだし、おとなしくしておこう。あくまでも文句は心の中で。


「わかったよ、心配ないんだったらそれで構わない」


「説明を要求されたところでわしは説明する気はなかったんじゃがな。まぁいいじゃろう。それでは、異世界転生の儀を執り行う。あまり動くんじゃないぞ。座標の指定が面倒でな。ミスるとおぬしは首だけ別の場所に転生なんてこともあるからの。そうなったときは運が悪かったと思うんじゃな。行くぞい!!」


「いやいやいや、そんなさらっと流していいことじゃ……」


 反論しようとして俺は叫んだが、不意の光に声に詰まった。

 なんだこの光は、さっき俺の肘を纏っていたような光が地面からすさまじい勢いであふれ出している。これが、異世界転生の儀か。とてつもない力を感じる。こんなに力を使うようなことを俺はしてもらっているんだと考えるとありがたい気もするが、この力をそのまま俺にくれよという考えも同時に頭をよぎる。俺の体に宿せる神エネルギーの限界まで力を与えられてるとは言っても、もっと欲しいもんは欲しいんだ。


 強くなる光にやられてか、俺の意識はだんだん薄れていった。






「う、うぅ。ここは?」


 俺はぼんやりとした頭を軽く叩きながら体を起こした。

 目に入るのは木。周囲を見渡しても一面木に覆われていた。


「森か……え? 森?」


 なんで俺は森で一人転がっているんだ? 転生させてもらってそれで……え? もしかして、俺の新たな生活の出発地点ってこの森なのか? あのじいさん座標の指定がどうとか言ってたくせにこんなしょうもない森に転生させやがって。そんな座標を気にするくらいだから宿の一室だったりするのかと思ってたのにさ。

 まずは、この森から脱出して町を目指すところから始めなくちゃいけないじゃねぇか。どこにどう進めばいいのかだってまったくわからないんだぞ? それを地図もなしに森に放り出すなんて何考えてんだよ。


「はぁ、なんで俺がこんな目に……転生させるにしてももっと別の場所があっただろう。これもちゃんと確認してなかった俺が悪いって言うのか? じいさんに言ったらそう言われそうだな。諦めるしかねぇか」


 こうなっちまったもんはしょうがねぇ。自分自身の体だけが頼りだ。簡単な話だろ、町を見つければいいだけだ。そして、その街を拠点にしてしばらく生活する。まだまだ何も詰んじゃいねぇよ。よっしゃ、俺は街を探すぜ。

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