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一旦、これでなんとか

「わかった。そこまで俺のことが信用できないんだったら、パーティに入るって言う話はなかったことにしてもらって構わない。別に俺はパーティにこだわるつもりもないからな。必要なときは適当な奴らと組んでクエストに行けばいいだけだ」


「テンジちょっと待って。二人とも、テンジがほかのパーティに取られちゃってもいいの? こんな凄い新人二度と見つからないわよ」


「そうは言ってもだね。テンジの実力を見ているのはレミアだけなんだよ。口だけで強いって言われても新人が強いなんて話信じられないな」


「セラちゃんの言う通りだよ。レミアちゃんはその人に騙されてるだけだから。きっと、何か卑怯な手を使って自分の実力を大きく見せてるだけだよ。モンスターとも戦ったことがないような新人が強いなんて話あり得ないんだから」


「ほら見ろよ。俺がいくら言ったってもう同じだろ。諦めようぜレミア。今日のことは感謝してるから個人的にお願いとかあれば聞くからさ。それでいいだろ? パーティにこだわる必要なんてないんだ。それに、三人のパーティには絶対女の子を入れたほうが色々といいだろ」


 もう完全に終了だな。ここから、入れる保険なんて存在しない。

 完璧なまでに嫌われてしまっている。正直、俺のことを嫌う理由は理不尽かもしれないが、レミアを心配してのことだろうし、何も言えないな。


「レミアちゃん、この人もこう言ってるよ。考え直そう? 少し考えれば騙されてただけだって気が付くはずだよ」


「私はテンジが森を破壊するほどの威力を出してるのをこの目で見たのよ。セラとテリーヌこそ見たら絶対にその認識が変わるわよ。むしろ、私はこのパーティを抜けてテンジとパーティを組むわ。そうしたほうが、ランクアップするのも早いわ」


「それはダメだ。レミアがみすみす男に騙されるのを見ていろって言うのかい? とても私には耐えられない。レミアも引くつもりがないみたいだね。どうしようかテリーヌ? ここまで言うんだったら実際に見て判断するのはどうかな? 私たち二人の目まで欺くことはできないだろう?」


「そうしましょうよ。二人も見ればわかるわ。力の底が見えないって言うのはテンジのことを言うのよ」


 レミアは俺が思っていた以上に俺のことを買ってくれているみたいだな。

 ここまで必死に説得してくれるなんて思っていたなかった。でもなぁ。実際に俺の実力を見せたところで難癖つけられて終わりな予感もあるんだよ。目の錯覚だとか言われそうだ。


「え? この人とクエストに行くってこと? 私たち三人と?」


「そうよ。一度パーティとしてやって行けるのかをしっかり見極めてから判断するべきだと思うわ。それとも、テリーヌはテンジの実力を見ちゃったら後に引けなくなるから逃げるつもり? ダメよそんなの。セラは来てくれるみたいよ」


「レミアがここまで他人を認めているということも珍しいしね。私は見届ける価値くらいはあると思うんだ」


「セラちゃんまで……二人ともおかしいよ。この人に騙されてるんだよ……」


「言っとくけど、俺には攻撃以外の能力は何もないぞ。人を騙す才能なんてもちろん持ってない。これも、レミアが俺の実力を買ってくれてるだけなんだって」


 セラはどうやら確かめるくらいならいいって感じのスタンスだな。後はテリーヌをなんとか説得するだけ。実際に、見ても納得してくれなかったらそれまでだが、それでもノーチャンスよりかはマシだろう。

 それに、俺には神様から授かったパワーがあるんだからな。これで、実力不足なんて言われちまったら、どうしようもないって。魔王を倒すほどの素質を持った男で足りないんだったら、このパーティに入るための条件は男以外っていうのが完璧に決まっちまうな。


「うぅぅ……ほんとに一回だけだよ? それでダメだったらレミアちゃんも諦めてね」


「ありがとうテリーヌ。きっとテンジは期待に答えてくれるはずよ。私たちのパーティに足りなかった前衛をしっかりこなしてくれる人材になるわ。これで、戦闘も楽になるはずよ」


「それって、俺ばっかりモンスターと戦わせようとかしてないよな? 大丈夫だよな?」


「そんなことしないわよ。今までは前衛がいなかったから全員で戦うしかなかったのが、これで役割分担が明確にできるわけ。だったら、私はウィザードとして後方から魔法攻撃、バッファーのテリーヌがサポート、ヒーラーのセラが回復ですべてうまくいくわ。それくらい前衛って言うのは大事なのよ。しっかり頼むわよ」


「お、おう。まぁ任せとけ」


 セラってヒーラーなのか? 雰囲気といい見た目といい、戦闘系だと思っていたがまさかだな。どちらかといえばテリーヌのほうがそれっぽいんだけどな。いやいや、人を見た目だけで判断するなんて良くない。適材適所だよな。適性があるものをすればいいんだ。


「それじゃあ、一旦解散ね。私はテンジが泊まる宿を探すのを手伝ってくるから二人は先に戻ってて」


「え? ……ふ、二人の仲がそんなに進んでいたなんて……私は許さないよ。レミアちゃんそのままその人の部屋に泊まるつもりでしょ。レミアちゃんに手を出す男は私が許さないんだから」


「ちょっと何言ってるのよテリーヌ。テンジが泊まる宿を見つけたらすぐに戻ってくるわよ。大きい声で変なこと言うのはやめてよね」


 なんとも愉快なコンビだな。これに、セラまで入ってきたら俺の手には負えないな。既に負えてないんだけどさ。

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