表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/57

魔王

 スライム10匹を無事に倒し終えたのはいいのだが、このクエストの報酬っていくらくらいなんだろうか? 俺は肝心なことを聞き忘れていたことに今更ながら気が付いた。

 レミアが言うには、宿代と飯代を差し引いても余るくらいらしい。それでも、自分が知らないって言うだけで不安になってしまうのが人間だ。俺もこう見えてかなりの小心者だからな。不安なことはできる限り消しておきたい。


「レミア、このクエストの報酬ってどれくらいなんだ? そう言えば聞いてなかったと思ってな」


「あれ? 言ってなかった? スライム10匹で銀貨4枚よ。数が多いから報酬も割増しになってるのよね。スライムなんて5匹狩っても銀貨1枚くらいが相場なのに、このクエストはやたらと報酬が高かったのよ。ほんとラッキーだったわ」


「相場の2倍の報酬だったわけか。別に数が増えるくらい楽勝なんだけどな」


「駆け出し冒険者たちからしてみればそうはいかないわよ。体力は戦闘を重ねるに連れて奪われて行くし、用意していたアイテムだって尽きていくでしょう? そう考えると、どうしても長期戦になってしまうこのクエストの報酬が高いのは当然のことだとは思うわ。それにしても、ちょっと美味しすぎたけどね」


 まさに俺のために存在していたクエストってことか。

 これも、じいさんが俺の味方をしてくれているおかげだよな。前世で悩まされていた不幸がこの世界に来てからは一切起っていない。つまりそう言うことだろう。じいさんもまったく最高なことをしてくれるじゃないか。


「二人で山分けして銀貨2枚ずつか。これで、俺は今日一日過ごせるんだよな? 飯と宿代を払っても余るくらいってのは嘘じゃないよな?」


「テンジって、モノの値段もわからないほど田舎から来たの? ご飯も宿も銅貨でこと足りるじゃない。何なら、銀貨一枚もあれば十分なご飯といい宿が取れるわよ」


「そうだったのか。悪いな、ちょっと世間知らずで。俺もこの町に来たのは初めてだから勘弁してくれよ」


「この町じゃなくてもそんなに違いはないと思うんだけど……」


 まったく変なところで鋭いんだからなレミアは。俺が異世界から来た、転生者ということを教えても何一つ得はないから黙ってるけど、色々疑われるくらいなら信じてもらえないのを承知で言ってみるのもありだったりするのか? いやいや、頭のおかしいやつだと思われてパーティー加入の件もなかったことにされかねないな。


 帰り道を歩きながら今後のことについて考えてみているのだが、これといっていいビジョンが浮かばない。

 とりあえずは、レミアのパーティーに入って金を稼ぎつつ、レベルを上げるって言うのでいいとは思うんだが……ずっとそうしてはいられないよな。魔王だって、悠長に待ってくれるはずもないし、俺がまったりレベル上げをしている時間があるかもどうかわからない。レミアとか町の雰囲気を見る感じだと、現時点で魔王の脅威が迫ってきているようなことはないだろうが、じいさんが直接俺を転生させて対処しようとしているような案件だからな。油断はできない。


「難しい顔してどうしたの? まだ何かわからないことでもあるの?」


「いや、ただ考え事をしてただけだ。あっ、いや、レミア一つだけ聞いてもいいか?」


「ええ、いいわよ。私に答えられることなら問題ないわ。っというか、わからないことがあったらどんどん聞いてきていいわよ」


「それじゃあ、遠慮なく。魔王って知ってるか?」


「はい? 魔王? それ、本気で言ってるの?」


 何かまずことを聞いてしまったのだろうか? レミアの雰囲気が明らかに変わってしまった。


「俺も魔王の存在自体は知ってるんだけどな。冒険者とかしてたら俺よりも魔王について詳しいんじゃないかと思ってだな。別に討伐しに行こうとかそんなことは考えてないぞ。うん、ほんとだからな」


「魔王討伐って。そんなの勇者でもない限り不可能よ。そもそも、今の魔王は人間には干渉してこないじゃない。討伐する何て話は出てないし、下手に刺激しないでおこうって話が主流よ。魔王なんてSランク冒険者ですら手に負えないって話だし、テンジじゃ話にならないわ。悪いことは言わないから討伐なんてやめておいたほうがいいわ」


「だから討伐とかする気はないって。魔王って言うからにはもっと危険な存在だと思ってたんだよ。まぁ、無害なら関わる理由もないよな」


 おい、じいさん聞いてた話と違うんだけどこれってどういうことだよ。

 魔王は討伐しなくちゃならないんじゃなかったのか? それとも、魔王が人間の脅威として立ちはだかる前の世界に俺を転生させてくれたのか? 確かに、俺もレベル上げとかはしなくちゃならないだろうし、時間は必要だけどさ。もしかすると、この無害なはずの魔王が何かのはずみで爆発して人間の領土に攻めてくるとかそう言うことか。それとも、新しい魔王が出てくるのか? どちらにせよ、俺としてはひたすらレベルを上げてその時を待つしかないよな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ