表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/57

まだまだ

「あそこ、いたわ」


「ああ、任せろ」


 何度目かのレミアの指示に従い、俺はスライムを見つけた。

 本当にレミアは優秀で、俺が見つけるよりも確実に早くスライムを見つけてしまう。レミアも冒険者としては駆け出しみたいなもんなのにどうしてここまでの差が出ちまうのかは謎だが、甘えられるところは甘えておかないともったいないよな。


 スライムに接近し、ひじで軽く小突く。


 バゴォォン!!


 それなりにでかい音がなり、スライムは爆散した。

 こんなに軽く攻撃してもこの威力である。もっと手加減したほうがいいのかなんてことも頭をよぎるが、これ以上軽くしてみたところで大した差もなさそうなんだよな。攻撃が当たった瞬間にどうしても神のエネルギーが炸裂してしまうからな。かといって、ひじ以外で攻撃するわけにもいかねぇし、これがおそらく俺の最低レベルの攻撃なんだろうな。幸い、スライムの後方の木までは被害は出ていないので環境にも優しい。


「これで6匹目ね。全部一撃で終わっちゃうから見つけたら一瞬ね。スライムは冒険者が初めて戦うモンスターだし、苦戦するモンスターのはずなのに……色々とおかしいわ」


「俺はただの新人じゃないんだから当然だろ。最初から高ランクで冒険者としてスタートできていたら俺も楽だったんだけどな」


「流石に調子乗りすぎよ。スライムには勝ててるけど、もっと強力なモンスターと戦ったらレベル1の状態で勝てるわけないんだから。攻撃を当てる前にテンジが死ぬわ。スライムとは何もかもが違うレベルなんだからね」


「そこは戦い方でカバーすればいいだろ。俺も真正面から勝負を挑もうなんて考えてないっての。不意打ちでも俺が先に攻撃できればそれで勝負ありだからな。しかも、その時点で俺のレベルは一気に上がるだろ? ということは、戦力的な差も一気になくなっちまうってことだ。俺はそこまで考えてるんだぞ? これの何処が調子に乗りすぎだって言うんだよ」


「だから、そんなうまく攻撃を当てられないって言う話よ。私でもテンジよりも気配に敏感なのよ。それを、さらに高位のモンスターになればテンジが接近することなんてバレバレよ。遠距離攻撃何て持ってないでしょ?」


「遠距離攻撃か……強いて言うならば、本気で攻撃を放てば前方すべてに衝撃波を飛ばすことくらいできるだろうな。レミアも見たろ? 俺の攻撃を受けた森がどうなったのか? それなら、もっと力をいれて攻撃すればモンスターを倒すくらいの衝撃波だって撃てるはずだろ」


 我ながら天才的な作戦だな。多少、周囲に被害は出ちまうかもしれないがそこはモンスターを倒して世界を救うって言うことと天秤に乗せれば必然的に正義になるだろう。だから俺が正しい。


「そんなことダメに決まってるでしょ。どうしたらそんな発想になるのよ。もしかしてテンジって結構やばい人なの?」


 ここでやばいやつ認定されちまったらさっきのパーティーに入れてもらうって言う話がすべて台無しになっちまう。そんなわけにはいかないだろ。俺はしっかりと常識を持った人間だというアピールをしておかないといけないな。


「今のは冗談だって。やろうと思えばそんなこともできちまうって言うだけの話だ。実際にやる気なんてまったくないし、必死に考えを絞りだした結果だ。あんまり気にしないでくれ。それよりも、早く残りのスライムも片づけちまおうぜ。俺も自分の力を制御でき出して楽しいんだよ」


「なんかちょっと腑に落ちないけど、まぁいいわ。一応そう言うことにしておいてあげる。それと、そっちにもスライムがいるわよ。また気が付いてなかったの?」


 嘘だろ? レミアが指さしたほうを見てみると、俺の背後に一匹のスライムが近づいてきていた。


「って、危ないって。もう少し近づかれてたら俺が背後から一撃食らうところだったじゃんか。もっと早く教えてくれよ」


「流石に気が付いてるかなって思ったのよ。そこまで近づかれてもモンスターの気配に気が付けないのはちょっと問題よ。今後も冒険者として活動していくんだから少しずつでもわかるようになっていかないといずれ大事になるわ。それに、まだ大丈夫な段階で教えてあげたわよね?」


「レミアって意外とスパルタなんだな。俺なんて今日冒険者になったばっかりの新人だぞ? それなのにあんまり色々求めてくるなよ。俺だって頑張ってるんだからな」


「へぇー、さっきは自分でただの新人じゃないとか言ってたのにね。本当はただの新人だったって認めるってことよね? あんまり見栄を張らないほうがいいわよ。確かに、単純な攻撃だけを考えれば新人レベルではないのは確かだけど、冒険者はそれだけじゃ生き残っていけないから。もっと頑張らないとね」


 完璧に揚げ足を取られてしまった。

 相当悔しいが、反論の余地が一切ない。これ以上ないほどに俺が馬鹿だった。それでも、新人冒険者の俺に対して結構大人げないと思うんだけどな。俺の力を一応認めてくれているから厳しくなってるのか? それだったらまだ我慢できるけど……でも、レミアは困っていた俺に声をかけてくれた天使だしな、見た目も。これも俺のことを心配してくれて言ってくれてるんだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ