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不可抗力だな

 クエストの受注は驚くほどにあっさり終わった。

 マジで特に言うことがない。レミアの慣れたって言うのもいまいちわからないくらいに普通だった。


「さぁて行きましょうか。私は基本的にはサポートに回るから、メインで戦うのはテンジに任せたわよ」


「おう。任せとけ。サポートすらいらなかったって言うのを見せてやるよ」


 ついに初クエストに向けて俺たちは出発した。

 思えばここまで色々と長かったな。この世界に来て、初めての楽しそうなことだ。金も稼げるし、マジでいいことづくめだな。




「森ってどっちだったけ?」


 意気揚々と冒険者ギルドを飛び出したはいいものの、肝心の森の場所が既に頭の中から消え去ってしまっていた。

 しょうがないことだとは思うが、俺は適当な冒険者について歩いてきただけだからな。道なんて覚える余裕はなかった。二人を見失った瞬間に面倒なことになっちまうんだからな。


「スライムを倒したんじゃなかったの? それくらい覚えていてもいいものだけどね」


「そう言うなよ。俺も初めて来た町で覚えきれなかっただけだって。もっと周囲に気を配るべきだったのはわかるけどさ。ここは大目に見てくれよ」


「こっちよ。ササ森は西の門から出るのが近いわ。今度はしっかり覚えておいてね」


「ああ、俺の記憶力を総動員して全力の全力で覚えてやるぜ。もう絶対に忘れたりしないからな」


「気合いの入り方がおかしいような気もするけど……その意気よ」


 俺はレミアについて行きながらもう今度この道で絶対に迷うことがないように、全力で記憶した。

 このレベルの道を忘れてしまっていたことに苛立ちを感じつつも、道を覚えることに重きは置いていなかったんだと自分の中で言い訳をする。これもメンタル管理の上では重要なことのはずだ。


「ほら、門が見えてきたわよ。あそこから出たら、すぐに森が見えるわ」


「流石に俺もここからなら覚えてるぞ。森を出てまっすぐこの町に向かってきたんだからな。見えてるものを見失うほど馬鹿じゃないっての」


「馬鹿なんて思ってないわよ。ただ念のため」


 ここからは俺の独壇場だ。

 レミアが後することと言えば、スライムを見つけておびき寄せる程度のこと。つまり、後の活躍の場はすべて俺のものだということだ。今の俺には無限の可能性が秘められている。どこまで俺がやれるのか自分でも貯めそうじゃないか。最初は威力を最小限に抑えて倒してみよう。徐々に調節できるか挑戦していくってのも楽しそうだ。さっきみたいに馬鹿みたいな威力でエルボーを放つわけにはいかないからな。レミアも巻き込んで大惨事だ。




「森に入るけど、ここから先はいつモンスターが襲ってくるかわからないから絶対に油断しないようにね。モンスターの接近については私のほうがわかると思うから都度言うわ」


「スライム以外は倒してもなんの意味もないんだろ? それだったら、スライム以外は無視して構わないよな?」


「戦闘にならない距離だったら接触しないようにしましょ。モンスターを倒せば倒すほどレベルは上がるけど、ここに生息しているモンスターを倒したところで貰える経験値なんて微々たるものだからね」


 レベルアップのためには数を狩る必要があるって言うことか。つまりは、できるならばクエストの目標ではないモンスターも狩りまくったほうがいいということだ。いくら経験値の効率は悪いとは言えども、まったくのゼロではない。それなら、狩るに越したことはないじゃないか。俺はこんなところで妥協するような人間じゃないんだ。拾えるものはすべて拾っていく精神だからな。


「いや、俺のレベルアップのためにモンスターはすべて狩ろう。見つけたら俺に教えてくれ」


「正気? スライム10匹倒すのにも相当体力を使うはずよ。狩るにしてもまずは、、目的のスライムを討伐してからにしたほうがいいんじゃない? 自分の力を正しく把握できていない初心者にある良くない行為よ」


「体力的にきついと感じたらやめるって。それまではやらせてくれ。今後のためにもレベルを上げておきたいんだ」


「はぁ、言っても聞かないようね。本当に無理そうだったらすぐにやめるから」


「悪いな」


 これで、俺は出くわすモンスターをすべて倒していくことが決定した。正直、エルボーを撃つだけだから体力的な問題なんて皆無だろう。走り回って攻撃をするとかならすぐにばててしまうんだろうけど。俺の場合は一撃必殺だからな。真正面からエルボーを叩き込むだけの簡単な戦闘だ。もはや、一方的な攻撃で戦闘といっていいのか怪しいかもしれないな。


「来たわ。右の茂みにモンスターよ。この感じはスライムだと思うわ」


「さっそくか、どれどれ……見えないけど」


「見えてから発見してたら遅いわよ。モンスターの気配を感じて先に把握するのが一流の冒険者何だから」


 レミアが一流の冒険者なのかはさておき、俺は指示された方向へゆっくりと距離を詰めていく。


 ガサガサッ。


 目の前から勢いよくスライムが飛び出してきた。


「うわっ」


 驚いて無意識のうちにスライムめがけて肘を叩き込んでしまった。


 ドガァァァン!!!


 あ、やばい。威力の調整ミスった。

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