表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/57

暇だな

「ところでこのスライムってどこに生息してるんだ? 俺がたまたま見つけたのは森の中だったけどさ、出くわしたのはそいつ一匹だったんだよな。探すのが手間じゃないか?」


「えーと……運が悪かったんじゃない? いや、この場合は運が良かったのかも。森ってそこのササ森でしょ? スライムなんて狩り飽きるほどいるわよ。もちろん、今回の目的地もそこ」


「そんな馬鹿なことあるのかよ。結構歩いたんだけどな」


 俺はどうやらモンスターと遭遇しにくい祝福を受けているらしい。もしくはバフだな。

 どちらにせよ、さっきまで俺がいた森に戻ってスライムを討伐することになるのか。ちょっとめんどくなってきたぞ。やっとの思いで抜けてきた森に逆戻り? マジかよ。でも、金もかかってるしなぁ……だるいとか言ってられないか。


「まずは、この列に並んでクエストを受注することろからよ。私の手慣れた対応を見てなさい」


「ただ、クエストを受けるだけだよな? そこに違いとか出てくるもんなのかよ」


「いいから、細かいことばっかり気にしてたらモテないわよ」


 レミアの一言は俺の心を大きくえぐった。これ以上ないほどのクリティカルヒットだ。

 その場に倒れこみそうなる体に喝を入れて何とか耐える。ここで、倒れこもうもんなら俺がモテないと公に認めるようなもんだ。断じてそんな事実は存在していない。俺だってひそかにモテていたはずだ。きっとそうなんだ。


「急に黙らないでよ。もしかして、モテないっての気にしてたの? それはなんかごめんね」


「うるせぇ。ただ考え事してただけだっての」


「つい言っちゃっただけなのよ。今後はきっとモテるからあんまり気にしないで。冒険者なんて強ければ強いほどモテるんだから。男の見せ所でしょ?」


 心を見透かされているようでものすごく癪なのだが、あんまり反論してもそれはそれで認めているようなもんだからな。ほどほどにしておかないと、ってか俺のほうがどんどん心にダメージを負って行ってしまう。

 それにしても、この受付の列とか言うの無駄に混みすぎだろ。二つも列があるってのに……こう言うところで時間をロスしちまうのはイライラがたまっちまうな。待つのは苦手なんだよ。


「暇だし、テンジのこと聞いてもいい?」


「え? ああ、別にいいぞ。とはいっても特に面白い話なんてできそうにもないけど」


「いいのよ、暇つぶしって言ったでしょ。うーん、まずはなんでテンジは冒険者になろうとしたの? 見たところ強そうにも見えないし、何か武術とか剣術をしていたようにも見えないのよね」


 確かに、俺の見た目だとまず間違いなく強いとは思われないだろうな。

 しかし、これが甘いんだよな。俺は神様からありったけのエネルギーを肘に宿してもらっているからな。この力があれば、簡単に冒険者として大成功しちまうんだろうな。そうしていけば、俺の力も強くなって、いずれは魔王を倒せるって言う寸法だ……こんな話するわけにはいかないな。


「金がなかったところに冒険者の話をしてる奴を見つけたんだよ。別にほかの仕事でも構わなかったんだが、がっぽり稼げるみたいな話を聞いちまってな。もうこれしかねぇってわけだ」


「あんまりいい動機じゃないわね。そういう人はすぐ死んじゃうんだから。さっきも言ったけど、冒険者って言うのは常に危険と隣り合わせなの。その対価として報酬が支払われてるわけ。本当にお金だけが目的なんだったら死なないうちに冒険者をやめたほうがいいわ」


「忠告ありがとう。でも、俺はこう見えて相当強いんだぞ。今回のスライム相手じゃ実力のすべてを見せることはできないかもしれないが、期待してろって。俺の力を見たら、冒険者はやめておいたほうがいいなんてセリフ絶対に出てこなくなるからさ」


 レミアも善意からこう言ってくれているのは伝わってくるんだが、俺には魔王を討伐するという使命があるからな。冒険者ってのは色々と都合がいいんだ。やめるわけにはいかない。

 すぐにランクアップだってしちまうんだろうな。俺がこの力を持っていて最低ランクなんてこの世界のパワーバランス壊れすぎだっての。


「それじゃあ期待してるわね。新人の冒険者で本当に強いなんて信じられないけど、見もしないで否定するのもダメよね」


「そう言うことだよ。しっかり見てろよ。あ、でも俺がいたらスライムが出てこないかもしれないな。その場合はスライムを集めるのは頼むかもしれないな」


「そんな役目を頼まれるなんて思いもしなかったわ。いいわ、それくらいしてあげる。10匹と言わず、30匹くらい連れてきちゃうかもね」


「それくらい誤差だ。まとめて吹き飛ばしてやるよ。俺の必殺エルボーにかかれば、大量のスライムだって一匹のスライムだって同じみたいなもんだ。いくらでもウェルカムだぜ」


 スライムなんていくら集まろうが、負ける気なんて一切しない。むしろ、歯ごたえが無さ過ぎて消火不良で終わるんじゃないかと不安なくらいだ。さぁて、そろそろ気合いを入れていくとしますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ