そうなのか?
レミアに引っ張られながら俺たちはクエストボードへと向かった。
「レミアも俺と同じEランク冒険者なんだよな? それなら、一緒に言ったところでしょうもないクエストにしかいけないんじゃないのか?」
「違うわよ。確かに私はEランク冒険者だけど、テンジはまだFランク冒険者よ。こう見えても私は一度ランクアップしてるんだから。どう? これで私のことがより凄く見えてきたんじゃない?」
「へぇー、そうなのか。駆け出しとか言ってたからバチバチの新人かと思ってたんだけどそうでもないんだな。それならそうと言っておいてくれよ。それで? そのランクアップをしたらどんな恩恵があるんだよ」
どうやら俺は今、ガチの最底辺らしい。これからどんどんランクアップしていくことは間違いないんだが、それでも一番下にいるって言うのは気持ち的にも良くないよな。さっさとランクアップして行きたい。
「簡単に言うと、より高難易度のクエストを受けられるようになるわ。テンジだけだとEランクのクエストを受けることはできないけど、私と一緒だったら受けられるのよね。今回は初めてのクエストだし、Fランクのクエストに行くわ」
「それはいらない気遣いだな。俺の強さだったら、Eランクのクエストだって楽勝だ。いいから、Eランクのクエストに行こうぜ。対して変わらないだろ」
「冒険者を甘く見てたら死ぬわよ。そうやって死んでいった人達がどれだけいるのかテンジはわかってないわ。冒険者は常に危険と隣り合わせの危険な仕事なの。用心なんてしすぎるに越したことはないわ」
レミアも心配性すぎるんだよな。俺のエルボーがあればモンスター何て一瞬だから何も気にする必要なんてないってのに。まぁ、レミアは俺の戦うところを見たことないし、そうなってしまうのもしょうがないか。初めてのクエストで無駄に目立つ必要もないし、無難に稼げるんだったらそっちでも大丈夫かな。
「わかった。レミアの言う通りにする。それで? Fランクのクエストで俺が今日という日を乗り越えるだけの金は手に入るのか?」
「もちろんよ。Fランクでもクエストの報酬は普通に働くよりもいいんだから。二人で言ったとしても必要な分の報酬が貰えるクエストをちゃんと選んであげるわ」
「よろしく頼む。俺も金がねぇとどうしようもないからな」
「すぐに選んであげるからテンジもクエストを見てていいわよ」
そういうと、レミアはクエストボードからクエストを見繕い始めた。
俺も適当に眺めてみるが、どれがいいクエストかなんてことはさっぱりわからない。そもそも、どのクエストが俺が受けられるレベルのクエストなのかすらよくわからないな。モンスターの名前を書いてくれてはいるんだが、情報が無駄に書かれていてちゃんと見ないといけないポイントがいまいち掴めない。
「これなんて良さそうだわ。テンジはさっきスライムは倒したことがあるって言ってたからちょうどいいわよね」
「おっと、見つかったのか? てか、スライムか?」
「そうよ。スライム10匹の討伐。普通よりも討伐数が多くなってあるから、その分報酬も上乗せされてるみたいね。お金が必要なテンジにピッタリじゃない」
「でも、俺が戦った感じだと、スライム何て一般人でも軽く倒せそうなレベルのモンスターだったぞ? それを、たかが10匹かったところで報酬なんて期待できるのかよ」
俺のエルボーでマジで一瞬だったからな。
あの程度のモンスターだったら何百匹来ようが俺の相手じゃない。一発のエルボーで全滅させちまうくらいだろうな。
「本当にスライムと戦ったの? スライムはしっかり手ごわいモンスターじゃない。あのぶにぶにした体で攻撃をはじいてなかなか倒せないじゃない。テンジはどうやって倒したのよ」
「どうやっても何もなんの小細工もないエルボー一発だな。消し飛んだぞ」
「え? 本気で言ってる? あんまりその冗談は面白くないわよ。スライムに物理攻撃なんて相性最悪にもほどがあるわよ。それこそ、相当な攻撃じゃないとダメージを与えられないわ」
そう言われてもエルボーで一発って言うのがまぎれもない真実だからな。信じてくれないんじゃどうしようもできないか? まぁ、実際に見てくれれば信じるしかなくなるんだろうけどな。
今度は威力を抑えないと万が一にもレミアを巻き込むわけにはいかないからな。人殺しなんてことになったら大惨事だ。とてつもない目立ち方をしてしまう。それもまったく望んでいない方向でだ。最悪過ぎるだろ。
「実際に見てから言ってほしいもんだな。俺がスライムを討伐するところをしっかり見てろよ」
「私がちゃんと見ていないと心配だもんね。もし危なそうだったら私がカバーしてあげるから安心していいわよ」
「必要ないだろうけどよろしく頼むよ。せっかく一緒についてきてもらうんだもんな。それなりに役に立ってもらわないと意味もだろ。レミアこそちゃんとしてくれよ」
とりあえず俺たちはスライムの討伐クエストの紙を手に、受付カウンターへと向かった。