登録完了
「すいません、冒険者登録したいんですけど……」
「あれ? 今日も命知らずな新人さんが冒険者になりに来てしまったんですね。私はとても残念です」
「そういうのいいから、早く手続しなさいよカミラ。ちょっと脅したくらいで冒険者をやめるような軟弱な奴は最初から冒険者ギルドに来たりしないわよ」
「何ですか、レミアさんも一緒なんでのですか? それならそうと言ってくださいよ。しかし怪しいですね。私やものすごくお二人の関係性が気になります。もしかして、レミアさんのボーイフレンドさんですか? レミアさんダメですよ。彼氏さんは大事にしないと。冒険者は危険な仕事なのですよ」
レミアに気が付くとビックリするくらい饒舌になった。
俺が一人だと思っていた時はレミアの言う通り脅すようなことを言ってきていただけだってのにな。
「違うわよ。私だってテンジとはさっきあったばかりなんだから。どうやったらそんな関係になるって言うのよ。レミアは早とちりが過ぎるわよ」
「本当ですか? 私に隠し事なんて無粋な真似はやめてくださいよ。レミアさんと私の間には書く仕事なんてなしですからね」
「だから違うって言ってるわよね? いい加減しつこいわ。それよりも早くテンジの冒険者登録をしてあげなさいよ」
本当にその通りだ。
俺としては女神のごときレミアとカップルだなんて恐れ多いんだが正直とてつもなく嬉しい。なんで俺とレミアはカップルじゃないんだ? もはやそんなことを逆に考えてしまう。
でも、今は俺も金が必要だからな。兎にも角にも金だ。金が無けりゃこの後の予定が全部グッバイだ。
「俺からも頼みます。冒険者登録をお願いしてもいいですか? 割と急いでるんです」
「テンジ、カミラ何かに敬語なんて使わなくて大丈夫よ。ちょっと偉そうな雰囲気出してるけど、ギルドじゃ一番の下っ端だから。後、カミラは私と同い年よ」
「やめてくださいよ。折角こんなに礼儀正しい方なのですから、そのままでいさせてくださいよ」
どっちなんだよ。カミラ的には今のまま敬語で接してほしいのか? でもこの喋り方喋りづらいしなぁ。
今更だが、カミラも偉い美人だな。金髪美少女の受付嬢ってだけでなんか最強だ。それに、清楚系って言うのも最高だな。どうなってんだよ、この世界の女の子のレベルは。異次元過ぎるだろ。
「そろそろ頼む。冒険者登録って言うのはすぐに終わるのか?」
「ああー!! ほら、レミアさんがいらないこと言うからですよ。はぁ……わかりました。それでは、登録に入りましょうか」
ものすごく残念そうな顔をしながらも業務のほうはこなしてくれるみたいだ。
何がそんなに残念なのかはわからないが、それは俺の気にすることじゃないだろうから別にどうでもいいか。
「よっこいしょっと、はい。こちらの水晶に手をかざしてもらってもいいですか?」
カミラが机の下から大きな水晶玉を取り出した。
これだけ見ると怪しい占い師みたいな感じだ。
「それだけでいいのか? こうか?」
俺はゆっくりと水晶玉に手をかざした。
すると、水晶玉は一瞬ピカッと光り、すぐにもとに戻ってしまった。
「これで終了です。冒険者カードを準備しますので少しだけお待ちください」
「マジで? こんな簡単に終わるのか? どういう原理なんだ?」
「考えてもわからないわよ。遠い過去の偉人が作ったていう話よ。詳しい原理は解明されていないわ」
なんじゃそりゃ? この世界ではそういう設定なのか?
しっかし便利なもんだな。他にもこんなアイテムもあるんだろうか? 俺にも何か分けてほしいな。
「できましたよ。こちらがテンジさんの冒険者カードです。どうですか? これでテンジさんも冒険者の一員ですよ。まだあまり実感が湧きませんかね」
「そりゃそうだって。やったことといったらその水晶に手をかざしただけなんだからな。これで冒険者になったぜってはしゃげってのは流石に無理があるっての」
「フフッ、私もそうだったわ。こんな簡単に冒険者になれていいの? って本気で思ったくらいだわ。本物の冒険者になるためにはクエストをクリアないとね。冒険者たるもの、モンスターを討伐してこそ一人前なんだから」
「一応、この町に来る前にスライムを一匹倒したぞ? あっ、それって報酬貰えないのか?」
完全に忘れてた。スライムも立派なモンスターのはずだ。それを討伐した俺に報酬があっても良くないだろうか? やっぱり、冒険者になってないから無効だって言われるのかな。
「申し訳ありませんが、冒険者カードを持っていない状況で討伐したモンスターの報酬を支払うことができないルールなのです。特例として強力なモンスターを討伐したりとありますが、スライムでは報酬を出すのは難しいですね」
「そうだよな。いいんだ、ちょっと言ってみただけだから」
「これでテンジも冒険者何だからさっそくクエストを受けましょう。ほら、こっちよ」
「お二人とも頑張ってくださいね」
応援してくれるカミラを背に、俺はレミアに引っ張られて行った。