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不幸の連鎖

「はぁー……」


 不意にため息がこぼれる。

 ここのところまったくといっていいほどいいことがない。俺の人生今が一番ついていないんじゃないかっていうくらいついていない気がするんだ。俺はこのまま不幸を背負って生きていかないといけないんじゃないか? そんなことまで考えてしまう。


 はじめは置き勉していた教科書がいつの間にかなくなっていたり、トイレに言っている間に俺の体操服が消えていたり、とにかく俺の持ち物が消えるという不幸が襲ってきたんだ。今までものをなくすなんてこととは無縁の人生だった俺も正直戸惑っちまった。

 いや、このくらいでやめておこう。これ以上思い出したところで俺の気持ちがへこむだけだ。


「もういいや、さっさと帰って日課のランニングに行くとするか」


 俺は勢いよく椅子から立ち上がり、教室を後にした。




「この負の連鎖も一ついいことが起きればきっと断ち切れるんだ。今の俺にはどんな些細なこと一つでもいい、とにかく幸運が必要なんだよ。どっかに幸運がおちてないか? おちてるよなぁ?」


 普段の俺はここまで独り言がひどいタイプでもないのだが、兎にも角にも状況が状況だ。俺の精神状態は大荒れなんだ。こんなことでもして無けりゃ自分を保てないレベルまでやってきていると断言できる。


「こういう時は体を動かしていい汗かくに限るぜ。よっしゃ!! 今日もがっつり走って脂肪を燃やし尽くすぜ」


 既に早歩きだった俺だが、さらにスピードを上げ強歩と言って差支えのない速度で歩みを進めた。惜しいな、この技は今年の強歩大会まで温存しておくつもりだったんだがな。まぁ、俺の技を見たところでそのままトレースできるわけでもないし、心配無用だろう。




「ただいまー」


 ドアをガチャっと開け、俺は我が家へと帰還した。

 この場所だけが俺の心を落ち着かせてくれる唯一の場所なんだ。特に今なんて不幸なことが起きないのは我が家だけだ。俺にとってのパワースポットと言ったところだろうな。


「お帰りなさい。今日は何事もなかった?」


「ああ母さん。いつも通りの一日だったよ。まだ俺に幸運の女神様は微笑んでくれないらしい」


「そのくらいのことでめげちゃダメよ。男の子なら、全員コテンパンにしてやるくらいのつもりでいなさい」


「なんの話してんの? 俺の不幸と関係ないよな?」


「……いいのよ。どうしてもつらくなったら言うのよ。お母さんが百倍返しして上がるから」


「ありがとう。少しは気が楽になったよ。母さんにできることはないと思うし、俺は不幸何かに負けねぇから」


 最近母さんが俺の心配をしてくるのはなぜだろうか? 

 確かに俺が不幸に見舞われていることは話したけど、ここまで心配することか? そこらへんがよくわからないんだよな。まぁいっか。とりあえず着替えてランニングに行こっと。




 ガチャ。


「よっしゃ、今日もいい天気だ。こんな天気は外を走り回るに限るぜ。俺はどこまでも走ってやるからなぁ!!」


 とは言いつつも俺は玄関からよーいドンというタイプではないのだ。決まった場所を走る、これが自分に課しているルールだからな。まずは、ランニングコースの公園に移動だ。もう俺の足は走り出したくて震えてやがるぜ。ちょっと待ってろよ。







「あれ? ここは何処だ?」


 俺が目を覚ますと、そこは見たこともない真っ白い空間だった。

 どこまでも広がっているんじゃないだろうかと感じるほどに果てが見えない。もの凄い違和感だ。


「ようやく起きたようじゃの。まったく呑気なもんじゃわい」


 ちょうど今むいている方向とは真逆から今にも死にそうなじいさんの声がした。


「起きたんじゃったら早くこっちを向かんかい。わしとて暇ではないんじゃぞ」


「あんまり興奮したらショック死するぞじいさん。ただでさえ、今にも死にそうなんだから。自分の体はいたわった方がいいぞ」


「おぬし、それが命を救ってやった恩人に開口一番いうセリフか? 性根が腐っておるぞ」


「え? ちょっと待ってくれ。状況が飲み込めてないんだが、説明を要求する」


 その場の雰囲気で適当なことを言っていたが、どうにも限界だったようだな。よく頑張ったぞ俺の頭。後はゆっくり休んでくれ。この爺さんがすべてを説明してくれるはずだ。


「おぬしは死んだんじゃよ。トラックに轢かれて即死じゃったの。少々グロテスクじゃったからあまり思い出させるんじゃない」


「理不尽だ!! 俺はそこまで不幸だったって言うのか? おい、待てよ。俺が死んでるって言うんだったらじいさんは何者だよ。それに命の恩人か言っておいて俺のこと助けれてないじゃんかよ」


「落ち着くんじゃ。わしはおぬしの世界を管理しておった神じゃ。とはいっても、管理しておるのは100を超えるほど膨大な世界の数々じゃがな。どうじゃ? 敬ってもいいんじゃぞ? それと、厳密にはおぬしは死んでおらんのじゃよ。ここは生と死の狭間の世界じゃ」


 考えるのはやめよう、すべてを感じるんだ。俺にならそれができる!!



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