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95話 β  前編

「仕方ないー、誰かに聞くかー」

β記録ファイル、それが、テオが発見したファイルの名前だった。


「…言葉をそのまま受け取るなら、ここにβの秘密が書かれている…」


既にアイラに自分の事を通報され、長い時間はここにいられない。


せめてβの情報だけでも持ち帰ってやると、テオは意気込んだ。


だが一つ、このファイルにテオは疑問を抱いた。


このファイルのメタデータ…『coon-※※※0-0※-※0※』


これは確か10年前に凍結されたサインの新型兵器研究の進捗を記録する際に使われていたコードのはず…


何故そんなものがβの記録ファイルとして利用されているのかが気になったが、それもこれを開けば分かることだと、深く考える事はなかった。


テオはpcを操作してセキュリティーを無理矢理突破し、遂にβの謎を解き明かそうと画面を光らせた。




『 『β記録ファイルcoon-※※※※-※※-001』


サイン国首長、レンス首相から命令が下った。


その内容は、フレミング帝国に生まれ、その日6歳の誕生日を迎えるテオという存在に対抗できる兵器を作れといったものだった。


どうやらその戦士はバリアというこれまで前例のほとんどない(故に資料が少ない)スキルを持っており、これが将来戦士となった場合、間違いなくサインにとって危機的存在になるとの事。


それを迎え打つための武器を開発しろという命令だ。


我々は判明しているバリアの効果*1をしっかりと確認した上で、武器研究、及び製作*2に取り掛かった。


*1:判明しているバリアの効果については、『β記録ファイル-coon-※※※※-※※-002』を参照



*2:この計画はβ計画と名付けられた





『β記録ファイルcoon-※※※※-※※-003』


武器製作は難航した。


5年を費やして尚バリアの効果を突破できる武器は一向に開発できず、また*1にある通り、バリアの突破方法自体も依然不明のままでいた。


この結果から、我々はテオのバリアを突破する武器の開発は不可能と判断し、その旨を総理に伝えた。


総理はこの報告を受け、β計画の凍結を決定。


後にこの計画はサインが極秘裏に進めていた、既に凍結された兵器開発計画として他国に流出された。





『β記録ファイル-coon-※※※※-※※-004』


総理は兵器開発を諦められなかったのか、すぐに新たな計画を命令された。


その内容は、テオのバリアを突破できる戦士を作れというものだった。


この発言は、恐らく失敗に終わったβ計画の唯一の功績を鑑みたものからきているのだろう。


それは、確かにテオのバリアを突破する武器を開発する事は不可能であるが、その武器の理想値と同等の力を持つ亜人であれば、テオの撃破は可能であるという事。


しかし当然の事ながら、そんな戦士はサイン国内には見つからず、その案も断念された。


しかし、その上でこの命令をされたという事は、「無いなら作れ」という事なのだろうと理解した。


我々はすぐに、凍結されたβ計画の資料を掬い出し、新たな観点から、これら未完成の武器の研究を始める事にした。


また、この新たな計画を、β計画から地続きで進行する事にした。(記録ファイルも同様のものを使用する)*3


*3:ファイル名を『ヒト種転用型対テオ兵器開発計画(仮)記録ファイル』に変更





『β記録ファイル-coon-※※※※-※※-005』


我々は未完成の武器の運用法として、この武器の全てを人間に移植し、アビリティとして応用する方法を考えた。


成功例はないが、技術的に不可能でない事は証明されている*4。


この方向ならば理論上、テオに対抗する戦士を作り出す事ができる。


我々はすぐに技術の完成に取り掛かった。


先ず、武器の全てを理論値には程遠いものの、可能な限りに出力を上げた。


幸いにもこれは早期に完了し、これによりヒト種転用型対テオ兵器(以降、対テオ兵器)の武器となるアビリティが完成された。


次にこれらの武器を人体にアビリティとして移植しても肉体が保たれるよう、人工的な外骨格が製作された。


こちらも1年半で完成*5し、後はこれらを人体に移植する技術が確率させる事を残すのみとなった。


*4:詳細は『レーキング教授の論文を纏めたファイル』を参照


*5:母体の安全性を考慮し、当初の予定の3.56倍巨大なサイズとなった。





『β記録ファイル-coon-※※※※-※※-006』


完成した兵器をアビリティとして人体に転用する技術の開発は、当初の想定以上に難航した。


その為、我々は確実且つ安全性を考慮し、対テオ兵器の外骨格のみ、アビリティではなくスキルとして人体に移植する事に変更した。


その結果、3年間成果のなかった計画は急速に進捗し、6ヶ月後に遂に対テオ兵器の外骨格及び各種武器を人体に転用する技術が確立された。


また、この際に外骨格は[opicla]*6と名付けられた。


*6:後にナスカン王国のアイラ氏により[robot]と改名された





『β記録ファイル-coon-※※※※-※※-007』


次に計画はopiclaの媒体となる人間の確保に移行した。


しかし、opiclaは一度媒体になると元の体に戻る事はできず、また許諾を得て国家規模で被験者を募ると他国に情報が流出する危険性が高まるためそれもできなかった。


その為、我々は秘密裏に、媒体の確保を始める事にした。


計画を円滑に進めるため、媒体となる人物は血縁者、そして友人に当たる人物も可能な限り存在しない人物が望まれた。


即ち環境的に孤独な人物が望まれるという事、その為、すぐに我々はその製作に取り掛かった。


まず、身寄りのない子どもが集められている保育所を、政府と協力して秘密裏に炎上させた。


世間的には給食の調理中に起こった事故として片付けられ、生き残ったのは16歳の少女たった一人だった。


我々はすぐにこの少女も表向きは死亡扱いとさせた上で、研究室に持ち帰った。


ついに、opiclaの媒体が手に入ったのだ。

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