85話 威力偵察
そう言ってアジエルは去っていった。
テオとβの戦闘が始まったのと同じ頃、マイロを含んだ、3人の戦士で構成された小規模の部隊が、ゆっくりとニアレンド森林へ進んでいた。
部隊はマイロを中心とし、左には全身を鎖で縛ったような柄をした服を着用している男性の戦士[カル]を、
右には、黒と白のウィンプルと、裾の長い黒いロングスカートを着用した女性の戦士、[シスタ]がいる。
どちらもフレミング帝国の中でも指折りの戦士であり、戦力としては申し分ないといえるものだ。
今のところ、この道中で敵兵らしき気配は感じられていない。
とはいえ既に敵国の領域内には侵入している、何が起こるかわからない。
そんな道中、シスタがマイロにある重要な話をした。
「マイロさん、よく聞いてください、私のスキルは、[伝書]です」
シスタは左手に、テピアという小鳥のモンスターのような姿をした魔力の塊を作り出してマイロに見せ、話を続けた。
「このテピアに、私が伝えたい情報と、それを送りたい相手を念じれば、テピアは自動的にその相手に情報を伝えようと飛び立ってくれます、例え私が死のうとも…ですから、もし不測の事態があった際には、私にその情報を伝えて下さい、これで万が一全滅しても、情報は伝えられます」
「…なるほどな、了解した」
マイロ達はそのまま、ニアレンドへと足を進めて行った。
2時間をかけて、マイロ達はニアランド森林に到着した。
ここまでも、特に敵兵の姿を見る事はなかった。
確かに、意図して敵兵と接触しないようなルートを進んではいたが、それでもこれは妙だった。
当然3人は罠を疑ったが、どうやらそういうわけでもなさそうなのである。
その事が頭に引っかかりながらも、3人は森林へとゆっくり侵入していった。
3人は敵の奇襲を警戒しながら、ゆっくりと周囲を確認する。
やはり敵兵が襲ってくる気配は感じられない、だが、ここでは明確にあるものが感じられた。
「魔力だな、それもかなり多い」
「そうですね」
この森に入った途端、もの凄い数の魔力が感じれた。
その魔力に、自分たちが円になって囲まれているように感じられる。
「これ、囲まれてるんじゃないか?」
「わからない、けど何かがこの近くにいるのは間違いないだろうな」
やはり当初推測していた通り、この森は相当厳重な警戒がされているのだろう。
だがこの魔力が何処から感じているのかが分からないまま、マイロ達は足を進める。
「……………」
その時、突然後ろに4つ聞こえていた足音が半分消えた。
「……………」
残りの2つはシスタの左右の足から鳴る音…なら、聞こえなくなった残りの半分は、
「カル!!!!!」
マイロ達はすぐにカイロの方を振り向いた。
だが、もう遅すぎた。
カルの体が、何もないところで突然浮き上がり始め、それにカル本人が一番困惑しているようだった。
「な、なんだ!?なんだよこれ!!!???」
カルの体はどんどん浮かび上がっていく、空中でもがくように全身を動かしているカルを無視して、どんどん空高く浮かんでいった。
「なんだ!?何が起きてるんだ!?」
「わかりません!」
マイロ達は何が起きているのかが全く分からなかった、強いて言えば、間違いなく誰かから攻撃されているという事だけ。
けど一体誰が、どこから攻撃してきているのかも分からなかった。
「くそ、クソ、なんだ!クソ!!!」
バコン
それは一瞬だった。
突然、本当に突然、カルの身体が、空中で、破裂した。
地面にカルの肉片と血が滝のように流れ落ちてくる。
「「…………………」」
サコン
呆然と立ち尽くしている時間など無かった、今度は、シスターの左腕が、突然軽々と吹き飛んだ。
「っ、、、、あぁ……アアアアアアアアアアア」
「シスタさん!!!」
どこだ!?どこから攻撃してきている…
マイロが限界まで魔力を集中させて次の攻撃に備える中、背中の方から声が聞こえてきた。
「へぇ〜〜、ちょっとは楽しめそうなのもいるじゃん!」
「!?」
振り返って声の方をみると、そこに黒の巨大な帽子に黒いワンピースを身につけた、黒く巨大な箒を持った少女がいた。
「アンタに不意打ちは出来なかった、じゃあ、いたぶるしかない訳じゃん?」
「…………」
マイロは青ざめた顔のまま、両手に魔力を握り込めた。
次回、ウイッチとの戦い…
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