83話 再戦
「あ、おい!」
アマリウドが思わず止めようと前に出た。
テオを含めた数人の部隊が、間もなく戦場となる野原を真っ直ぐ駆けながら進行していた。
その先に、コンベア軍需工場目掛けて進軍してきている、β達を迎え打つためである。
テオは走っている間、ずっとβの事が脳裏に過っていた。
倒したい、いや倒す。
自分でも遠に驚いている感情を抱えながら、テオ達はβ達と対峙した。
「………」
相変わらず、目では見切れないほど巨大な体だ、何故だか、以前よりも強く恐怖を感じている気がする。
だがそれでいい、戦いにおいて最も重要な感情は恐怖心だ。
恐怖心が強すぎると敵に怯えまともな戦闘ができなくなるが、これがあるからこそ、死にたくないという感情が生まれ、「逃げる」という最終手段を常に確保する事ができる。
だからこそ、冷静な理性を保ったまま、常に変化する戦局に対応する事ができるんだ。
テオと同行している戦士達も、β達へ端末から武器を取り出し、構えた。
β以外の敵の戦士も、見たところかなりの手練れのようだ。
だがそれはこちらも同じ事。
それに戦力もこちらが2人分多い。
敵の戦士はβを含め5人、大したこちらは7人だ。
作戦は既に伝えられている、β以外の4人の戦士をテオを除く6人がかりで抑える。
そしてテオとβの一対一に持ち込み、あわよくばそれで…βを倒す。
「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
βがその巨大でテオを踏み潰そうと攻撃してきた。
バリアでそれが阻まれたと同時に、双方の戦士達が一斉に相手の方へ攻め入った。
βの反撃として3つのバリアの破片を投げ飛ばした。
だがβは両手を盾に変化させ、その破片を防いだ。
「なに!?」
思わず声に出して驚いてしまった。
その盾は破片を受けても少し切り込みが入っただけでほとんど無傷だったのだ。
βはやはり厄介な相手であると確信する。
すぐに破片を戻して、バリアを一箇所に集中させた。
極太のバリアの針が作り出され、それでβの左肩を刺し貫いた。
だがβは怯まず、それどころか右腕を螺旋の形をした黒い銃に変化させ、それでテオを撃った。
だが当然、バリアにその攻撃を阻まれる、結果として、βだけが、左肩にダメージを負ってしまった。
よし、ひとまず最初は順調だ。
「お前の動きは幾度も研究を重ねた、既に対策はできている」
テオがそう言った直後、βは挑発に敢えて踊らされるように、両肩を翼のようなジェット噴射口に変化させ空高く飛び上がった。
その後、スコープを取り出して地上いいるテオの位置を確認すると、今度は両手をミサイルに変化させ、戦場目掛けてこれを発射した。
「!!!」
ミサイルが雨のように戦場へと降り注がれるその光景は美しさすらも感じた。
このままでは戦闘中のフレミング軍の戦士達にもミサイルが着弾してしまう…
「…それくらい、想定内だ!」
テオはバリアの破片を仲間の戦士を守れる位置に放った。
そして、βがミサイルを発射したと同時に、それと同じくらいの数のバリアの破片を、天空へと投げ飛ばした。
無数のミサイルの弾とバリアの破片が、空中で激しくぶつかり合っている。
だがミサイルがバリアを破壊できる事はなく、全ての弾は破片に受け止められて消滅した。
「まだ…俺にバリアは残ってるぞ」
そう言った瞬間、テオは周囲に残ったバリアを全て使って2つの巨大な、三日月型のカッターを作って投げ飛ばし、βの両腕を切り落とした。
「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
両腕とも、全く同じ位置に地面に叩き落とされた。
「………!!!」
βは強く静かに、テオの顔を睨む。
「β、俺は前の戦いから、ずっとお前の事を考え続けた、全てはお前を倒す為に…今度こそ、お前を殺すために」
一つお教えしましょう、この調子が続けばテオが勝ちます。
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