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82話 統一覚醒

アリエルはそう言って、この場を出ようとした。

あの平原での戦いから唯一生還できたテオは、一度近くの町に戻り、更に魔力を増すための鍛錬を始めていた。


ちなみに、あの戦場において、アイラがビックバン・ボムを使う前に封印されていた者は一応生き延びてはいたが、その封印を解除する事は不可能と判断された為、同じく死亡扱いとなった。


テオは胡座を開いた姿勢で、目をつむり、坐禅を組んでいる。


これは統一覚醒と呼ばれる修行方であり、目を閉じて精神を集中させる事で、体内で眠っている魔力を呼び覚まし、魔力量を文字通り底上げしようという修行だ。


目を瞑ると、自分の体内が弄られ、更なる魔力を見つけ出そうと深い海に潜っていったような感覚になっていく。


その海の更に深いところへ潜っていって、まだテオも見えていない新しい魔力を見つけようと更に深く潜っていく。


その間、テオはずっと、あの平原での事が何度も頭を交差していた。


ただ敵の人形のように戦うβ、こちらの部隊を一瞬の内に葬り去った少女…未だ能力がわからないアレス…


少女については、調査の結果、ノアが死んだ直後にナスカン王国と個人的軍事契約を結んだアイラという人間のようだが…


国と、それもあのナスカン王国と個人的な契約ってどういう意味だ?


いや、確かにあれだけの芸当ができる彼女なら不思議ではないのだが…なんだろう、


規模感が大きすぎて「逆にその程度で契約ができるものなのか」と錯覚してしまっている。


だが実際はその逆だ、けどそう思わせるほどに彼女の力は圧倒的で、この世に対して異質ともいうべき程のものだった。


間違いなく、今テオが戦っても勝ち目はないだろう。


フレミングとグリスの全戦力を彼女1人にぶつければ、何とかかならない事もないかもしれないが、そうするしかなくなった時というのは、負けを確信した時だ。


テオはただ強く想った、もっと強くならなねばと。


「っはっ、」


駄目だ、そんな事を頭で考えていては統一覚醒なんて成功するわけがない。


これは本当に極限まで集中しないと成功しない方法だ。


必要な動作は、ただ目を閉じて集中するだけだから、体力を使う事はない。


戦争中で余計な魔力の消耗を抑えないといけない今の状況では最も効率の良い修行法なのは間違いない。


だがその代わりとでもいうのか、この修行は成功率がわかりやすいほどに低い。


覚醒とは聞こえがいいが、要は潜在的に眠っている魔力を無理矢理呼び起こす行為…それをするためにどれだけの集中力が問われるか…


そうだな、だからこそ余計な事を考えてちゃいけない。


テオは改めてそう思い、もう一度目を閉じて意識を集中させた。


再び、深い心の海を潜っていく。


その道中にある鉄パイプの障害をかわし、今行ける一番深いところまで潜り着いた。


そこで地面に対して根を張るように潜伏していた(いかり)に手を伸ばした。


テオは全力で引き抜こうとするが、中々上手く取り出せない。


それでも諦めず、テオは碇へ手を伸ばし続けた。


やがて、地面から碇がほんの僅かに外れ、それを見逃さずテオは碇を思いっきり引き抜いた。


碇が引き抜かれた瞬間、碇のあった場所には小さな穴ができた。


そして、周りを漂っていた海の水は、全てその穴に引き寄せられるように渦を巻き始めた。


それはテオも例外でなく、一つの小さな穴に、身体がどんどん吸い寄せられていく。


だけどその時、穴の奥で何か光るものが見えた。


それは小さいようでも、大きいようでもある。


だがそんなのを考えている間もなく、穴はテオをどんどん引き寄せていった。


テオは考えている余裕もなく、ただ一心不乱にその光を手に取った。



「!!!」


テオは勢いよく目を開いた。


それと同時に、うっすらと感じていた、魔力が更に増えたと、


強くなったという事が、言葉ではなく感覚でわかった。


「テオさん!至急司令札にお集まりください!」


その時突然、テオを含めた何人かの戦士がフレミング軍の司令官に招集された。


そこで、ある情報と命令が伝えられる。


それによると、コンベア工場にβを含めた数人の戦士がゆっくりと進軍していっていてるようだ。


それを阻止せよとの命令が下された。


コンベアは我が国有数の兵器生産率を持つ工場、確かに進行は阻止しなければならない。


だがこの時テオは、それ以上にβと再び戦える事に感謝していた。


βを倒したい、強くなったであろうこの手で、


戦争に勝利するという多少の執着こそあれど、特定の戦士1人を倒そうと執着した事はなかったから。


だからこそ、テオは感謝した、必ず…今度こそβを倒す。


テオを中心とした数人の戦士の部隊が、コンベア工場から出兵した。


今テオの頭には、βへの苛立ちと勝利への渇望に包まれていた。

次回、テオvsβ再び


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