81話 次なる作戦
「何度も言わせるな〜、言葉の通りだ〜、じゃ、行ってくる」
アレスの瞳が開かぬ中、フレミングは、自国とナスカン、ロムレスを含めた主要戦士達へ次なる作戦を伝えていた。
その中にはアイラは当然として、ミアやマイロ、エルナも参加している。
ここはフレミングのとある軍事施設の最奥にある司令室である。
明かりは最低限しかないため全体的に黒く、正面のモニターに映る緑色の電子マーカーが、妙に怪しく光っている。
「連合軍のみなさん、まずはあの平原での戦い、ご苦労様です。皆様のお陰で、あの平原を我が国が奪取する事に成功いたしました」
モニターの画面が切り替わり、あの戦場の今の状況を映した。
「ご覧の通り、占領がほぼ完了した現在は、平原に新たな拠点を作るべく、作業中です」
アイラやエルナは、あの平原での戦いを思い出していた。
「そして、ここに新たな拠点が完全すれば、知っての通り、フレミング帝国首都のレンドンの近くにある森林への進行が可能になります。首都付近にある森林を占拠できれば、いうならば敵の心臓のすぐ近くに兵器を開発し、いつでもそれを心臓に撃ち込める状態を作る事ができるという事、あそこを占領できれば、我々の勝利はほぼ確実となるでしょう」
だから今からそこを攻めようというわけだ。
「そして現在、あの平原での拠点整備が終わりつつあります、ここが完成でき次第、すぐにでもあの森を攻めたいと考えているのですが、それは敵も考えられる事でしょう」
モニターに、アイラ、β等の最高戦力といえる戦士のデータと、敵軍の注意するべき戦士の可能な限りのデータが表示された。
そこにはテオと、黒の巨大な帽子に同じく黒いワンピースで身を固めた、[ウイッチ]という戦士を先頭に、他にも何人かの戦士が表示されている。
「故にあの森には、敵も強力な戦士を警備として配置していると考えられます、それにこの森は、言い返せば敵の根城のど真ん中…すぐに敵の応援が駆けつけられる地点に位置している為、その前に敵部隊を処理する短期決戦となる事が想定されます」
司令官がそう言うと、モニターに3人の戦士が表示された。
その中に、マイロもいる。
「そこで、本格的に攻め入る前に、敵がどの程度あの森に戦力を投入しているのか、それを偵察する小隊を作成し、そこに向かわせようと考えています、こちらがそのメンバーです」
自分がそんな大事な作戦のメンバーに選ばれたのかと、マイロは改めて身を引き締めた。
他の2人も同じような心境のようだ。
「しかし、これだと一つ問題が、」
モニターの画像がテオに切り替わる。
「正直な所、今の我が軍ではテオに対する確実な有効打は存在していません。このままですと、偵察隊に対しテオが応援として現れた場合、かなりの損害を被る可能性があります。そこで、それと同時に陽動作戦を展開する事にしました」
今度はある工場にモニターが映り変わった。
「これはコンベア軍需工場…フレミング帝国において兵器生産率の半数近くを締める工場、ここを揺動として攻め込めば、仮に作戦の意図がバレたとしても、簡単に捨てる事はないでしょう」
そこにテオを引き寄せようという事か…
「そうして陽動作戦を行っていく裏で、森を偵察し、次の将来的な突入までの情報を得ることが本作戦です、何か質問は?」
その時、ミアがそっと手をあげた。
「ちょっと待つの、その作戦だとテオが例の森にいない事が前提になってるの、もしその場合、最重要ポイントである森を捨ててまでテオを工場まで動かすだけの原動力はあるの?」
「はい、その点は問題ありません、工場への揺動には、βに乗り込んでもらう事になっています」
だがこれに対し、マウロが「1人でですか?」と反論した。
「いえ、正確には、βを含めた数名の戦士の部隊に乗り込んでもらいます、フレミングにとって、βはまだ未知の存在…そんな存在があの工場に向かえば、敵もテオを動かす可能性が高いと、我々はみています」
「なるほど、それなら納得なの」
ミアも納得し、手を下げた。
「そしてその間に、我々がその森を偵察すると」
マイロが改めて確認する。
「はい、ただこの作戦はあくまでも敵の森への守備を確認する事が目的です、作戦中の戦闘はなるべく避け、生きて情報を持ち帰る事を最優先として下さい」
「了解」
マイロが頷く。
指揮官がこの場にいる戦士達へ、士気を上げるため言葉を伝えた。
「この作戦が成功し、あの森を占領できれば、我々の勝利は、ほぼ確実となる。最後まで戦士となったその命を、勝利の為に捧げて欲しい…では、解散」
「「「了解」」」
指令官の号令に、全員が敬礼しながらそう発した。
次回より、揺動と威力偵察が開始される0
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