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73話 ナスカン王国参戦

「まぁ、奴の功績自体は認めているからな」



※軽度の性描写を含みます、苦手な方はご注意下さい。

ナスカン王国の戦士達が、サイン共和国に到着した。


全員が現地の兵士達に挨拶をしている中、アイラは国王と個人契約をした戦士として、1人サインの元帥に挨拶をしに行っていた。


「君が…アイラか?」


「はい、私がナスカン王国国王、プライム国王と個人的軍事契約をした戦士、アイラで御座います。何卒、よろしくお願い致しします」


アイラは一度大きくお辞儀をした。


「あぁ…こちらこそよろしく頼む」


2人は対等な握手を済ませた後、アイラはアレスやエルナ等、多くのナスカン王国の戦士達が作戦開始まで待機している軍幕へ向かった。


今回この軍幕は、切り立った崖の上に張られていて、何人かの戦士が遠くに見える戦場を双眼鏡で眺めている。


アイラがそこにいるナスカンの戦士達に「ヤッホー、今来たよーー」と陽気に話しかけた。


「あ!アイラさん、この方達がサイン共和国の戦士の方々です」


1人の戦士がそれに1番早く反応し、颯爽とサインの戦士を紹介した。


「あ、アイラさんですね。本日はよろしくお願いします」


この部隊の隊長がアイラに会釈をし、部下の軍人達もそれに続けてお辞儀をした。


「いえ、こちらこそよろしくお願いします」


アイラもそれを返したが、その中で1人だけ、挨拶をせずその様子を黙り込んでただ見ている少女がいた事に、アイラは気がついた。


(誰かしら?あの娘、可愛い…)


誰かと思ってサインの人たちに聞いてみると、驚きの返答が帰ってきた。


どうやらあの娘こそが、サイン共和国の切り札であり、本作戦の要でもあるβであるとの事だった。


それを知ったアイラは、詰め寄るようにβへ近づいていった。


そりゃ契約相手国の切り札様には挨拶しておかなくちゃよね、それに可愛い女子(おなご)には興奮すんのがオタクの(さが)だよなぁ!?


「あの〜貴方がβさんですねー?」


背を低くし、縮こまったように両手をもじもじさせながら、βに話しかけた。


それに対しβは変わらず無表情で「そうだけど」と小さく答えた。


「あの、私…」


アイラが自己紹介する前に、「知ってる、アイラさんでしょ?ナスカンと個人契約した…」と捨てるように言ってきた。


「あ、知ってたのね、そう…です!よろしくお願いします」


アイラが満面の笑みで頭を掻きむしりながらそう言っていると、βがそっと手を差し伸べてきた。


「こちらこそ、よろしく」


「あ、はい!よろしくお願いします〜!」


アイラとβが握手を交わした、だがその時のアイラの手は、浮かれているのか少しホカホカしていた。


「でも、勘違いしてそうだから言っておくけど、今回の作戦の要は、ボクじゃない」


「いえいえ!この作戦はあなたがいないと成立しませんよ!」


アイラは心の中でこう叫ぶ…「ボクっ娘キチャーーーーーー」と。


「それは貴方も同じ事、それに貴方はボクより遥かに強いでしょ?縮こまる事なんてない」


「あ!バレてました!?でもこの作戦の要はやっぱりβさんですよぉ〜〜〜」


改めてβを持ち上げ直すアイラ。


この会話を客観的に見て、ここまで三下ムーブなアイラも珍しいなとアレスは素直に思った。


「と・こ・ろ・で・βさぁ〜ん」


なんだ?アイラの態度が急に粘り気の強そうな感じに変わった。


「なに?」


「いやあの〜、貴方かわいいですね…1つお願いがあるんですけど…」


「なんなの?」


「あの…私だけに見えるようにスカートめくって…パンツ見せてもらえないっすか…?」


「ぶはっ」


アレスは今のアイラの発言が偶々耳に入って、思わず唾を吹き出してしまった。


そしてアイラを止めるためズカズカと近づいていった。


「止めろなに考えてんだ!失礼だろ!」


「え〜だって〜仕方ないじゃん?」


なにがだよ


「でもアレス君だって見たいでしょ?分かるはず」


「いやまぁそりゃぁ…」


だがこの後、アレスの耳に衝撃的な言葉が入ってきた。


βが真顔で「見たいの?なら見せるけど」とアイラに言ったのだ。


流石に「は!?え!?ん!?」と今度は声に出して驚くアレス、


「いや待っt…ね?」詰め寄るようにβを心配する。


だがそんなアレスに、βは冷たく「誰にも見えないように…みたいだから、貴方はあっち向いてて」と言ってアレスの手首に触れ、そのまま左向きに薙ぎ払った。


その勢いでアレス全体ごと左に薙ぎ払われ、逆方向に向きを変えられた。


しかもどういうわけか、しばらく身体が硬直して動けなくなった。


すごい力と技量だ…あの娘、スキルなしでもこれほどの能力を…


などと考えていられる余裕はすぐに消え失せた。


しばらく間が置かれた後、後ろから「わぁ↑↑↑、ありがとう!!!!!」というアイラの元気な声が聞こえてきたからだ。


くそ…なんなんだこの状況、俺もみてぇよ。



アレス達がこんなふざけた会話をしていたのと丁度同じ頃、フレミングからの応援として、グリスやフレミングの戦士を乗せた輸送車が3台、この戦場に近づいてきていた。


その中の一つに、あのテオを乗せた輸送車もあった。


輸送車の中で、テオと一番仲の良い戦士、カナリが2人で話していた。


「テオ、聞いてるか?巨人の事…」


「あぁ、知ってる、今朝その巨人の攻撃から唯一生き残った戦士が、ペリウムの病院に運ばれたそうだ。だが見たこともないような毒に侵されて、助かるかどうかは分からないらしい」


「そう…か」


両者の間でしばらく沈黙が漂った後、カナリは目を細めてこう言った。


「今向かってる戦場…その巨人が出る可能性が高いらしい」


「わかってる、あそこを占領すると首都レンドンの付近にある大森林へのアクセスが容易になる、そんな大事な戦場になら、あの巨人を投入してくる可能性が高いって事だろ?」


「そうだ、首都近くの森を占領するなんて、それだけで最大級の威嚇になるからな、そこを手に入れるためには使ってくるだろう、となると、やはり奴との戦いは避けられない…」


カナリは強く拳を握りしめ、テオに語りかけた。


「俺は…フレミングであれに勝てるのは、お前だけだと思っている…」


「…そうか、そう言って貰えるとありがたいが、正直あれは俺でも勝てるか分からない…なにかあった時はお前にも任せたぞ」


「ああ、そのつもりだ」


それから、テオは一度大きく背伸びをした後、力を抜いたような声で「ま、俺が敵を前に逃げるなんて戦場じゃ絶対あり得ないし、出会ったら基本、どちらかが生きるか死ぬかになるだろうけどな」と言った。


それを聞いて、カナリは改めて、テオのある事を疑問に思った。


「そう言えばお前、どんなに死にかけても絶対逃げないし、それに倒した敵には毎回敬意を込めているよな…あれはなんでなんだ?」


2人の付き合いの長さからしてみれば、今更と笑ってしまうほど、本当に改まった質問だ。


それにも、テオは少し頬を柔がながらも真面目に答える。


「なんでって…そうだなぁ、戦場にいるって事は…相手も命をかけてるわけだろ?その人にとって大切なものを護る為に…そんな相手を殺めてる訳だから、せめてその覚悟を敬おうとするのは当然の事じゃないかと思ってるだけだけどな…」


テオは当たり前の事のようにそう言った。


だがカナリは、改めてテオという存在を見直す事になった…


「すごいな、お前。俺じゃそんな風には考えられない」


「そうか?そんな変な事言ったつもりじゃないと思うんだけどな」


その後も、戦場に着くまで2人の雑談は続いた。


戦闘前の息抜きにこんな風な会話を続ける2人を乗せた輸送車は、少しずつ戦場へと近づいていった。



そんな事実など知る由もなく、フレミングとナスカンの兵士達はたった今、作戦を始める準備を終えた。


「それじゃあ、始める」


βはそう呟くと、全身を包むように鉄の身体が出現し、みるみる鉄の巨人へと変身した。


変身を終えたβはすぐにうつ伏せの姿勢になって戦場を見下ろした。


「すご〜い、これが噂の巨人!!!」


アイラが興奮気味き巨人をじっと見つめている。


「まるでロボットみたいね…」


「robot…ですか?あの巨人には、別に名前があるのですが…確かにそちらの方が良いかもしれませんね」


robotはそのまま口を大きく開けた、かと思えば口の奥から大砲の砲身のようなものが現れ、そこからエネルギーを貯め始めた。


「なるほど、これが貯まるまで時間稼ぎしてろって事ですね」


アレスが改めて作戦内容を確認した。


「その通りです、よろしくお願いします」


「はい」


フレミングとナスカンの兵士達が、一斉に横列に並び立った。


「じゃ、私は出番まで待機しとくから、頑張ってね」


アイラは明るくそう言った。


部隊長が目を瞑り、意識を集中させ、命令する。


「出撃!!!」


「「「了解!!!」」」


部隊長の命令を合図に、全員が戦場へと飛び込んでいった。


こうして、比法戦争にナスカン王国が本格的に参戦した。


元より恐れられていた比法戦争は、更に激化の一途を辿っていく…

次回から遂に、本格的にフレミング参戦!!!お楽しみに!


評価・ブクマ、よろしくお願いします!

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