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71話 ???

「ソンの進めていた事はほぼ全て白紙になったと言っていい、とはいえ、血と龍の関係は十分に分かった、そういう意味では、残した功績も大きいか」アマリウドが言った。

ここはグリスとフレミング、ロムレスの戦争における戦場の1つ、


ここでもまた、ロムレスの兵士はテオという存在を前にただ圧倒されていた。


「くそ、駄目だ、どれだけ撃っても当たらねぇ…」


「バリアのせいで、何をしても意味ないのよ!!!」


「「「うあああああああ」」」


誰一人何もできず、無惨に血の雨だけが降り注がれた。


そうして生まれた死体を見て、テオは静かに、手を合わせて黙祷をする…


「お前たち皆、よくぞ誇り高く最期まで戦った、ただこうして出会えた事だけでも、嬉しく思う」



テオや新型の軍服を装備したフレミング軍の活躍によ

り、戦況は急速にグリスの勝利へと傾いていた。


それを喜ばしく思う者もいれば、好ましくないと思う者もいる。


サイン共和国の首長、アントニオは、この戦況に連日頭を悩ませていた。


いつ、我らが本格的な軍事介入をしようか、その機会を伺っているのだ。


小手先の資金援助だけでは敗北まで秒読みであるという事を、アントニオがこの世で最も感じ取れていた。


わかっている、もう既に戦う準備も出来ている、だが()()が戻るまでは、それまではまだ参戦するわけにはいかなかった…


「大統領!」


その時、突然副大統領が飛び上がるような勢いで執務室に入ってきた。


「どうした」


「はい、どうやら、ようやく帰国したようです…()()が」


「なに!?」


普段寡黙なアントニオでさえ、思わず大声で喜びの感情を漏らしてしまった。


どれほど待ち侘びていただろうか、その報告が聞けるのを、


「よし、今すぐ研究所の者達に許可を出せ、()()の実戦投入を認める、そして…」



尚も銃声と断末魔が絶え間なく鳴り響く戦場。


ドクドクドクドク


生と死の狭間を行き来する心臓の音が、静かに奏でられる。


コク、コク、コク、コク


………………………………………………………………



チュドォォォォン


そんな中、突然唸るような地響きが戦場に響き渡った。


「なんだ!?」と全員が地響きのした方を振り向く。


だが全員が、そうして見えた光景を信じる事ができなかった。


現実のものなのかすら疑わしいような、あり得ないものがそこにはあった。


黒と紫を基調とした、鉄で出来た巨人のようなものが…


1人残らずその巨人の存在に圧倒されていると、巨人は何一つ発さずに右腕を前に突き出した。


その瞬間、右腕が巨大なガトリングに変化した、


そしてそのガトリングを、ゆっくりと()()()()の方へ向けた。


「お…おい、なんか、こっち向けてきたぞ」


「なにする気だ?というかあれはなんだ!?」


巨人はそのまま、静かにガトリングの引き金を引いた。


「あああああああああああああ」


いつの間にか一方的に撃たれて、何人ものグリス軍兵士が一瞬にして死んだ。


「なんだ!?なんだこれは!?」


この場にいる誰もが、今起こっている状況を理解できていない、グリス軍が大量に死んだ、ただこの事実があるだけだった。


一方でロムレス軍は、何となくこの巨人が味方であるような気がしてきていた、そうだと一瞬でも考えた時、全員が無意識に笑っていた。


「う…撃て!!!」


グリス軍が反撃に出ようと今ある武器を全てこの巨人にぶつけた。


だが、巨人を覆う鉄の前に如何なる攻撃も歯が立たず、微かに動かす事さえできなかった。


巨人の左手がバズーカに変化し、それを4発ロムレス軍に向けて発報した。


この巨人の巨大に合うようなサイズのバズーカから発射される弾は、4発だけでも何10人ものグリス軍の命を奪うのには充分だった。


続けて巨人は、両腕を元の腕に戻し、今度は手のひらの真ん中に、通気口のような小さな穴を作り出した。


その穴に見るからに膨大なエネルギーを溜め込んだ後、そのまま両手のひらを合わせて、空に両手を広げながらそのエネルギーを鉄球のような弾にして発射した。


空高く昇ったエネルギーの弾は、途中で花火のようにバラバラに分解され、シャワーのようにグリス軍の方へ落ちてきた。


「あああああああああああああ」


雨のように降り注がれたエネルギーの雨は、一瞬にしてグリス軍の武器、兵器、人…あらゆる物を破壊していった。


気がついた頃には、グリス軍の方にはもう何も、残ってはいなかった。


ロムレス軍の人たちは、ただただ唖然とした、それしか取るべき行動が見つからなかったのだ。


やがて、巨人の肩に穴が開いて、何かが上がってくるような、機械的な音が聞こえてきた。


「任務、完了」


そうして中から出てきたのだ、蜜陀僧色のブレザーに黒のミニスカート、透き通るような白髪に見透かしたような紫色の瞳をした少女…そう、


βが。


この衝撃的な出来事から10分前、サイン・コサイン・タンジェント連邦共和国はグリス共和国に宣戦布告していた。


これを受け、軍事契約を理由にフレミング帝国がサイン共和国に宣戦布告…


こうして、現代において最も恐れられるペンタグラム同士の戦争、[比法戦争]が始まった。

フレミングvsサイン…比法戦争の開戦です。


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