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69話 フレミングの切り札

思い出したようにイレーネが「そう言えば、プロジェクト・フェニックスは結局どうなったの?」と言った。

ロムレス共和国の中でも有数の都市を奥に構える平原。


そこに軍幕を設置し、敵からの襲撃に備え待機していた数名の戦士の部隊がいた。


その中でも中心的な役回りをしている女性、スミス。


彼女はロムレス共和国においては最も強いとされる戦士であり、そんな彼女が率いる、戦士3人、一般兵4人で構成されている部隊が、敵軍からの奇襲を待ち構えているのである。


戦士の1人が、戦争中でも息抜きにとスミスに話しかけた。


「サインが援助をしてくれたお陰で、武器や端末が切れる心配はなくなりましたね」


「…そうね、だけど、逆にいうと今はそれだけしかしてくれてないって事、今はまだ、私たちだけでどうにかするしかない」


「そうですよね…」


その時、スミスの持っている魔力を計測する時計が突然突き刺すような音を出した。


すぐに時計を見てみると、本来なら2時を刺しているはずの針が引っ張られたように11時の方を刺していた。


それを見たスミスはすぐに隊列を並び直させると、端末からそれぞれ武器を取り出して、現れた敵軍を文字通り待ち構えた。


ドッドッドッドッ


8人ほどの武装した軍人が、アサルトライフルを構え、横並びに整列しながらこちらへ向かってきていた。


そいつらはよく見ると全員が見慣れない装備を身に纏っていた、肌が一切隠された鎧のような軍服に、顔を完全に隠すような丸いヘルメット…


これまでスミス達が見てきたどの国の軍隊とも特徴が一致しなかった。


「な、なんだあれは!?」


「…なんらかの新兵器…ならあれはフレミングの軍隊なのでしょうね」


「どうしますか」


「…だとしてもここを放置する理由にはならないわ、大丈夫、仮にフレミングの戦士が相手だとしても並の相手なら私たちなら充分勝てる、あれを殲滅するわよ!」


「「「了解!」」」


スミスの命令で、この場にいるロムレスの兵士全員が謎の装備の部隊へと向かっていった。


それに気づいた謎装備達は返り打ちにするためアサルトを放射する。


その弾丸を全てかわし、戦士の1人が謎装備の1人に炎のアビリティを放った。


「!?」


だがその直後、戦士は思わず目を疑った。


確かに炎は直撃したにも関わらず、それが全く通用していなかった。


それだけではない、この至近距離まで近づいて尚アビリティではなく銃を使ってくるという事は、この兵士は戦士ではないという事。


つまり防御関連でも戦闘用のアビリティを持っていない可能性が高い、にも関わらず攻撃が効いていないのだ。


(なんだ!?どうなってる…)


戦士は一度この兵士から距離を置いて、武器である炎を発射する手のひらを構えながら様子を見ることにした。


だが周りを見渡しても、皆この兵士達にダメージを与えられていないようだった。


鋼のような装甲に阻まされているような、そんな感じだった。


それは、スミスとて例外ではない。


「っ、ちっ、っっ!!」


敵の銃弾を避けつつ、端末から取り出した剣で何発も一撃を入れているが通用していないようだった。


スミスは銃弾を避けながらも考える、何故攻撃が通じないのか


(だめ、斬撃が通じない、間違いなくこの変な軍服のせいね、この服が鎧のように私達の攻撃を阻んでる…)


スミスは攻撃が無効化されながらも尚脳内で現状打破をシュミレートする。


そう言えば、フレミングが実質的にサインに戦争を仕掛けたという事は、フレミングはサインと、サインと一緒に付いてくるであろうナスカンにも勝てる自身があるという事…その自身の源がこれなのだとすれば、相当ヤバい状況かもしれない…今、


とにかくこの鎧をどうにかする方法を考えないと、それを探るためにスミスはもう一撃、今度は彼女の持つアビリティの中でも最強格の威力を持つ、[アストラブレイド]を放った。


結果はやはり無駄、多少よろめかせさしたが、その程度で有効打を与えたとはとても言い難いものだった。


(…なるほどね)


だが、スミスはこれで何かを思いついたのか、突然少しだけ敵兵から距離を離すと同時に手に持っていた剣を空高く放り投げ出した。


その後別の端末から新しく剣を取り出したと同時に、スミスが敵兵の視界から消えた。


敵兵は突然のこの事態に慌てながらも冷静に、スミスの魔力を探る。


そうしている間に、スミスが放り投げた剣が丁度敵兵の真上に着いた。


その刹那、剣の影の中からスミスが凄まじい勢いで飛び出て来て、その勢いのまま敵兵の首元を剣の柄頭で突いた。


敵兵はその衝撃で一気に意識が消えていき、そのまま地面に倒れた。


「鎧は斬るより叩くのが有効、当然よね」


スミスは倒れた敵兵に向かってそう言うと、落下してきた投げた剣を掴み、元の端末に戻した。


その後、この場にいるロムレスの兵士全員に向けて、今ので分かった情報を伝えた。


「聞いて!もう分かってると思うけど、あの軍服、表面が硬くて物理攻撃がほぼ通じない、属性攻撃もたぶん対策されてると思う…けど、一点に集中された打撃にはかなり弱いみたい」


スミスはそう伝え終えると、一旦フレミング兵から少し距離を置いた。


他の兵士達もスミスの元へと集まっていった。


「つまりどういう意味ですか!?」


兵士の1人が質問した。


「剣の柄頭とか、そういう攻撃部分の面積が小さい部位ってあるでしょ?そこで敵の首筋とか頭を打つの、恐らく装着者の戦闘時の快適性とかの弊害かな?そうすれば装着者へ打撃の衝撃が直に伝わって、ショックで気絶させる事ができる、原理は予想だけどね」


今の説明で兵士は理解し、「なるほど…了解です!」と言ったが、それを聞いていた戦士の1人はある事を疑問に思った。


「ちょっと待て、確かにそれならやれるかもしれない、実際その方法で1人倒したようだしな、だがそれには敵の至近距離まで近づく必要がある。だが敵はどういうわけかこちらの動きをある程度予測して撃ってきているようだった、実際にそんな芸当が出来るのはこの中だとあんたぐらi…」


戦士が言い切る前に、スミスは「大丈夫」と一言。


「無理そうなら気合い、いいわね?」


「……まったく、あんたって人は…そうだな!やってやろうぜ!」


スミスを中心に、全員が端末から打撃武器を取り出してフレミング軍達に構えた。


「よし、次こそ奴らを殲滅するわよ!!!」


「「「了解!」」」


スミスのその指示で、全員が一斉にフレミング軍へと向かっていった。


「うおーー!」


先程炎攻撃が通用しなかった戦士も、端末からハンマーを取り出し、なんとか敵の銃撃を掻い潜って懐まで近づき、ハンマーの柄頭で首元を突いた。


それを喰らって、この兵士は倒れた。


他の兵士達も、どうにかフレミング軍の間合いに入ろうと試みていた。


スミスも敵の銃撃をかわしながら素早く距離を詰めていき、間合いまで入った所で剣の柄頭を首元にぶつけて気絶させた。


それに気づいたもう1人の兵士がスミスを狙って発泡してきたが、スミスはすぐにスキル、[影移動]で自身の影に隠れ、そのまま影ごと敵に近づいていき、敵の真下で飛び出て首元を突いて気絶させた。


「ふぅ…よし、後4人」


アイラがそう呟いたも束の間、巨大な戦車がこの戦場に到着し、街に向かって砲撃してきた。


発射された弾は奥の街まで一直線に飛んでいき、中央にある20階建ての高層ビルに直撃し、それを破壊した。


「…そう気を抜いてもいられないか」


スミスは端末から手裏剣を4つ取り出し、それらを空中に放り投げた。


それと同時に、スミスも放り投げた手裏剣よりも高い位置まで跳ね上がった。


そこから、全ての手裏剣の影がフレミング兵の頭を触れた事を確認すると、スミスは端末から剣の鞘を取り出してから剣に魔力を込め、アビリティを発動する。


「アビリティ、[インダイレクトシャドーポーク]」


そう言ってスミスが剣を鞘に戻した瞬間、この場にいる全てのフレミング軍が頭を強く打たれたように、ぞろぞろと気絶していった。


「す…すごい」


ロムレスの兵士が思わず感心している間に、スミスは着地し、戦車の元へ走っていった。


戦車は近づいてくるスミスを迎え撃とうと、何発も砲撃を繰り返した。


それをスミスは走りながら全て避け、影移動で更に距離を詰めてから上空へ高くジャンプした。


スミスは上空から戦車の様子を一瞬だけ観察し、即座にその硬度を見抜いた。


(あの大砲、軍服とは素材が違う…なら普通に攻撃しても大丈夫ね)


スミスは鞘から改めて剣を取り出し、落下の勢いも交えながらアストラブレイドを戦車にぶつけた。


それを真下から直撃し、激しい爆発音を上げた戦車は大破した。


「こ…これがスミス」


爆発し、炎だけが残った戦車を、何も言わず眺めているスミスの背中を見る兵士達。


そんな兵士達の方へ振り向いて、「よし、殲滅完了!」と、スミスは笑顔を振る舞った。


「そう…ですね」


「うん、けど次いつ敵がくるか分からない、それに既に町に被害が出てるしね」


「はい、警戒体制を続けます!」


「そうね」


「!!!!!」


その時、スミスは一瞬だけ異様に強い魔力を感じ取った、ほんの僅かに一瞬だけだが…


「みんな!とりあえずここから離れて!!」


スミスは急いで全員に指示を出してこの場から離れた、それに従い、他の兵士もスミスの元へと離れていく。


「どうしたんですか!」


「分からない、分からないけど…一瞬、もの凄い魔力を感じた」


落ち着いて、スミスは魔力を探知する時計を見てみた、が、驚く事になんの反応もしていなかった。


だが同時にスミスは薄々感じていた、その魔力の正体が、ゆっくりとこちらに近づいてきている事を、


(嘘…なんで、一瞬とはいえあれだけの魔力…)


スミスは脳をフル回転させて、この意味を冷静に分析する。


(探知機で探知できない、けれどとてつもなく強い魔力…これは、まさか!!!)


スミスが気づいた頃にはもう遅かった。


魔力の正体はスミス達の目の前で足を止め、その姿を現した。


そしてそれに、1人残らず驚愕し、恐怖した。


「嘘だろ…」


「間違いないか…これは、テオ」


そう、スミス達の目の前に現れた、謎の魔力の正体は、フレミング帝国最強の戦士、テオであった。

どうするんですか?これ、


評価・ブクマ、よろしくお願いします!

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