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64話 閑話本題

イレーネは2人に、「あれは本当なの?ソンのやつが死んだっていうの」とダルそうに言った。

これと言った事が何もない日の朝、アレスはふと、いつもより早く目が覚めた。


突如として脳裏に、ある事が過ったからだ。


「ケンタウロスって、どうなったんだろ…」


ケンタウロスとは、現代では野生者は全て絶滅したとされる、古代種に分類されるモンスターである。


確かに野生では絶滅したが、世界で唯一、ナスカン大森林にだけは、かつての大国が戦争に使用した個体が1体生息していて、それが現在にまで生き続けている。


けど前回の凶暴化事件で、そいつも凶暴化して、その時はアレスとミアの2人でどうにか封印する事ができたが、その後封印したまま草むらに放置してしまったし…


それに戦闘の過程で切り落とした左腕と盾は封印されてはいないし、それも地面に放置したままだった。


あれがどうなったのか、アレスは急に気になって仕方がなくなった。


なのでさっさと朝食を済ませ、家を出てそれを確認しようと玄関に向かった。


「じゃ、行ってくる」


アレスはドアの前に立ち、いつもの癖でそう呟いてみたが、例え振り向いても後ろにミアの姿はない、まだ眠っているのだ。


まぁ当然か、昨日あれほど戦って、魔力もほとんど無くなってた、疲れて当然だ。


ドアを開いて外に出ると、住民達は皆昨日の祭りの後始末に追われていた。


ガイナ像を元の位置に戻したり、噴水に貼り付けた板を外す為にアビリティを解除したりと、何かとやる事が多いらしい。


だがアレスはこの後始末がとにかく面倒で嫌いで、手伝いを催促される前に、いつも超越光速でナスカン大森林の何処かへ隠れてやり過ごしていた。


今日ケンタウロスの封印跡を見に行くのも、ある意味それの延長なのかもな…



超越光速を使ってケンタウロスを封印した場所へ移動すると、そこには前とほんの少し変わった風景が目に映った


まず想定内だった事は、ケンタウロスが封印して石化したのがそのまま残されていた事。


これは当たり前だ、封印された物体をその場から動かす事は出来ず、空間においてその場に固定される。


それが例え、真下にいる敵を突き刺そうと空中から剣を突き下ろしている最中の状態だとしても…


けどそれ以外は、いつの間にかかなり手がつけられてるようだった。


奴が戦闘中自分で切り落とした左腕は回収されているようだし、その時一緒に落とした盾も回収されているようだった。


恐らく宮殿地下の研究室にでも保管されているのだろう、色々と研究したいんだろうし。


そう言えばノア様とソラナが運んでいたあのゴルファングはどうなったのだろうか?


いや、あれも同じく地下室か、たぶん生きた状態でそのまま研究に使われてるんだろう。


「さてと、確認出来たしもう充分か」


アレスは再び超越光速を使って、ナスカン王国の極東にある国内唯一の図書館、国立図書館の前まで移動した。


アレスがわざわざここに戻った理由は、一つだ。


「どうせなら本でも読むか…」


アレスはそう呟いて、国立図書館の中へと足を運んで行った。


アレスは基本的に読者が好きだ、それも、小説や漫画等物語性のあるものが。


物語はいい、この世界がどれだけ容赦なく理不尽な物であっても、物語だけは、作者の理想とする価値観や世界観がまるでこの世の真実であるかのように書き連ねられている…


そんな物がこの世界の中から生まれた、アルスにとって、それがまるで自由の象徴のように思えて、堪らなく嬉しくなるのだ。


読みたい本を探して、本棚を指差しながら一冊づつ慎重に選んでいくアレス。


その途中で見えた、サインとフレミング、両国間の対立深まると書かれた新聞記事を無視しつつ、やがて興味のありそうな本を見つけ、取り出そうと手を伸ばした。


ピタッ


「「あっ」」


その時、同じくこの本を取り出そうとしていたであろう人と偶然手と手がぶつかり合った、誰だろうと横を確認してみると、そこにアイラがいた……


いやなんだこの王道ラブコメ見たいな展開は、


「なんでアイラがここに」


「なにそのテンプレ台詞、本読むくらい私の自由でしょ!」


マジで少女漫画始める気か?


「あ、後その本読んでいいわよ」


「急に?あ…ありがとう」


「いいのよいいの、多分それ私の探してるやつじゃないから、にしてもこの世界の図書館ってちょっと不便よね〜」


「そうか?」


「うん、だって本のジャンル毎に本棚がエリア分けされてないじゃない」


「いやそれが普通だろ、元いた世界では分けられてたのか?」


「そりゃまぁ」


ふーんとしか言えなかった、何というか、昨日アイラの元いた世界とこっちの世界はどこか似てるとか考えてた気がするけど、やっぱり細かいところは違うのかもしれない。


「あ〜あー、マジで見つかんない、BL…」


「ふ〜ん………ん?BL?」


余りにしれっとそう言ってきた、いや別に腐女子に偏見があるわけではないが、何というか….その、良く他人に堂々とそう言うの言えるよなと思う、そのメンタルは尊敬する。


「まぁ見つからないものは仕方ないか」


アイラは残念そうにそう言った後、一切の迷いなく本棚からエ◯本を取り出してそれを読み始めた。


「???」


アレスは困惑の表情を隠しきれていない、てか人の目の前でエ◯本読むなよマジで、


そんなアレスの心情など知る気もなく、アイラは生々しい目でエ◯本に見入っている。


「エ◯本は18歳になってからだぞ」


「前世で既に成人済みなのでいいんで〜す」


「あっそ」


どこを見ても、如何わしい格好をした女性が見るからにダサい服を着た男性に如何わしい事をされている表紙が目に映る、暗黙の集中線が貼られたようにそこに視線が吸い寄せられてしまう。


この時、アレスはなんで図書館に入ったのかを若干忘れかけていた。


そんな中、「ねぇ、」と唐突にアイラが話しかけてきた


「なんだよ」


「もし、されて嫌な事だったら怒ってね、もうやっちゃったから」


「何をだよ/w/w」


さっきの話の流れでそんな言い方で聞かれたから、アレスは思わず恥ずかしさと失笑が入り混じった笑みで聞き返した。


「いやその、なんて言うか…調べさせてもらったの、貴方とミアちゃんの過去…」


「!」


それは突然切り込まれた話題だった、そしてようやくさっきの質問の意味が理解(わか)った、それと同時に、どう答えたらいいのかもわからなくなった。


「…なんでそんな事調べた…」


ようやく絞り出せた返答がそれだった。


正直初めてだ、今アレスは初めて自分の過去をノア様以外の他人に話そうとしている、少し触れられただけで侵されてしまいそうなほど、脆い過去を…


「昨日気になったのよ、あれだけブラコンキャラなミアちゃんが、どうしてノアを『おじいちゃん』なんて呼ぶのか…それでいろいろ調べて、まぁ…知ったっていうか」


このたじろいでいる反応、間違いなく自分達の過去を弄られたのだとアレスは理解した、だがアイラのこの反応は、アレスが最も嫌う反応だ。


「同情とかするなよ」


「…わかったわ」


「それと、その事はミアには話さないでやってくれ、あいつがあんな性格になったのは、あの後に俺が過度に愛情を注ぎすぎたせいだ、全部俺のせい…だからせめて、妹には奴らの事を思い出して欲しくない…」


「後悔してるの?その事…」


「当たり前だろ、奴らがようやく死んでくれて、ノア様が俺たちの経済的な面倒を見て下さる事にもなって…あんな有難いことなんてなかった、でも、有り難すぎて逆に申し訳なくなってきて…だからせめてミアだけは、俺自身の手で護ってやりたいと思った…けど、そのせいであいつはあぁなってしまった…別にブラコンが嫌とか、良くないとか、そういう風に考えてるわけじゃない、でも、俺が守ろうとしたせいで、元々甘えん坊だった性格がエスカレートしていって…俺が手を加えたせいであいつの性格が本来の物と変わっちゃたんじゃないかと思うと、それが凄く、嫌だと思った…」


図書館に氷のように冷え切った空気が流れた。


その空気の中で、アイラは優しく「ご両親の事、今でも許せない?」とアレスに聞いた。


「当たり前だ、許せるわけがない…そもそも、俺たちを苦しめるくらいなら、初めから産まなければよかったんだよ…」


凍った空気に、徐々に緊迫感が増していく。


これ以上この話はするべきじゃないと考えたアイラは、振り切ったように両手を一度叩いてから大きく深呼吸をした。


アレスもなんとなくその意思を汲み取り、この会話も自然な形で終了していった…


その流れに更に追い討ちをかけようと、アイラは何事もなかったかのように「ねぇねぇ」と気軽に話しかけた。


アレスもなんだとその話を聞こうとする。


アイラはさっきのエ◯本のとあるページをアレスに見せながら「この二の腕エロくない?」と嬉しそうに共感を求めてきた。


「………」


ミアといいエルナといいコイツといい、この作品の女性キャラはやべー奴しかいないのか?


アレスは本気で心配になってきた。

次回より、第二章が本格的にスタートしていきます…


評価・ブクマ、よろしくお願いします!

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