61話 アイラvsミア 3
手前に見えるのは、全身にダイビングスーツとゴーグルをみにつけた男性、アジエル。
ミアはアイラをその目に捉えながら、背中に炎の翼を広げて、ゆっくりと飛び上がっていった。
「ミアにも総魔力量の計測くらいは出来る、お前は世界最強クラスの戦士だと思っていたけど、本当にそうなのかの?怪しくなってきたの」
ミアはアイラを見下しながらそう言った、妙に煽り性能の高い妹だ。
あとさり気なく言っているが、戦士の実力を総魔力量の計測して行うなんて高度な所業、並の戦士には出来ない。
今のミアの煽りに、思うところでもあったのか、アイラは口をかみしめるようにしてこう言った。
「確かに、正直貴方の事舐めてたかもね、ただ相性が悪いだけじゃない…それを最大限利用して立ち回られてる…貴方、もしかしてノアさんより強いんじゃない?」
「それはないの、何度か戦った事あるけど、一度も勝てた事がない…でも、ミアはそんなおじいちゃんが大好きだったの…」
ミアは涙ぐみながらも、怒りを交えてこう叫んだ。
「だからお前如きが成り代わったように、のうのうとおじいちゃんの名前を口にするな!!!」
ミアはその勢いのままに、フェニックスを2体作り上げた。
「ヤレ」
ミアがそう命令し、2体のフェニックスがアイラに上空から火を放ってきた。
更にミア自身もアイラへと突入していった。
アイラは早急に翼を広げ、バーンフィールド中を飛び回りながらフェニックスとミアの攻撃を避けている。
さて、割とマジでどうしようか…
総魔力量は圧倒的に私が上だから、消耗戦に持ち込めば確実に勝てるだろう。
けどそれじゃあ意味がない、ミアと戦ってあげた理由は彼女に敗北経験を与えてあげるため。
その為にはただ勝つだけじゃ駄目、敗北を納得させないとそれはただの一記憶に留まってしまう。
自分は弱いんだと錯覚させられるくらい美しい勝ち方をしないといけない。
そんな重圧ともいうべき義務感が、私を更に追い詰めているような気がする。そう、正直私は今、本当に追い詰められている。
砂による戦法は炎で通じず、水もしっかりと対策されている。
完璧にメタられてるわね…まぁとにかくこのフェニックスを消さないと。
アイラは再び剣にブラストアクアを付与し、向かってきた1体のフェニックスの片翼を切り裂いた。
片翼を失ったフェニックスは「ペギャーーー」と悲鳴を上げながら地面へ倒れ落ち、その後すぐに火柱となって消えていった。
流れを逃さず、もう一体も同じ方法で切り裂いて消した。
だがその時、強い殺気を感じ剣を振りかぶりながら振り向いた瞬間、そこにミアがいた
炎に変化させた身体を斬らせてブラストアクアを蒸発させた上で、至近距離で火炎放射を発動してきた。
アイラは寸前に身体を砂に変化させて空気中に散らばりそれをかわした。
「…!そこ」
それをミアは、アイラがミアから離れ、砂を集合させ元の位置に戻るタイミングと位置を先読みし、そこに向かって炎の矢を放った。
アイラからすれば元の状態に戻った直後に炎の矢が突然飛んできたのである。
「ちっ、」
アイラは軽く舌打ちしながらも剣でそれを弾いた。
追撃するように、ミアは火の玉を連発した。
アイラはそれを避ける為斜めに急下降し、地面に吸い込まれたように着地する。
しかし、それは、ミアには想定内の範疇であった。
アイラが着地したと同時に、休む間もなくバーストヒートを放ってきた。
持ちきれないほどの巨大な炎の柱がアイラに迫ってくるる。
「っ、間髪いれずにくるわね。アビリティ、[ギガ・シャドー・フィン]!」
アイラがそれを発動した瞬間、炎に照らされて伸びたアイラの影が、ヒレ状の黒い巨大な刃に変化した。
その刃が迫り来るバーストヒートへ向かっていき、一瞬でバーストヒートを切り抜いた。
そのままミアの身体へと突っ込んでいったが、その身体が炎に変化し、すり抜けられた。
「へぇ…バーストヒートが攻略されたか、案外やるの」
「初めから結構やるわよ、私」
けど、やっぱり防がれるか…
地上と空中で睨み合う両者の緊張は、バーンフィールドを囲う炎のはぜる音が響かせていた。
次回、更にアイラが追い詰められていく…