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57話 俺は異世界に転生したい

ナスカン王国から遠く離れた、暗雲が広がる荒野の上を、カァーと繰り返し鳴きながら黒い烏が飛び回っていた。

ノア様の葬式が行われてから2週間後、ナスカン王国の人々は徐々に悲しみから立ち直りつつあり、笑いの活気があちこちで見られるようになってきた。


アレスが今こうして街の中央に立っているだけでも、今夜行われる祭りに向けての最終調整で盛り上がりついているのを当たり前のように見る事ができている。


それを見て、ふっと小さな笑みを浮かべたアレスに、アイラが横から話しかけてきた。


「最近みんなどうしたの?なにかを準備してるみたいだけど」


「あぁ、祭りの準備だよ、あんたのな」


「え?私?」


知らなかったのか?てっきり既に知っているものだと思っていたが…誰も話さなかったのか?


じゃあ俺がここで話すのは良くないかも…まぁいいか。


「前の凶暴化事件、ほとんどあんたのおかげで解決したようなもんだろ」


「いやーそれほどでもあるかー!」


今なんかイラッとしたな。


「それへの感謝の意を込めて祭を開くんだとさ」


「へー、なんか嬉しいような恥ずかしいようなね〜」


「……」


アレスは少し考えた後、アイラの方へ首を回してこう言った。


「俺も、あんたには感謝してる。あんたのお陰で、俺は生きる希望が持てた」


「なに?私をいかに持ち上げられるかとか流行ってんの?」


「なぁ、1つ聞いてもいいか」


アレスが質問した、アイラが「なに」と聞き返す。


「あんたは一度死んでて、その後異世界に転生してこの世界にきたって言ってたよな、前世の記憶を保持したまま…」


「そうよ」


「…俺は、やっぱりこんな世界(じごく)には居続けたくない…」


アレスは少し溜めて、はっきりと大きな声でいった「教えてくれないか!どうやって異世界に転生したのか!」


だが、それを聞かれてもとアイラは少し困り顔である。


「頼む、教えてくれ!ただ死んだだけでこの世界に転生できたんじゃないんだろ!?」


「………」


アイラは少し考えた後、答える。


「…ごめんなさい、正直な所、どうして私がこの世界に転生してきたのかはあまりわからないの。いや、転生したというよりかは、転生させられたって感じもする…」


「させられた?」


「……私が前の世界で死んだ時、誰なのかもわからない、1人と1匹が話しかけてきたの」「1人と1匹?」


「えぇ、最初に声をかけてきたのは1匹の猫だった、その猫は私に言ったの、新しい人生を君に与えるって。そしてその猫が去っていくと、今度は1人の女の子が現れて、その世界で生き抜くための力を与えると言ってきた」


アイラは淡々とそう説明した、それに対しアレスは終始目を見開き、小さく口を開けて聞いていた。


「そして気がついたらこの世界に転生してたってわけ、その時に私の意思なんて関係ないような様子だったし、仮に断ったとしても無理矢理転生させられてたような感じもする、まぁ私としてはどっちでも良かったんだけどね」


「そう…なのか」


今一納得できていない、というより自分が今の説明を理解できているのかすらも怪しい。


あまりに常識外れな話を連続して聞かされたような気分だ、いや実際そうなんだが。


けど今の話が本当なら、ただ死ねば異世界転生ができるってわけじゃなさそうだ。


どちらかと言うとその猫と女の子がアイラを転生させたって感じだったし、と言う事はその2人に会えれば可能性はあるって事だろうか、でも聞いてもその方法までは知らないんだろうな…


「まぁそういう訳だから、繰り返しになるけど、どうして私がこの世界に転生のかはわからないし、転生する方法も知らないの、ごめんね」


「いや、いいよ、答えてくれてありがとう」


アレスはアイラの目を見ずに、ただ前の景色だけを見つめながらそう返した。


「………」


「でも、諦めてないんでしょ?」


「!」


アイラはそう言った。


「…あぁ、こんな事ではまだ諦められない!俺は必ず、異世界に転生してみせる」


それを聞いて、アイラは一瞬間を置いた後、こう言った。


「そう、なら私も協力するわ」


「え?」


それは予想外の返しだった、正直この話を聞いていいのかどうかも分からなかったし、答えてくれただけでもありがたい話だったのに、


「いいのか?あんたは経験者だから多少感覚が麻痺してるのかも知れないけど、俺が言ってる事は相当幼稚じみた妄想だぞ!?」


「ふふ、だからよ、だって貴方可愛いじゃない」


「はぁ」


また、見るからに年下のくせに俺のこと子ども扱いしたような、別にいいけど


「ところであんた、実年齢何歳くらいだ?」


「は?どうしたの突然」


「いや、今のあんたは大体16歳くらいだと思うけど、その前。前世の年齢だよ」


それを聞くとアイラは、腰をくねらせながら人差し指を口元に当てて、妖艶気味な声でこう言った。


「乙女に年齢はシークレットよ、じゃあね〜」


そしてそのまま、手を振って何処かへいった。


「あ、おい」


……完全に舐められてるよな


まぁでも仕方ないか、世界は残酷で嫌だから、どこか別の世界に逃げようなんてガキの考えることだ。


ノア様に励ましてもらってから見えていた、あの自信と希望に満ち溢れたような世界は、いつの間にか嘘のように消えていた。


完全に前に逆戻りだ、今俺の目には、絶望と悲観しか見えていない。


だからこそ、願わずにはいられない。


薄々察してはいたが、アイラは異世界に転生する方法は知らなかった。


けどアイラがしてくれた説明には、妙な説得力があった、なんとなく嘘はついていない気がする。


だとすれば異世界転生自体は実在する、それは間違いない。


ならまだ希望はある、それがある限り模索し続ける、いつか異世界に転生できるまで。


アレスはアイラの去っていった方向を、死に絶えたような目でじっと見ていた。


その様子を、ミアが物陰からこっそり見つめていた。

お久しぶりです、catです。


流石にそろそら本編を更新しようと思い、投稿させていただきました。


本日より第二章、スタートでございます。


次回は祭りじゃーーー!!!

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