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56話 終わらせましょう

「な…なぜ、君がここに…」


プライムはあまりに驚愕し二度見したが、やはりアイラはそこに座っていた


どこから入ったのか、いつの間に座っているのか、記憶を探ってみたが全く見当がつかなかった


「どう?今私のしている事は王室への侵入。立派な犯罪行為よ?今改めて裁判にかけたら確実に有罪にできるけど?」


「……いい、今君をどうこうするとややこしくなる、何しにきた?用が済めばすぐに出ていって…」


「私はあなたに用があるのです、国王」


アイラがそれをいうと、プライムは少しわざとらしくアイラ睨みつけた


「…まぁそうだな、無理もない。なんの罪もない君を私の判断ミスで君を2週間近くも地下牢に閉じ込めさせたのだ、恨みがあって当然だろう…」


「いいえ、()()()別にいいの、本当に()()()ならだけど」


「!?どういう意味だ?」プライムは少し驚いたように後方に後ずさった


そして、アイラは玉座から立ち上がり、ゆっくりとプライムに近づきながらこう話した


「別に貴方をどうこうしようと言う気は毛頭ないわ、貴方が私という異分子を警戒して地下牢に隔離したのも、王としては正しい判断なのでしょうしね」


アイラはプライムの目の前まで歩いて止まった


国王の目の前に映るアイラは、まるで全てを見透かしているような目をしていて、ただ立っているだけにも関わらず、本当に一切の隙がなかった


それは、幼少期から何者にも屈しないよう精神を鍛えられてきた国王であっても、僅かな恐怖を感じるほどに


「ただ、()()()()ではないでしょう?私を地下牢に閉じ込めた理由」


「…どういう意味だ」


「例えば国王、貴方自身が個人的に私の力を恐れていた…とか」


「………」


それを聞いて、プライムは10秒間閉じるように沈黙した


その後、アイラの目をみて静かにこう言った


「だったら…なんだというのだ」


「別に、王も人間だし、個人的に私をどう思っていようと本来なら気にしていないわ。ただ…」


アイラは思い返すように一度目を閉じてから、静かに少しだけ目を開けて言った


「私には約束がある、この国で平和に暮らすという約束が…だから、国王に良い印象を抱かれてないまま、のこのこ寝静まる事はできれば避けたいの」


「…約束?誰との約束だ」


「それは言えないわ、少なくとも貴方には。とにかくそういう事情があるから、貴方とは今この場で対話をひておく必要があると思った」


「……何が望みだ」


「言ったでしょ?私が望んでいるのは対話、貴方と話がしたいの」


アイラとプライムが、一対一で状況的に向き合っている


「……お願い、プライドは捨てて。貴方の本心を私に話して」


だが国王はしばらく黙っている、当たり前だ


だが、プライムはアイラから一度視線を逸らすと、より一層険しい顔になりながら口を動かした


「そ…の通りだ、私は君の力が怖かった。大国と軍事契約をし、経済をある程度安定させてきたと言っても、所詮はあの狭い領土と、同盟国家との貿易に資金源を依存している政策…言ってしまえば、我が国は国際的に自立できていない、いくら軍事的に強力な力を持っていようと、所詮は途上国に毛髪を生やした程度の国家過ぎないのだ……だから」


「私の力を恐れたと、これ以上不安因子を増やしたくないから…」


「……そうだ、だから、出来れば君をナスカンには住まわせたくない…これが本心だ」


そう言って王は、包み隠すように目を閉じた


「……私がこの国に危害を加える気なんてない、けど、それを信じきれないから、貴方は疑っているんでしょう?私を」


そう言うとアイラは突然、国王の前で両手を下に向けて跪いてみせた


「…どういうつもりだ、これは」


「国王、あなたが私を信頼できないというなら、信頼されるまでこの国に支えてみせましょう。私と契約を交わしませんか?」


「なに!?」


「存じ上げているとおり、私の能力は非常に有用で戦時にも御使いしやすいかと存じます。私をこの国に住まわせていただく代わりに、次回の戦時の際に、私を戦場に参加させてはくれないでしょうか?必ずや、我が国の戦果に貢献してみせましょう」


アイラははっきりとそう言った


確かにそれは、国王に、ナスカン王国にとって絶対に無視できないものであった


アイラほどの人間が戦力となれば、ナスカン王国の軍事力はノアを失った現状を考慮しても5大国に匹敵すらほどのものに成長する事は間違いない


契約先の大国の信頼を維持する為にも、これ程の戦力を逃すわけにはいかないのだ


「どうか、お願いします、国王」


だがそれは、突如現れた危険因子をその手に抱える事と同じ


一度落とせば全て終わりかねない


「……わかった、ナスカン王国国王プライムとして承諾する、その契約、引き入れよう」


プライムは晴れた顔でアイラに手を差し伸べた


「ありがとう、契約成立ね」


アイラは立ち上がり、プライムと一対一で握手を交わした


眩しいくらいの夕日が、窓から両者を照らし上げた

これにて国運天秤裁判編完結です!次章の比法戦争編まで書き溜めの期間に入りますので、しばらくお待ちください。ここまで読んで下さりありがとうございました!!!

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