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50話 国運天秤裁判第二審 5

裁判長が力強く叩いたガベルの音が法廷中を鳴り響いた


遂に、判決が下される


「被疑者がスパイであると断定するには証拠が不十分であり、また様々な証拠から悪魔が一連の犯人であると言い切れるだけの証拠がある…よって、被疑者に求刑した死刑をこれを持って撤回、被疑者は無罪放免とする!!!」


裁判長の一声が、放たれたように法廷中を木霊した


私も、ルキナさんも、思わず口元が少し笑っていた


ルキナさんの演説が、国王の命令に打ち勝ったのだ


ありがとう、ルキナさん…


これで、ようやく第一の関門を突破した


間違いなくこの後、ネルガルが今の判決を上告する事になるだろう


最終審判、第三審…ここで勝てるかが勝負の決め手


と思っていたら、判決から5秒以上経過したのに、ネルガルはただ黙っているだけだった


視線を上へ向けていた裁判長が、ネルガルに「検察官、5秒が経過したが、よいのか?」と確認を取っている


「はい。しかし、それはあなたも同じでしょう、裁判長」


「………」裁判長はただ下を向いて黙っている


その後、ネルガルは「ルキナさん」と、ルキナさんに話しかけた


「はい」と、突然話しかけられて驚きながらも返事をするルキナさん


「あなたのお陰です、あなたのお陰で、私は検察官としての、本来の使命を全うできた気がします。何が真実で、何が偽りなのかわからない世の中を、少しでも正解に導きたい…その想いで検察官になったのに、いつの間にか私は、課せられた正義にただ従うだけの存在になってしまっていた…ですが、あなたの言葉が、私を、初めて法廷の場に立たせていただいたあの日の想いを蘇らせてくれた…本当に、感謝しています。ルキナさん!」


光った目で、ネルガルはルキナにそう告げた


「いえ、別にそんな大層な事は…」と、両手を振って恥ずかしがりながらも少し嬉しそうなルキナさん


そこへ突然


「はぁ〜〜〜〜!?ちょっと待って!!!」


聞き飽きた声が傍聴席から聞こえてきた


エルだ


「だから言ってるでしょ!!!そいつの言ってたビザを書いた時期っていうのが間違ってたの!!エルいったよねーーー!!!」


「君こそ何回か注意したにも関わらず裁判中に私語を繰り返しただろう、君は次回以降如何なる裁判も出入り禁止とする」


「はぁぁーー!?どういう意味よそれ!?」


「つまり出禁って事よ、お疲れ」


「はあぁぁぁぁぁ!!!???」


それよりも、この傍聴席におじいちゃんの姿がない


私が無罪を勝ち取れたのは、ここまで戦ってくれたルキナさんと、おじいちゃんのお陰


すぐにでもお礼がしたいところなのだけど


「ルキナさん!ノアさんは今どこに?」


「!ノア様なら、任務に向かわれました」


「悪魔?」


「はい、この悪魔の一味が潜伏している可能性のある建物が発見されて、そちらの調査に向かわれました」


……なるほど、これは、()()()()かもしれないわね


「裁判長!今の私って、ロックドラゴン撃破による英雄権取得って、取り消されていますよね?」


「あ、ああ…行政上は…」


アイラは、だったらと言わんばかりに、ニヤリと笑みを浮かべた


「でしたら、ここまでお騒がせしたお詫びもありますし、私が現在ノア様が受けられている任務に動向させていただけないでしょうか。もし、その場に悪魔がいたのなら、私が倒して差し上げます」


私は高らかにそう宣言したが、裁判長は「だが…それは国王の許可なしには」と少し困っている様子だった


しかしその時、ガコンと大きな音と共に扉が開き、ある人物が法廷の中に入ってきた


プライム国王だ


「話は聞かせてもらった」


大股で歩いて、私の前で立ち止まる国王


「アイラ()()、すまなかった」


国王はそう言って、私の目の前で頭を下げ始めた


当然、その場にいる誰もが騒然とした


「元はと言えば私の早とちりで無関係なあなたをこのような目に遭わせてしまった…本当に、すまない」


王は左手を握りしめ、僅かな険しい表情をしながら再度私に頭を下げた


「これはその詫びだ。あなたの希望通り、ノアの受けている任務に参加させよう、そして、その任務の内容を問わず、あなたに我が国の永住権を与えておく」


「………わかりました。では、お言葉に甘えて、参ります」


私はそう言って、一瞬で静かに法廷を出ていった


私は急いで、教えてもらった建物へと走った


早くおじいちゃんにお礼がしたいっていうのもあるけど、それだけじゃない


ようやく、私はナスカン王国に住むことが出来る


あの約束を果たす事ができるんだ


でも、それをここまで邪魔したのが悪魔だというのなら、絶対許せない


絶対殺す


その想いを抱いたまま、建物の中に入った


建物内の、その奇抜な構造に少し驚きはしたけれど、あまり気にせずに最深部の部屋へと入った


部屋に入った瞬間、最初にアレス君が目に入った


なるほど、アレス君もこの任務に入れられていたのね


「ちょっと横通るよー」


と、私はアレス君を横切って前に出た


目の前に悪魔が、それも幹部クラスの悪魔が2体…いや、もう1体、右端の通気口に隠れているから3体か…


「アイ…ラ」


「!どうしたの?アレス君、元気ないわね、私が来たからにはもう安s…!!!」


何故アレス君達が活力を失ったようになっているのか、少し周りを見渡して、すぐに理解できた


恐らく通気口の奴に殺られた、首が弾けたおじいちゃんの死体が地面にあったからだ


「なんだ、1人増えたな。だが、結果は変わらん」


お坊さんのような悪魔が話しかけてきた


「そうね、確かに私が増えた。そして貴方達は、1人減る」


私は指先を通気口に向け、爪先から豆型の光線を発射するアビリティ、[ケイン]を発射した


その直後、それに反応できなかった()()がブチュっと弾ける音がして、その後にスナイパーが通気口から地面に、鈍い音を立てて落ちてきた


「まずは1体」

次回、久しぶりにアイラがガチ戦闘します。評価・ブクマ、よろしくお願いします!

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