4話 ドラゴン
謎のモンスターが凄まじい雄叫びを俺たちに浴びせた
「っ、ほんとになんなんだよこいつ、こんな奴この森にいたか?」とマウロが愚痴気味に吐露した
そこに、思い出したようにエルナが「…ドラゴン」と呟いた
だがこれには、俺もマウロも動揺を隠さなかった
「ドラゴンだと!?世界に7種類しか存在せず、そのどれもが自然界の根底を覆すレベルの能力を持つ竜種の一体が目の前にいるというのか!?」とマウロが激しく反応した
「でもそうとしか考えられないじゃない」とエルナが言うと、それに続けて俺は「だとしたらあれは特徴的に、[ロックドラゴン]…か?」と言った「く、何故だ、ドラゴンなどこの国に生息している筈がないのに…」
俺を含め全員が、深く、息を呑む。当たり前だ、ドラゴンは、大国の上級戦士でも勝てないと言われるほど、圧倒的な強さを持ったモンスター、俺たち3人が束になったところで勝てる相手ではない
「けど、こいつをどうにかしないと、ナスカン王国は終わりだ」マウロはただ司会のように、現実を呟いた
確かに、北門は破壊された。こいつを放置しておけばその内他の野生のモンスターが街の中へ大勢入ってくる、そうなったらこの国にいる戦士だけで止められるとは思えない。そもそも、こいつがここにいる事自体脅威だ、既に2人は殺されてるっぽいし、なにより、あいつはあのリザレインと同じように、薄紫の魔力が浮き出ている…少し考えただけで、どれだけヤバい状況なのかは想像できる
「私に考えがあるわ」突然、エルナがそう言ってきた
「本当か?」「えぇ、私のスキル…[封印]よ」
エルナのスキル、封印。いくつかの魔力を消費して、彼女の周囲に4つの魔法陣を出現させると、それから銀色の巨大な封印効果のある鎖が出てきて、この鎖全てで対象を縛り上げると、対象の体がみるみる石化していき、全身全てが石化すると封印状態にさせる事が出来るというスキル、一度封印状態になれば対象の血液、魔力、等の体内機能は全て停止する等実質死亡同然の状態になるため強力なスキルではある
但し鎖は魔法陣から15メートル以上離れた位置まで伸ばす事は出来ず、また、20秒以上持続して使用する事も出来ない。更に、鎖を正確にコントロールしようと思えばエルナ自身の移動は困難になる等弱点の多いスキルでもある
「だがあれはリスクも大きい、あれほどの強敵相手に使うのは…」マウロは忠告する「けどあれなら、実力差に関係なく勝つことができる、それしかないわ」
「...、俺も、それしかないと思う」「アレス…分かった、エルナ、お前の作戦にかける、俺とアレスでどうにか誘導するから、その隙にお前は、確実に奴を封印してくれ」「分かったわ」全員の意思が合致した
「じゃあ、先ずはあれを動かさないとね」エルナは端末から生成した2丁の銃で、ロックドラゴン目掛けて撃った
ロックドラゴンはこれを、翼を利用して大きく空中へ上昇し避けた、ロックドラゴンはその後、俺たちを見下すように地上から7メートル離れた位置に留まった
エルナはその隙にロックドラゴンからほぼ真下の位置にまで走り込み、そこで地面に強く手をついて、上空を見上げてロックドラゴンの位置を常に確認しながら魔力を練り始めた
俺とマウロはそれと同時に同じくロックドラゴンのほぼ真下の位置まで走り、その途中で俺は[アビリティ、ダークボール]を2発打ち込んだが避けられた
アビリティはスキルとは違い、生まれつき持っているものではなく、後から自分で使えるようにする技だ、スキルと違い、代償はせいぜい多少の魔力の消費程度で大きなリスクは少ないが、効果はスキルには及ばないものが多い
アレスのダークボールは魔力でできた黒い球体を作り出し、基本的にはそれを投げつけて攻撃する魔力である
ロックドラゴンは反撃とばかりに、口から先の尖った岩石を1つ発射して攻撃してきた
アレスとマウロはこれをどうにか避ける
「飛び道具もあるのか!」「厄介だな」
「アビリティ、空昇拳」
「アビリティ、ダークボール」
マウロは空昇拳という、自身が宙に殴った際の風圧を何倍にも強化してそれをぶつけるアビリティを使用した、アレスのダークボールも、それに続いて攻撃する
だが、ロックドラゴンの身に鎧のように包まれた岩によって攻撃は全て阻まれてしまった
「「!?」」
「駄目か…攻撃が通らない」
その時、ロックドラゴンは再び大きな雄叫びを上げ、その直後にロックドラゴンが口から丸い岩石を3つ吐き出してきた
「3つだと!?これ、エルナを守り切れるか!?」とやや慌てるマウロにエルナが「大丈夫!」と俺たちに強くそう言った
「なにかあってもアレスが守ってくれるんでしょ!お願いよ!」と叫んだ
いつそんな事いったよとは思ったが、エルナがいないとこの状況を打破できないという事もあり俺は「分かったよ任せろ」と息巻いてしまった
岩石の内1つはマウロに飛んできたがマウロはこれを避け、2つ目はアレスに飛んできたがこれも避けた
だが3つ目がエルナの元に飛んできた
エルナはロックドラゴンに狙いを定めるため、可能な限り動くわけにはいかなかったため、完全に避けるのが遅れてしまった
「エルナ!」マウロが叫ぶ
俺は不味いと思い超越光速で一気にエルナの元に移動し、迫り来る岩石に向けてダークボールを撃ち続けた
だが岩石が壊れる事はなく、無常にも俺たちの元へ迫ってくる
俺は何度も何度もダークボールを撃ち続けた
そして俺は岩石を破壊した
そのままダークボールをロックドラゴンに撃ち続けた
翼だ、翼には奴を守る岩はない、ここならいけると考えた
だがロックドラゴンはすぐに翼を閉じてこの攻撃を防いだ
更にその後すぐに翼を開くと、そこから先の尖った小さな石を雨のように降らせてきた
俺達はこれを避けようとするが全ては避けきれず、全員が頬や腕に軽傷を負った
「くそ、さっきから1つもダメージを与えられてない」と思わず嘆いているとマウロが「いや、今ので1つ思いついた」と呟いた
その頃、南検問の方でのアイラと門番の口論は、この騒ぎで半ば停戦状態となっていた
「なんなんでしょう、この騒ぎは」
「...、ドラゴン」「え?」
「ドラゴンが向こうの門に出たみたい、戦士3人がそれと戦ってる」と、ここからははっきり見えないはずなのにはっきりとそう答えた
「そんなの見えませんが、また適当言ってるんじゃないですか!」「いいえ、分かるわ、私の[サーチアイ]を舐めない事ね」
門番はあまり気にする事なく「とにかくあなたを入国させるわけにはいきませんので、帰って下さい」と再び追い返そうとした
「はぁ?まだそんな事言ってんの?…もういいわ、ねぇ、この国に英雄法はあるかしら?」
「は?」「英雄法、国家の命運を守るほどの功績を上げた者には身分を問わずその国の居住権を与える法律」
「な、何故あなたにそんな事を教えなければならない」「ふぅん、その言い方、あるのね」「はぁ?」
「なら、話は早いわ、今すぐ私を通しなさい、私が、国の危機を救ってあげる」
ありがとうございました!遂にアイラが動き出すんですかねー?
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