48話 国運天秤裁判第二審 4
前回の第一審で、アイラを負けさせてしまった時、私は自分自身の弱さを嘆いた
弁護士としてアイラを勝利に導く…みたいな事を言っておきながら、結局何もしてあげる事ができなかった
だから今ならわかる…半端な覚悟では、誰の無罪も証明させる事なんてできない
弁護士の私が、できる事の全てを懸けて戦うしかないんだ
だけど私には、ノア様のように証拠を揃える力も、その為のコネもない…結局、弁護士としては失格なのだろう
だけど、それならもう仕方がない
例えどれだけ私が、弁護士として相応しくなかったとしても、ノア様や、なにより被告人であるアイラさんが私を頼って、弁護をお願いしてくれているのは揺るがない事実
だったら迷う必要はない、私は弁護士として、私にしか使えない証拠という武器を駆使して、今度こそアイラを勝訴にさせてあげる…ただ、それだけだから
「まだ、あなたとの話が終わっていません!裁判長」
裁判長に言ってやった、全員が驚いて私の方をむく
「どうした?何故突然私に…」と聞き返す裁判長
裁判長もそうだが、流石のアイラさんも困惑している様子だった、当たり前だろう
今から私のしようとしている事は、裁判長に必要な手続きをするんじゃない…裁判長を相手に裁判を始めるようなものだ
そうでなくとも、今から判決を下すようなタイミングで裁判長のガベルを止めるような人は中々いないだろう
それはさておき、裁判長の質問に答えていく
「裁判長、あなたはそのガベルを打ち鳴らした後、こう言おうとしようとしていましたよね、被疑者はスパイであると」
私のこの一言に、傍聴者たちは騒然とした
ここでアイラさんがスパイだと宣告するのは、先程までの流れにあまりにも反していたからだろう
それにしても、面白いほどに私の話を信じるものだ、まぁ好都合だが
「そりゃそうでしょ!!アイラはスパイだもん!」
おっと、1人だけ明確に私に反論してくる者がいたわね
ひとまず「黙りなさい」と一蹴して黙らせておいた
「……弁護人、ここは公正な判断の下、審判を下す場である。職務を遮る行為は控えて頂きたい」
裁判長はあくまでシラを切るつもりのようだ、だが無視して私は話を続ける
「それが、慎重な審議の末に下された判決ならば、私は弁護士として、それを受け入れます。ですが……」
ルキナは下を向きながら、「それでいいんですか…」と、呟くように言った
裁判長はそれが聞こえたようで、動揺したような眼で私を見ている
そしてこの時、ネルガルも同じく明らかに動揺していた
「裁判長、あなたが先程仰った事を、そのままお返しします……ここは公正な判断の下、審判を下す場です。どうかそれを、忘れないでください」
ルキナはそう言った後、裁判長から視線を外した
しばらく、しーんとした静寂が法廷中を包み込んだ
その中で、裁判長が何も言わずガベルを持つ手を持ち上げ、打ち鳴らそうと腕を振り下ろした
だが、寸前でその手を止めた
その状態はしばらく続き、円状の木製の叩き台の前で目を閉じて静止していた
この場にいるほぼ全員が、そんな裁判長の方を見ていた、ただ1人、ルキナを除いては
ルキナはただじっと、アイラを見ていた
…裁判長が目を開けて、ガベルを力強く打ち鳴らした
遂に、判決が下される
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