34話 王国最強と悪魔
林の中から、ノア様が現れた
いうまでもなく、俺が事前に助けを呼んでいたわけではない、本当に前触れもなく、ノア様が現れたのだ
ノア様は俺の状況に気づいたと同時にデストロイを、俺の顔に迫り来るバイアの右腕に放ってくれた
これでバイアの右腕の筋肉が破壊され、バイアは絶叫しながら攻撃を中断せざるを得なくなった
俺はその隙に、凍りついた剣を見捨ててバイアから離れた
ノア様も俺の近くに着地する
「ノア様?どうしてここに!?」
「この先に少し用があってな、その途中で何かが遠くに吹き飛ばされるような音を聞いて、近寄ってきてみたらお前がいた」
「そう…ですか」
「大丈夫かアレス、こいつ…悪魔だろう?」
やはりノア様も、バイアの異様な魔力を感じて、悪魔と断定したようだ
「はい、奴は悪魔、バイアと名乗っています。そして恐らく幹部です」
悪魔は強力なカテゴリーだが個体数が極めて少ない、それにも関わらず長くこの世界に生存しているため、悪魔全体で組織化されていると考えられている
そうだと仮定して、人間は悪魔を4つのランクに分類している
比較的弱い悪魔を[並]、それらを大きく上回る強力な悪魔を[幹部]…幹部の中でも特筆して強力な能力を持つ悪魔4体を[四天王]…
そして、それら悪魔達を統括しているとされている最強の悪魔[ハデス]を[支配者]と呼称されている…
「更にマイロと同じように体術に特化したアビリティを使い、それらを犠牲に絶対零度の氷を両手に纏うスキルを使ってきます。俺はどうにか奴の首筋に剣を向ける事ができましたが、見ての通り、奴の首は異様なほど硬く…失敗しました…」
「…なるほど、わかった。よく頑張ったな、後は私に任せろ」
ノア様はそう言いながら剣を鞘から抜き出して、バイアの前に立ちはだかった
「貴様!なにをした!!!」
バイアが筋肉が破壊された右腕を左手で押さえながら、声を張ってノア様に聞きつけた
「君に教える義理などない」
それをノア様はあっさりと受け流した
それにしても、バイアは損傷を再生できるはずなのに、何故破壊された腕を未だに抑えているのかが引っかかった
もしかすると、損傷が激しければ激しいほど、再生に時間がかかるのではないかと俺は考察した
もしそうならば勝機は充分にある、ノア様は確実にバイアよりも強い。心配なんてする必要はないと、俺は一瞬心から安堵した
「!?」
だけどそれと同時に、俺はある事に気づいてしまった
さっきノア様がデストロイを発動してからずっと、ノア様は左眼を瞑ったままだったのだ
「!?ノア様…左眼、どうされたんですか…?」
恐る恐る質問するアレス
「大丈夫だ、以前ゴルファングを生け捕りにした際、デストロイを使いすぎてしまってな、それで左眼が一時的に潰れ、今ようやく一度だけ使えるようになったモノを、お前を助けるのに使っただけだよ」
「そんな!?けどそれだとノア様!!!」
それだとノア様は今…片目が視えていないという事になる、いくらノア様だとしても、そんな状態であのバイアと戦えるものなのか?
「大丈夫だ、心配しなくていい。お前も、私も、必ず死なせんよ」
ノア様はそう言った後バイアを一瞬だけ睨んだ後、ノア様は剣を、バイアは拳を差し向けて互いに突っ込んでいった
「早急に貴様を倒し、アレスとの闘いを続行させる!!!」
バイアは動かす事が出来ない右腕の代わりに、左腕だけで攻撃を繰り出している
だけど左眼が見えていないとはいえ、片腕だけの攻撃がノア様に通用するはずもなく攻撃はことごとく全て避けられ、更にノア様は避けながらバイアの腹部と左腕をそれぞれ軽く斬り付けた
更に畳み掛けるように、バイアの背後に動き回って、背中を切り裂いた
だが、それと同時に切られた奴の腹部が再生し、左足を薙ぎ払って反撃してきた
ノア様は前方に大きく飛び上がってこれを避けて、俺の方まで一旦戻ってきた
(さて、ここまでは様子見だ、この後どう動いてくるか、それによって対応を変える)
バイアは斬られた背中を気にしながらも、鬼のような目を俺たちに差し向け、その裏で背中の傷が再生された
そして、バイアの右腕が一瞬激しく痙攣し、その際に一瞬だけ右腕が膨れ上がった
恐らく、奴の筋肉が再生され始めているのだろう、もしそうなればノア様が左眼を犠牲にしてまでした事が、無駄になってしまう
「なるほど、確かにお前は強い、このまま氷拳を使い続けるのは不利かもしれないな」
バイアはそう言って氷拳を解除し、両手の氷を解いた
「ノア…で合っているか?お前はこの俺が今すぐ殺す!そしてその後でアレス!お前との闘いを心ゆくまで楽しむとしようじゃないか!!!」
次回で遂に対バイアが決着します!評価・ブクマよろしくお願いします!