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178話 アイラとキル

私たちはクラーケンたちを注視する。


お互いにアビリティを使えず、かなりの弱体化を強いられている状況だが…


「とはいえ、どうすんだよ、あいつら。切った部位は背中の触手で再生されるその上、たぶん中距離からめんどくせぇ攻撃されるんだろ?」


「まぁ、正直そうなのよね、けど、後者については人手が増えて多少マシになったかもしれないし、とりあえずもう一回攻めようと思ってる」


「…分かったよ」


私たちは地面を蹴り上げ、クラーケンたちの元へ一気に向かった。


私は斧を、キルは剣を振るうが、やはり毎回躱され攻撃が当たらない。


そしてやはりクラーケンも舌や触手を中距離から伸ばして攻撃してくる。


やはり2人でやっても状況は変わらない、絶妙な範囲で間合いに入ることができない。


私たちが斧を振る、剣を振る、が当たらない。


クラーケンが舌を伸ばす、触手を伸ばす。躱せるが攻撃を阻まれる。


やがて2人とも各々武器で受け止め、後方まで後ずさられてしまった。


「っ、強ぇな。で?何か思いついたか?」


「うっさいわね、ちょっと待ってよ」


やはり2人になったとてまだ3対2、それに中距離からの攻撃をどうにかしないとどうにかなるものもならないか、


それに再生能力の件もある、では実際問題あの攻撃にどう対処する…


(クソ、アビリティさせ使えていれば)


ちらりとキルの方を見る。


彼はアビリティを安易に使えないという点を除けばほとんど本調子のようなものだ。


だがそもそも元来のキルの力ではクラーケンに勝てるだけのものはないのであろう、おそらく私以上に苦戦している。


「…なぁ」


キルが話しかけてきた。


「なに?」


「一応言うが、B・M、いつでも使えるぞ」


「だめ!!!」


B・M、その単語がでた瞬間、私は啖呵を切るように彼を一蹴した。


「それはもう二度と使っちゃだめ、いいえ違うわね。もう二度と貴方にそれは使わせない」


それが、私からキルへの贖罪になると思うから。


「…分かったよ」


さて、自ら活路を一つ潰した訳だがどうしようか。


…落ち着いて考えろ、必ずあったはずだ、奴らのここまでの戦闘の中に、奴ら攻略のヒントとなり得る行動が!


____大サイズが両手を再生した時、同時に奴の触手が腕に吸い込まれるようにして消えた。


まるで触手が身代わりになったようだった。


あの触手が欠損部位の再生の役割を担っていると考えるのは妥当だろう、だとすればまだ触手が戻っていない大サイズは今ならば倒せるという事だろうか、不意打ち以外で一撃を加えられればの話だが…


そしてもう一つ、あの水を放つ攻撃。


あれももう一度やられると厄介だ、今の状態で避けるのは難しいし、もしキルが喰らうと致命傷になりかねない。


…待てよ、そういえばあの時。


小サイズは…


だとすればこの方法で…


「…やってみるか?」


「なんだ、なんか思いついたのか」


「えぇ、これならたぶん勝てるわ」


そのための作戦をキルに耳打った。


「…なるほどな、けどそれ成功すんのか?」


「まぁ、成功しなきゃ負けるだけだし、大丈夫よ」


「…?」


「とにかく、行くわよ」


そう言った瞬間大サイズが私目がけて舌を伸ばしてきた。


「はい早速きた!!!」


私はそれをわざと左手で受け止めた、舌にそれが巻き付かれた。


「さぁやりなさい思いっきり!!」


大サイズはそのまま地面を思いきり踏みしめて、舌を私ごと自身の周囲で大きく円を描き始めた。


それを被っている私に更に追い打ちをかけようと中サイズが触手を伸ばそうとしてきた。


「させねぇよ」


そこへ、キルが中サイズへ切りかかって阻止した。


そのままキルは中サイズとの交戦をする。


大サイズは変わらず私を振り回している。


ならばと小サイズが私を追撃しようと触手を伸ばそうとしてきた。


「待ってましたぁ!!!」


私はその瞬間限界まで手を伸ばし、僅かに小サイズに近づく瞬間に小サイズの顎を掴んだ。


「「!!!」」


小サイズも大サイズも驚いて一瞬動きが止まり、小はすぐに私を落とそうと全身を揺らし始めた。


「無駄無駄、簡単には離さないわよ」


大サイズは何かを察知したのか、すぐに舌を左手を離そうとした。


「それも待ってたわよ」


私は舌が左手から離れる直後に逆にその舌を掴んだ。


「さて、始めましょうか」


さっきあの水を放つ直前、小サイズの背中の触手が引っ込んだ。


それはつまり、水技が放たれている間は触手による再生ができないという事、少なくともこの小サイズはそいう性質がある。


そして、その水技を放つためには恐らく一方の舌をもう一方に入れる必要があるのではないかと考えている、そうでもないとわざわざ舌を口の中に入れる必要がないからだ。


つまり…


「あんたら雄なのか雌なのか知れないけど、熱いディープを強制するわよ!」


私は大サイズの舌を小サイズの舌に無理矢理突っ込んだ。


小サイズは一瞬苦しそうに声のない声で悶えた後、そのまま口から凄まじい水圧の水流が発射された。


その直後に小サイズの背中の触手が閉じる。


当然小サイズの口の真ん前にいた私は受け止める間もなく水流が直撃した。


そしてそのままその勢いに流され、小の正面の位置にいた大サイズの方へ吹き飛ばされていった。


「つまり、ここで一体」


私は既に水流を使い触手が閉じている大サイズの首を、水流の流れにのって切り飛ばした。


だがその直後、水流の勢いに流されて地面に激突した。


「っ、、、」


水流を直撃したダメージで、私は身体が動かなくなった。


「後…任せたわよ、キル」


「…あぁ、[躁動斬]」


キルはそのアビリティを発動し、目の前の中サイズへ跳ねるように突進し、奴の左腕を切り落とした。


更にそのまま地面を飛び跳ねて、私に水を発射されて戸惑っている小サイズに向かっていき、そのままそいつの腹部を切り裂いた。


中サイズはそのまま、音を立てて倒れた。


だがアビリティを使った反動か、直後にキルも地面に倒れた。


だが、2体のクラーケンが倒された事で残った中サイズは怖気づいたのか、触手で切られた左腕を再生してすぐにこの場を離れようとした。


「…逃がすかよ!!!」


ほぼ同時にキルが立ち上がり、手に持った剣を投げ放った。


その剣は逃げ行く中サイズの背中を貫通し、そのまま中サイズは絶命して倒れた。


…かくして、クラーケンたちは全滅した。


「…群れで襲うモンスターなら残り一体になった時点でどうせ逃げるから大丈夫って言ったじゃない」


「あいつが他の仲間を呼んでこないとも限らないだろ」


「まぁ…そうか」


2人はその場で、しばらく何も話さずその場で倒れていた。


…そして雨がや止み、小さく太陽が顔を出した。


2人はまだその場で、何も話さず倒れていた。


2人とも、僅かに微笑みながら、何も話さず空を見ていた。

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