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175話 始まりからの終わり

「終わらせましょう、私たちの全部を、初めから」


キルヘ聖龍の剣を突きつけてそう言った。


同時に聖龍の剣が怪しく光り、直後に噛み付くように私の魔力を吸い始めた。


「っ、、、…さぁ始めましょうか!」


私は地面を蹴り上げ、かつてない速度でキルに切りかかった。


キルは私の速度が突然膨れ上がった事に驚いたのか一度後方に飛び跳ねて急いで斬撃を避けた。


だが着地と同時に「なんか早くなってやがるな」と言って対応したのか即座に再度地面を蹴って私に切りかかってきた。


私もそれに応戦して剣を振るう、3度目の鍔迫り合いが始まった。


だがさっきまでとは違う。


さっきは奴の8本ある腕に対応しきれず、徐々に追い詰められていっていたが、今は聖龍の剣の力で上がった斬撃速度によって攻撃に遅れをとることなく寧ろ少しずつ彼を追い詰めていっている。


そして遂に、剣が彼の腕の一本を切り飛ばした。


____やはり、殴られるという事は斬れるという事だったか。


キルはこれ以上は不利と判断したのか私の攻撃を躱しつつまた後方に移動した。


「っ、なら…」


そして、直後に全てのキルの魔力の腕が木のような長さにまで増大し、そのまま私目がけてその腕を向かわせてきた。


最初の1.2発はなんとか躱す事ができたが、どちらも余裕を持って避けられたという訳ではなかったため、念のため翼を展開して中に飛びこれで攻撃を避ける事にした。


キルは構わず何本もの腕を私へ伸ばし続けている。


私はその猛攻全てを躱し続け、キルの上空を飛び回っていた。


そしてキルの攻撃が一瞬止んだ隙に翻って彼の正面の位置まで飛び回った。


____このままキルを顔面を叩きつけられれば勝てる。


だがキルの攻撃が一瞬止んだとは、それ即ち彼が新たな攻撃に転じ始めた事も意味していた。


キルは体に2本の巨大な魔力の腕を生やし、そいつと元からあった2本の魔力の腕を4つ合わせてひし形の点の役割となるような位置に動かした。


そしてその位置のまま、4本の腕全てが空中に向かって赤い魔力を放出し始めた。


それらは4つの腕が向かい合う位置でぶつかり合い、やがて交わり、一つの魔力の塊となっていった。


4つの腕の向かい合う位置に、大きく赤黒い球状の魔力の塊が発生した。


「[擬輪廻珠(ぎりんねだま)]」


そしてそのまま、それを投げ飛ばしてきた。


「!!!」


私はすぐに剣を振って逆にそれを切り裂こうとした。


だが、、、


「っ、重い…」


その擬輪廻珠というのは予想以上に重たく強力で、聖龍の剣でも即座に切り裂く事ができなかった。


それどころか徐々に珠が剣を押しやってこちらの顔に迫ってきていた。


このままでは押し負けてこの珠が私の顔面に直撃する、聖龍の剣でも切り裂けない程の珠が____!


「まだだ!!!」


更にキルはその場で宙返りして擬輪廻珠とやらを前に見つめ、そのまま腕の一本を蹴り上げて一気に珠に迫った。


そのまま全ての腕で珠を押しつける。


結果、珠が私の顔に迫る速度が更に速まり、徐々に一気に私の皮膚を捉えてきた。


このままでは確実に押し負ける、これが生身の体に直撃する____


更にキルは追い討ちにと腕を追加で20本増やしその全てで珠を押しやってきた。


更に珠を押される力が増す、更に珠が私の体に近づいていく。


「あと…少し…」


____バチッ


私は聖龍の剣に残っているほぼ全ての魔力を込め、ボルトブレードを発動した。


聖龍の剣が黄色に眩しく光る。


「っぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお」


バチバチと帯電音を響かせながら、電気を帯びた聖龍の剣はキルが生み出した珠の質量に押し勝っていき、徐々に徐々にそれへ切れ込みを進ませていった。


「なに!?」


キルは気づいてすぐに全体重をその珠にかけたが、腕はこれ以上増やせないのか根本的な力の質は変わらず、更に剣を進めることができた。


そして____


「うおおおおおおああああああああああああ」


____ピシャン。


ボルトブレードを纏った聖龍の剣が、擬輪廻珠を完全に切り裂いた。


直後にフラーでキルの頭を全力で叩きつける。


その衝撃でキルは地面に叩き落とされて激突し、赤い魔力を放ったままその場で倒れた。


私もボルトブレードと翼をしまい、聖龍の剣を持ったまま彼をまじまじと見つめる。


まだ勝負がついた訳ではない。


キルが赤い魔力を放っている間は、まだ反撃する意思があるということ、言い換えればその余力が残っているかもしれないという事だ。


だったらまだ安心する事はできない、聖龍の剣を構え続ける必要があるのだ。


だがその間私は剣に魔力を吸われ続ける、魔力を吸い尽くされれば私は死ぬ。


もしそれに気づかれれば終わりだ、だからお願い。早くそのB・Mとやらを解除して、


キルはか細く息を繋ぎながらも、依然赤い魔力を纏い続けている。


更に剣は魔力を吸い続ける、だんだん呼吸速度が荒々しくなってきた。


早く、早く、早く、早くアビリティを解除しろ。


「はぁはぁはぁ」


キルの魔力の腕は地面にへばりついているが尚残っている。


「はぁはぁはぁ」


早く、はやく、はやく、


「はぁはぁはぁ」


はやく、はやく、はやく、ハヤク!!!!!


「はぁはぁはぁ」


ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、


キルの人差し指が微かに動いた。


ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」


____フッ。


キルの全身を纏っていた赤い魔力が、その時一瞬にして消えた。


目元に浮かび上がっていた赤い紋様もいつの間にか消えている。


私はそれとほぼ同時に聖龍の剣を異空間にしまい、キルの真横に反対の向きで倒れ込んだ。


〔レベルが64になりました。新たなアビリティ、[プロトサンシャイン]を会得します。〕

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