16話 アイラの処遇
俺とエルナは間一髪、どうにかケンタウロスを封印する事ができた
あと1秒封印の発動が遅ければ全てが終わっていた
九死に一生を得たような感覚が今になって身体全体をこだまし、戦いの疲労とは関係なく、呼吸の速度が早まっていた
「ありがとう…エルナ、お前のお陰で、どうにか勝てた…本当に…ありがとう」
そうと言えた直後に、俺は力尽きて気を失った、6回も超越光速を使ったんだから…当然と言えば当然か、けど…本当に今疲れてるのはエルナだろうに…
仕方ないとは思いつつも、その事実が頭によぎる、そしてその度に、心底自分の貧弱さを痛感するばかりだ…俺って本当に弱いんだな
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ノア達がゴルファングを街まで運び終えた直後にまで、少し時間を遡る
生きた状態の凶暴化したゴルファングを宮殿の地下にある研究室まで運んだ
それを見た国民達は1人の例外もなく、吸い寄せられるようにその異様な光景に釘付けになっていた
もし、それをしているのがノアでなかったのなら、全員が罵詈雑言の言葉を投げ捨てていただろう
それ程までにこの光景は、異様で、恐ろしいものだった
ノアはなんとかゴルファングを研究室まで運び終えた
そこでも当然のように、全ての研究員が驚愕の表層を露わにしていた
「こ…このゴルファング…生きてる!?」
「なにがどうなったらこうなるんですか!ノア様!!?」
「大丈夫だ、デストロイで筋肉をほぼ全て破壊しておる、動きはしない、[プロテクトケース]に入れておけば安全だろう」
「いやそう言う問題じゃないでしょ!?なんだって生きたままのゴルファングを…」
「このゴルファングは、凶暴化している。君たちならば、これだけで分かるだろう」
ノアがそう言った瞬間、この場の研究員全員が言葉を止めた
このゴルファングがどれだけ貴重なサンプルなのか、それが自分たちの目の前に存在しているという事実に、彼らは気がついた
「ロックドラゴンはどこにある?」
「それなら、ここの奥で調べております。ノア様」
ホーシングが徐に説明した
「ロックドラゴンとそのゴルファング、どんな関係があるのです?」
「ロックドラゴンが放ったという魔力の吐息、あれとこのゴルファングが持っている魔力が同一の物であるかどうかを中心に調べてもらいたい」
「ですが…それについては既に調べております。結果は濃度に僅かな差異が見られ、同一の魔力であると断定できない物でした」
「だが生きた状態の物ならば、元が同じかの特定はやりやすくなるだろう、それに今のゴルファングの魔力と、マイラ君達が受けた奴の吐息に含まれていた魔力…それが同じかを調べる事は出来るはずだ」
「…………なるほど、試してみる価値はありそうですね…分かりました。すぐにこのゴルファングをプロテクトケースに収納して、今すぐに調査を始めます」
「あぁ、なるべく急いで欲しい、裁判に間に合うように」
「裁判?」
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ホーシング君達にゴルファングを託した後、私は地下牢にいるアイラに再び面会に向かった
「なに?おじいちゃん、何か進展あったの?」
「あぁ、恐らくはな…だが、確実とは言えない、それにもしそれが裁判に間に合わなかった場合、全てが無駄になる」
「裁判?なにそれ?」
「2日後に開かれる、君が真にスパイであるか否かを審議する…国運天秤裁判の第一審の事だ」
遂に出ました、章の名前にもなっている国運天秤裁判…評価・ブクマ、よろしくお願いします!