13話 そんなの意味ないじゃない
「な…なに、これ?どうしてこんな所に死体が…」
突然現れたそれにエルナは戦慄し、ガタガタと身体が震えていた
まぁ俺も例外じゃない、正直めちゃくちゃビビってる
けどその恐怖を振り払って今なにをすべきなのかは、俺もエルナも当然のように理解していた
「さっきから感じてるこの魔力、たぶんそいつだな」
「たぶんね…」
この男性を見つけた時ら辺から感じていた、森の奥で動いている強大なモンスターの気配
たぶんこの気配の主人が、この人を殺したのだろう
この人の後ろに、地面が引きずられたように血が流れついているのを見るに、この男は上半身を切られて尚、死ぬ直前まで助けを求めて動き回ったと推測できるな、そしてここで力尽きたのか
そうまでして生きようとする気がしれないな
「ちょっと気配の方見てくる」
俺はそう言って、超越光速で気配のする方へ移動した
そこにいたのは、[ケンタウロス]だった
今は存在しない、かつて存在した大国、その大国が主要なモンスター兵器として利用されていたモンスター
かつてその大国が、戦争のどさくさでここに放置されたのが、このケンタウロスらしい
現在野生種は絶滅していて、生存しているのはこのケンタウロスだけらしい
けどこのケンタウロス…あの浮き出た紫色の魔力…間違いない
凶暴化している…!
再度超越光速を使ってエルナの元に戻った
「どうだったの?」
「…ケンタウロスだ」
「え!?嘘!なんで!?ケンタウロスが人を襲った事は今までないって」
「見た感じ、たぶん凶暴化してた、それでこの人を襲ったんだと思う」
「そんな…」
エルナは突然の事が2度も連続してか、目が少し虚をむき、無意識に若干の現実逃避を始めかけていた
当然の反応だ、凶暴化したモンスターをみつけた以上、ここでそれを倒さないといけない、だがケンタウロスだぞ?俺たち2人でどうにかなる相手じゃない
助けを呼ぼうにもノア様はソラナ達となんかしてるっぽいしミアも確か任務中だ
つまら俺たちでこの場をどうにかするしかない、けどまともにやり合えば確実に死ぬ
……………勝てる可能性があるとすれば
「エルナ、俺が時間を稼ぐ、その間にその人を西門まで運んどいてやれ」
「え?なんで?そんな事する意味ないじゃん!」
「死んだ奴は弔っておいた方がいいだろ!それにだ…それが終わったら奴に気づかれないようにして…不意打ちで奴を封印してくれ」
「!!!」少し困惑した表情で俺を見る、だけど、だんだん納得したような顔も見せた、だが最終的にはやはり困惑した様子だった
「じゃあ、頼んだぞ」ちょっと待ってと呼び止めるエルナを他所に、超越光速でケンタウロスの元へ再び向かった
「さてと、お前がケンタウロスか、直接見たのはさっきが初めてだな」
今俺の目の前に、屈強な男性の上半身と、俊敏な馬の下半身とをそれぞれ巨大化したような図体を持つケンタウロスが少し開けたこの辺りを徘徊している
その右手には巨大な大剣を、左手には巨大な盾を装備している
「さて、あんたには悪いが野放しにする事は許されないみたいなんでな、悪いが死んでもらうぞ」
俺は端末から剣を取り出し、ケンタウロスに斬りかかった
それに気づいたケンタウロスが即座にその大剣で俺に斬りかかる
当然攻撃は奴の方が速く俺は間一髪のところで攻撃を避けた
そして奴が攻撃を不発して隙が生まれた隙に足元に斬りかかったがすぐに気づかれてその盾で防がれる
しかしそのすぐ後に飛び上がって奴の顔を斬ろうと剣を振るうも、これもその巨大な盾で阻まれて一切ダメージを与えられなかった
「くそ、どうする…」
どうすれば奴に攻撃が通るのか、悠長に考えている隙に、奴の剣が俺へと振り下ろされる―――――
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弔ってやれって言ったって、別にそんなの…やる意味ないじゃない
今私の目の前で息だえているこいつ
この男は既に死んでるの、既に死んだ人をどうこうしたって、何になるっていうのよ
なにもしなくたって、どうにもならないわよ、バチが当たるなんてあり得ないし
「あーあ、適当に時間潰して、速くアレス助けに行かないとね」
1分待ったら静かにケンタウロスに近づいて封印する、そう心に決めたその瞬間、私の脳裏に浮かんだのは、アレスが私に失墜する姿
死人1人も弔ってあげられない女―――
私の事をそんな風に考えるアレスの姿を…
だからって、意味のない物は意味ないじゃない
わざわざそんな事をする必要性も分からないし、大体アレスもいちいちそんなの気にするような人じゃなかったのに、一体なんで…!
……そうよ、違う、アレスは昔からそうだった
アレスは昔から、常に何かと闘っていた、私はそんな姿に惹かれて、次第に…
今だってそう、アレスは今も、何かと闘ってる。私はそんなアレスの力になってあげたいと思った
守って、あげたいと思った
きっとこれも、アレスが何かを考えて私にそう言った事、アレスはこの人を弔ってあげたいんだ
わかったわ、アレス…私は、いつだって貴方の味方だから
例え世界の全てが貴方の敵になったとしても、私だけは味方でいてあげられるくらい
だから、この人も弔う
そう決意してからは早かった、私は気がつけば街の西門に着いていて、門番の人たちの前にその人を置いて、すぐにアレスを助けるために走った
待ってて、アレス!絶対私、貴方の役にたってみせるから
絶対貴方を、守ってみせるから
理解の早い子ですね、評価・ブクマよろしくお願いします!




