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136話 アクアドラゴン

陽光を隠す木々、怪しげな視線を送る見慣れないモンスターたち。


不審な男から渡された端末を頼りに、目的のモンスターの巣へ向かって薄暗い森林を歩いていた。


「随分と街からも離れたわね…」


この近くという言い回しをしていた割には、もう丸2日もこの見慣れない森林地帯を歩かされている。


しかも、これでもまだ目的地まで距離がある、あと4時間はかかりそうだ。


「やっぱり碌な依頼じゃないわね、これ。あのおっさん、よく考えたら具体的な依頼料とか説明しなかったし」


まぁ、あの手の仕事は悪評が広まるのも早いはず。


信用とかもあるだろうから、流石に給料無払いとはならないだろう、そう願いたい。


ただでさえドラゴンという聞くからに強そうな名前だ。


命が懸かっているとみて間違いないだろう。


「ほんと、いくら考えてもネガティブな憶測しか出てこないわね」


咳をするように愚痴を吐いてみたが、その直後太陽が暗く巨大な雲に覆われ、光が完全に差し込まなくなった。


時刻はまだ、昼の2時くらいである。



それから更に4時間歩いて、ようやく私はアクアドラゴンの巣に踏みついた。


私の目の前には、綺麗な円形の湖が広がっている。


ただし周りは木という木に囲まれた森のど真ん中で、湖があるには明らかに不自然な場所だった。


あの男からもらった端末には、アクアドラゴンは水を司る、7種の龍の一種で、自らの能力で巨大な湖を作りそれを住処にすると書かれている、


つまりこの中に…アクアドラゴンがいる。


「さてと…じゃあ始めますか」


現状、ターゲットがどの程度強いのかすら分からない。


生きて帰れる保証がないとは漠然と理解しているだけに、常に未知への不安が私の体を締め付けていた。


だから早く終わらせてしまおうと考えた、そう。


この時の私は何もわかっちゃいなかった。


ドラゴンという存在の恐怖を。


「渾身拳!!!」


そう叫んで地面へ渾身拳を叩きつけた。


それにより、湖に十分な振動がいき渡る。


それに刺激され、潜んでいた奴が湖から飛び上がった。


「さて…現れたわね」


全身が青い凸凹な皮膚に覆われ、その要所要所で透けるような水を覗かせながら滞空している巨大な龍。


「これが…アクアドラゴン…」


「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」


アクアドラゴンは地鳴りのような雄叫びを上げて私を威嚇した。


その音は全身を震えさせるほどに凄まじく、気を抜くとそれだけで殺されるんじゃないかと思えるほどだった。


「確かにこれ…凄いわね」


私は右手に槍を生成し、アクアドラゴンまで思いっきり投げた。


狙っていた翼までは届かなかったが、奴の右足に突き刺す事ができた。


だが、これで完全にこちらの位置を奴に教える事になってしまった。


奴は私の姿を確認すると、当然のように筋肉の膨張だけで足の槍を遥か上空まで吹き飛ばし、そのまま私目掛けて急降下してきた。


私はそれを間一髪で避ける事ができた。


だが、避ける時すれ違いざまに感じた重圧感から、僅かでもあたれば即座に骨折するだろうというのがすぐに分かった。


「ヤバいわね、あれ…」


アクアドラゴンは私を通り過ぎた後、両翼に鋭い水を纏い、低空で急旋回した。


つまり私にもう一度攻撃しようとしている。


それを迎え打つ為、今度は両手に槍を生成して待ち構えた。


しかし高速で向かってくるそれに対抗する力は私にはなく、結局避ける事しかできなかった。


アクアドラゴンは攻撃が避けられたのを知ると、すぐに体を上空へ傾けて上昇した。


その際、水を纏った翼が、近くの木に僅かに触れた。


直後、その木は豆腐のように切り裂かれ倒れてしまった。


「マジですか、」


奴は元の高さまで昇り終えると、即座に地上へ急降下した。


相変わらずもの凄い力と重圧を感じる、しかし、そうは言ってもやってる事はただの体当たり。


単調な攻撃の繰り返しだ。


3度も見れば軌道を見切る事はできる、私は攻撃を確実に避ける事に成功し、更にすれ違いざまに2本の槍で奴の左足を切り裂いた。


アクアドラゴンは裂かれた足元から、僅かに血を流す。


「!!!」


僅かに光が見えてきた刹那、奴は首元だけを動かしてその顔を私の目の前まで近づけてきた。


そしてその場で口を大きく開け、私が反応するよりも先に極太の水を放った。


私はそれを避けられるはずもなく、直撃してしまい遥か後方まで吹き飛ばされた。


そのままある山の崖に頭からぶつかってようやく止まった。


後頭部から流れ出る血がずり落ちる体と共に崖にへばりつき、やがて地面に足がついた。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


私の意識は朦朧とし、視界も薄くぼやけている。


このままではまずいとすぐに分かった、アクアドラゴンが、ここまでの相手だとは流石に想定していなかった。


だが無慈悲にも、アクアドラゴンは私を追いかけて視界に入り、口を大きく開きながらゆっくりと迫ってきた。


このままでは食べられる…ここで殺される…


私はようやく、今のままでは彼奴には勝てないと理解した。


勝てない、逃げないと死ぬ。


幸い、まだここから逃げるだけの余力はぎりぎり残っていた。


しかしそれをすれば、間違いなくドラゴンを倒すまで長引いてしまうだろう。


レベル上げなり対策なり、やらないといけない事が増えるからだ。


でもそうなると期限はどうなる?


この作戦の期限は伝えられていない、だから存在するのかすらも分からない。


もしこの作戦に明確な期限があって、それが恐ろしく短いものだったらどうしよう…そうなれば例え倒せたとしても報酬がなくなってしまう。


…などと色々考えてはいたが、私もただの人間、やはり命には代えられなかったようだ。


気がついた時には、私は渾身拳を地面に向けて叩き込み、その反動で上空へ飛び上がっていた。


この勢いを利用して、ここから逃げようとしているのだ。


だが、奴はそんな私の思考も読み取ったのか、すぐに翼を広げて空を飛び、私を追ってきた。


「来たわね、でも、何としてでもここで死にたくはないのよ!」


私は宣戦布告のようにそう叫び、直後にメタルヘアーを発動した。


鋼の髪を四方八方に振り撒き、アクアドラゴンの身体全体を僅かながら切り裂いている。


更にその髪で奴の視界から私を隠し、その隙にこの場から脱出する事に成功した。


やがて髪がなくなり、左右に首を振って獲物が逃げたことを悟ったアクアドラゴンは、ただ静かに地面に着地した。



渾身拳の勢いも徐々に落ち着いていき、ゆっくり地面へ着陸していった。


前後をどれだけ見渡しても、アクアドラゴンの影は見えない。


どうやら逃げられたようだ。


「よかったぁぁ〜〜」


ほっと胸を撫で下ろし、脱力した深呼吸で息を整えた。


だが、それをしてすぐに前を向き、アクアドラゴンの対策を考え始めた。


あれだけの敵だ、前のように単にレベルを上げればいいという訳でもないだろう。


しかし、こうなった以上あるのかすら分からない納期までの討伐を急ぐ必要が出てくる。


なるべく早くレベルを上げて、且つ確実に奴を倒せる方法…


そんな方法があるのだろうか、正直あるとは思えないが、それが出来ないとこのクエストの達成は不可能かもしれないというのが現状だ。

やはりドラゴンは強いですね、


評価・ブクマ、よろしくお願いします!!!

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