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134話 坑道脱出

私は右手を振りかぶると同時にスィンサインを発動して気配を消し、そのまま槍を投げた。


槍は蛇の胴体に突き刺さり、蛇は軽い叫び声を上げた。


だがすぐに身体を起こして周囲の様子を探り始めた、案の定、私はすぐに気づかれてしまった。


「アルルルルルルルル」


蛇は私の存在を確認すると、すぐに全身に殺意を塗りたくった。


そして、ただ全身に力を込めるだけで、胴体に突き刺さった槍を勢いよく弾き飛ばして処理した。


「…マジかよ、槍くらいずっと刺さってると思ってたんだけどな」


一応、槍が刺さっていた部分は傷口が開き、赤く出血してはいるが、それがあの蛇にどの程度影響を及ぼしているかはわからなかった。


「やっぱり覚悟しないとヤバいかもね」


蛇はしばらく私を睨んだ後、勢いよく私の方へ飛び出してきた。


私はそれを避けたが、蛇はしつこく、右腕を噛もうと何度も噛みついてくる。


それをどうにか避け続け、僅かに生じた隙を突いて渾身拳を蛇に打ち込んだ。


蛇は大きく吹き飛ばされたが地面に踏み止まり、私も反動で壁に背中から激突した。


「これでも見た感じあんまり効いてないみたいね」


私はナイフを2本生成して両手に装備した。


そして間髪入れず蛇へ突っ込み、ほぼ同時に蛇も私へ突入してきた。


互いに至近距離で攻撃し合い、そして避け合った。


その中で私が先に蛇の胴体を走りながら切り裂き、一度蛇から離れた。


「バシャーーーーー」


蛇は少し警戒した後、唐突に戸愚呂を巻き始めた。


恐らく何らかの攻撃の体制だろう、つまり、まだ勝負はついていないという事、


とはいえ、少しずつ蛇も追い詰められていっているようにも見える、このまま押せば勝てるかも。


蛇は戸愚呂を巻いてしばらく私を観察していると、突然弾丸のような速度で私に襲ってきた。


私は反応が間に合いきれず、蛇の顎を右腕のすぐ近くまで迫らせてしまった。


まずいな、すぐに脳をフル回転させて突破方法を考える。


そして、牙が皮膚に触れる寸前にラッシュスピードを発動し間一髪でこれを避けた後もう一回ナイフで皮膚を切り裂いた。


「パシィィィィィ」


その結果、蛇は出血と共に大きくフラつき、弱った眼で私を睨みつけた。


いい感じだ、あと少しで勝てると確信できた。


私はヘアメタルを発動した。


これは髪質をメタルに変化させ、更にその髪を自在に伸縮させてる事のできるアビリティ。


それを使い、私は周囲をこの髪で支配するように、四方八方を攻撃した。


弱っている蛇はその全てを避ける事はできず、3分の2以上を喰らって、先の尖ったメタルに皮膚を切り刻まれた。


「今!今ならいける!!!」


私はこれを最大のチャンスと判断し一気に蛇との距離を近づけた。


蛇は飛び上がった私に反応して天井を見上げたがそれはもう遅い。


私はそのまま落下し、重力に乗せたまま蛇の頭を斬り突いた。


「キシャアアアアアアァァァァァァァァ…」


蛇は激しい断末魔を挙げながら静かに力尽き、死亡した。


「はぁはぁ、勝てた…」


〔レベルが16になりました。新たなアビリティ、[アクアミサイル]を会得します〕


「…!!!」


勝利を喜ぶ間もないまま、私の脳内にその言葉が聞こえた。


「……やったああああああああああああああ」


これでようやく、目標のレベルに到達できた!!!


これでようやく、この忌わしい坑道から出ることができる!!


これでようやく、彼奴に復讐をする事ができる!


「やった、やったよーーーー馬ーーーーーーー」


私は抑えきれないくらい嬉しい気持ちになった。


前世でも久しく感じていなかった、目標を達成できた喜びというやつだ。


その喜びをどうしようもなく誰かに伝えたくなって、でもその相手はここにいなかったから、仕方なく馬に私は抱きついた。


「やったわよ馬ーーーーー」

「ブルルル」


馬はいつも通り喉を震わせ、それらしく返事をする。


「んーーーーーー、ありがとうーーーーー」


馬がなんと返事をしたのかなんてわからなかったが、さんな細かい事はどうでもいいくらい私の気持ちは舞い上がっていた。


ただただ気持ち悪いくらい、ここまで私を運んでくれた馬に感謝を伝えた。


「よし!じゃあ行こっか、馬!」


そう言って改めて馬に乗ろうとした時、ふとある違和感に気づいた。


「そう言えば私、これだけ貴方にお世話になったのにまだ名前、付けてなかったわよね」


この坑道を出たら、この馬とはお別れになる、この子はここ(坑道)のモンスターなんだから、そこはしっかり野生に帰さないといけない。


お別れの前に、名前くらい付けておくか。


「とはいってもどうしよ、」


しばらく目を瞑り、腕を組みながら考えていると、突然脳に天才的なセンスの名前が浮かんできた。


「お、これ良さそう!いいわね、やはり私はネーミングセンスも天才的だったか」


私は馬の顔を見ながら、しっかりと笑顔で言った。


「貴方の名前は…[ゾーエ]貴方の名前はゾーエよ、ギリシャ語で生きるって意味、どう?」


私がそう言うと、ゾーエは微笑むようにヒヒンと鳴いて返事した。


「ふふ、じゃあ行きましょうか!」


馬改めゾーエに乗り込み、そのまま坑道の中を走らせていった。


4本の足で跳ねるように地面を踏み進み、入り口に向かって全力で駆けた。


そして、遂に外の光が見えてきた。



「…やっと、外に出られたわ」


私の眼に映っている景色、緑色の草、青色の空、風で揺られる花、地を歩くモンスター。


何もかもが久しく見ていなかった景色だった。


ようやく…あの坑道から出られる事ができたのだ。


「日数にして3日か、長かったような短かったような」


私は両足を揃え、ゾーエからゆっくりと降りた。


ゾーエともここでお別れだ。


「ありがとう、ゾーエ…元気でね」


撫でるように手を振ると、ゾーエはいつものように、嬉しそうに喉を震わせた。


「それじゃあ、またね」


ゾーエは後ろへ半歩ずつ下がっていき、そのまま後ろを振り向いて坑道の中へと戻っていった。


その様子をしっかり見届けると、一度大きく深呼吸をして、前を向いた。


「さて、いよいよね。キル、マジで覚悟しておきなさいよ」


眼を鋭く尖らせ、宣戦布告するように言った。


「ここから私の反撃タイム、始めますか」

だが、既にもう、街にキルたちの姿はなかったのである。


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