12話 私とアレスと上半身と
丸一日の月日が経過し、俺たちの休養期間は終わりを告げた
俺とエルナは早速センターに呼び出され、休み明け早々に面倒そうな任務を押し付けられる
「あなたたちは、凶暴化したモンスターの事はご存知ですよね?」
誠実なそうなメガネを光らせ、上からの態度で喋ってくる、そういうところだぞ
「知ってますよそれくらい、っていうか最初にそれ報告したの俺だと思うんですけどね」
まぁそうはいっても、ギルベルトはなんやかんやで俺たち戦士と良好な関係を築こうとしているのが要所要所で感じられ、それもあってちょっとした文句なら言いやすい人柄ではあるんだが
「そうでしたね…失礼しました。で、あなた達に与える任務ですが…西門を出てしばらく真っ直ぐ進んだ所に少し開けた場所があるでしょう?そこに凶暴化したモンスターが数十体ほど密集しているようなのです。あなた方はそれらを全て抹殺していただきたい」
「抹殺?狩猟じゃなくて?」
エルナが人差し指を頬に当てながら質問する
「凶暴化したモンスターは数が多すぎて、全てを捕獲しようとなると手がつけられないのです、だからそのほとんどを抹殺という形で処理しております」
「なるほど!」両手をついて納得するのはエルナ
「了解しました。俺とエルナですぐに対処します。」
「はい!よろしくお願いしますね」
俺たちはこの任務を受託し、対象のいる場所に向かうため西門から街を出ようとした
「なんだかんだで丸一日かかったじゃないですかー」
「クラウド君、文句言わない」
「本当にすまない」
門を出てすぐに、奥の方から、聞き覚えのある声達が聞こえてきた
その方を見てみると、あれは…ノア様か!と確かあれはクラウド?だったか、そしてうわっ!ソラナかよ、俺あいつ嫌いなんだよな
それよりもあれは一体なにをしてるんだ?ゴルファングを生け捕りにしてそれを街まで運んでいるのか?なにがしたいんだノア様たちは…
まぁ俺には関係のない事か
俺とエルナは、凶暴化したモンスターがいるという場所に、トコトコと歩いて向かっている
その最中、エルナが雑談のように話しかけてきた
「ねぇアレス、私たち2人だけで任務するのも久しぶりね」
「まぁ、そうだな」
「ねぇ、これ運命でしょ?赤い糸的なやつでしょ?そうだよね?そうなの!だからさ、私たちこの任務が終わったら…」
そう言いながら俺の左腕に抱きついてきた
はぁ…またか「いい加減うざいぞお前、そんなに男が欲しいんなら悪魔とでも付き合ってろ」
本当に鬱陶しいから切り捨ててやった
「えぇ〜〜、悪魔は流石に酷くな〜い?私そんなに軽い女じゃないよ?」
「じゃあ俺へのその距離感なんなんだよ」
「それは…」エルナは体から力が抜けたように、俺の腕をそっと離した
まったく、どうもわからないんだよなぁ…
エルナは顔もいいし性格も…まぁ俺以外には良い、普通にモテる部類だとは思うんだけどなぁ…
俺へのこの距離感はなんなんだ?嫌がらせか?
まぁ確かにこいつに胸はないけど…でも俺はこれくらいの方が、いやそれはいい
「もうどうでもいいから行くぞ」俺は何事もなかったように目的地へと再び進んだ
「あ!待って!これだけは言わせて!」
また、エルナが俺を呼び止める
「なんだよ?」
「その、ありがとうね、ロックドラゴンと戦った時、私を助けてくれて…」
奴が飛ばしてきた岩石をエルナに当てさせないために、ダークボールを打ち続けた時のことを言っているのか
「別に、当然の事をしただけだ」
それが見えたのは、偶然だった
俺が振り向く直前、一瞬だけ、エルナが確かに頬を赤らめて、愛しむような目で俺を見ていたのが見えたのは
俺はそれを一瞬見えたというだけで、胸元が、少し暖かくなったような…変な違和感を感じた
しばらく歩いて、俺たちは目的地にたどり着いた
そこには説明された通り、みるからに凶暴化したモンスターがうじゃうじゃと湧いて出ていた
「まぁ、ここは予想通りだな、やるぞエルナ」
「ええ!」
俺は端末から剣を取り出し、流れるようにモンスター達を切り倒した
エルナも端末から銃を取り出し、踊るようにモンスター達を一掃していく
俺たちがこいつらを全員倒すのに、3分もかからなかった
「ふぅ…終わったわね!」
「凶暴化してどこまで強くなるかは、個体差があるっぽいな」リザレインの時より楽だった
「じゃあ、任務終わったし、約束通り♪」
「なにしれっとあの話の続編始めてんだ」
ガサガサ
その時はっきりと、奥の草むらから人間が張ったような音が聞こえた
なんの音だろうと近づいてみると、そこには………
赤い血を引き摺り、上半身だけになって生き絶えた、男の死体があった
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