124話 それが私の生き甲斐
私はね、転生する前…つまり前世は教師をしていたの、
戦闘技術を教える方じゃなくて、普通に子どもたちを教育する方の教師ね。
そこで私は毎日のように子どもたちと触れ合い、学び合っていた。
どうして教師になったのかを聞かれても、正直な所上手く答えられないんだけど、
でも、昔から人に何かを教えるのが好きだったし、子どもたちの無邪気な仕草が好きだったから、それでかな。
ごめんね、オタクの癖にまともな職についちゃって…って言っても、アレス君には伝わらないか。
その日も私はいつものように、教師生活を謳歌してたのよ。
勿論、それが楽な仕事って訳じゃない、楽しいことばっかりじゃないし、寧ろ辛い事の方が遥かに多い。
ただ子どもたちに授業をすればいいってものじゃないのよ、それとは違う、関係ないわけではないけど関係のない雑務をしなくちゃいけないし、しかもそれがとにかく多い。
そのせいで家に帰るのはいつも遅い、帰ったとしても家で雑務の続きをしなくちゃいけない日もある。
しかも他の大体の職では働きすぎるとその対価として残業代ってのが貰えるんだけど、教師はそれが貰えない。
いえ、厳密にはあるにはあるのよ、でも無いに等しいから誰も納得してない。
それは私だってそう。
これに加えて研修やらなんやら、色々面倒くさいのもやらないといけないのよ。
一言で纏めると、めっちゃ辛い。
正直、辞めたいって思った事は何度もあった。
でも私は辞める事はなかったの、私はね。
勿論これにも理由は色々ある、こんな風に辛いのがこの仕事だけって訳でもないっていうのもあるけど、一番はやっぱり…これだけの辛い事を補って余るくらい、私はあの仕事を好きだったから。
子どもたちに何かを教えるのが好き、子どもたちの成長が見られるのが好き、そして時々、かつて子どもたちだった生徒が私に恩返しをしてくれる瞬間…
それらに触れる度、私はこの仕事が、やっぱり好きなんだと確信できた。
だから、死ぬまで辞める事はなかったんだと思う。
勿論、これは私の話だけどね。
だけどある日、最後の日が訪れたの、
その日もいつものように、長い残業を終えて家に帰ろうと帰路についていたの。
その日は少しだけ早く帰れたし、特にまだやらないといけない仕事もなかったから、帰ったら何をしようかウキウキで考えてたの。
とりあえず溜まってる今期のアニメ、しばしばヒスってエスペラント語で発狂する隣のピャーリャさんを観ないとだし、ヤゴライブの推しの配信も観たい。
後エビテンリングの続きもやりたかったし、うは〜今日は楽しみだ〜ってなってたわけなのよ。
けど…それも突然終わった。
居眠り運転…まぁ要するに事故ってやつでね。
すぐに病院に搬送されたみたいだけど、当たりどころが悪くて、そのまま私は死んだ。
前世の生涯が閉ざされた私の前に、突然靄のような光に包まれた空間が現れたの。
次回より本格的にアイラの過去が語られます。
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