122話 動イタ尸
月明かりが闇を照らす、涼やかで切ないような風が吹く夜の平原。
そこに、アジエルにテオの居場所を教え、その後用済みと殺された平凡な戦士の死体が転がっていた。
だが、アクアブレードで貫かれた腹部の傷は再生し、全身に滴っていた血も消えている。
そしてその死体が、ゆっくりと、仮眠から目覚めたように起き上がった。
「ふぁ〜あ」
戦士は背筋を伸ばしながら欠伸をし、落ち着いたようにリラックスを始めた。
「ん?おや、今君とは2人きりか」
ボクはそれに気がつき、すぐにそこと繋げて対話を始めた。
「形は違うけど、君と会うのは2度目だね、こんばんわ」
いやこんにちは?おはようか?まぁどれでもいいか。
「移動してる間暇だし、せっかくだから、少し話をさせてくれないかな?まぁいいじゃないか、それに君に許可権はない」
ボクは確認の為、ある場所へ歩き始めた。その間に話をしよう。
「先ずだけど、おかしいとは思わなかったかい?何故国すら掴めなかったテオの居場所をボクが知っていたのか、普通に考えればあり得ない事だ」
あそうか、これだとボクの心中も筒抜けなのか、趣味の悪い依代だね。
まぁそれがないと君は傍観できないんだし、いいよ、せっかくだし、これで会話を進めよう。
そうだね、それについて説明するにはボクが何者なのか説明しないといけないのだけど、残念だ、それは今じゃない。
まぁ大方君の想像する通りだと思うよ、だから実を言うとどうでもいいんだよね。
大事なのはボクが何故こんな事をしたのかだ、それについて一言で説明すると、ボクの理想の盤面を揃える為だ。
ボクには見たい景色があって、その為のチャートを踏んでいる…これが君たちにとっては最も分かり易い説明だろう。
ボクはこの結果が上手く行く事を知っている、だけどこれが攻略方かどうかは分からない。
だから不安とワクワクが入り乱れるよね、こういうのは。
ほら、そうこう言ってる間に、目的地についたよ。
僕の目の前に真っ二つに両断されたアジエルがいる。
「今の世界に君を殺せる奴なんてそういない。間違いなくやったのは彼らだね」
つまりテオとβだ、実際に見たわけではないが間違いないだろう。
そして彼らは死んだ、それも確信しているよ、分かるんだ、こうなった以上はね。
これである程度ボクの都合の良い方向に動いてくれる筈だ、まだ確定した訳ではないけどね。
「最終的に見たいものが見れるよう、ボクはこれからも頑張るよ」
じゃあまたね、もう2度と、こうして話す事はないだろうけど。
会う機会は、これから幾らでも増えていく筈だから。
それじゃあ、さようなら。
という事で、本日から第3章、[アイラ過去追放編]スタートです!
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